臺灣州制 (大正九年七月三十日律令第三号)


臺灣州制明治三十九年法律第三十一號第一條及第二條ニ依リ勅裁ヲ得テ茲ニ之ヲ公布ス

大正九年七月三十日

臺灣總督 男爵田 健治郞

律令第三號

臺灣州制

編集

第一條

州ノ名稱及區域ハ國ノ行政區劃ニ依ル

第二條

州ハ法律、勅令又ハ律令ニ依リ州ニ屬セシメタル事務ヲ處理ス

第三條

州知事ハ州ノ事務ヲ擔任シ州ヲ代表ス

第四條

州ニ有給ノ吏員ヲ置ク吏員ハ州知事ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
吏員ノ定員ハ臺灣總督之ヲ定メ其ノ任免ハ州知事之ヲ行フ

第五條

官吏ノ州ノ事務ニ關スル職務關係ハ國ノ行政ニ關スル其ノ職務關係ノ例ニ依ル

第六條

州ニ會計役ヲ置キ官吏又ハ吏員ニ就キ州知事之ヲ命ス
會計役ハ州ノ會計事務ヲ掌ル

第七條

州知事ハ州ノ事務ニ關シ其ノ職務ノ一部ヲ郡市街庄ノ官吏又ハ吏員ニ補助執行セシメ又ハ委任スルコトヲ得

第八條

州知事ハ州ノ事務ニ關シ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ吏員ニ臨時代理セシムルコトヲ得

第九條

州知事ハ吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責、二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
州知事ハ吏員ノ懲戒處分ヲ行ハムトスル前其ノ吏員ノ停職ヲ命スルコトヲ得
其ノ停職期間給料ノ全部又ハ一部ヲ給セサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間州ノ公職ニ任命セラルルコトヲ得ス

第十條

州ハ臺灣總督ノ定ムル所ニ依リ吏員付退隱料、退職給與金、死亡給與金又ハ遺族扶助料ヲ給スルコトヲ得

第十一條

州知事ハ臺灣總督ノ許可ヲ受ケ州ニ常設又ハ臨時ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ハ名譽職トシ州ニ住所ヲ有スル者ニ就キ州知事之ヲ命ス
委員ハ州知事ノ指揮監督ヲ承ケ委託ヲ受ケタル事務ニ從事ス

第十二條

州ノ事務ニ關シ州知事ノ諮問ニ應セシムル爲州ニ協議會ヲ置ク
協議會ハ州知事及協議會員ヲ以テ之ヲ組織ス
協議會員ノ定員ハ二十人以上三十五人以下ノ範圍內ニ於テ臺灣總督之ヲ定ム
協議會ハ州知事ヲ以テ議長トス

第十三條

州知事ハ州ニ關スル左ノ事件ヲ協議會ニ諮問スヘシ但シ急施ヲ要シ協議會ニ諮問スル暇ナシト認ムルトキハ此ノ限ニ在ラス
 歲入出豫算ヲ定ムルコト但シ豫算ノ追加更正ニシテ州稅、使用料又ハ手數料ニ增減變更ナキモノヲ除ク
 州稅、使用料、手數料又ハ夫役現品ノ賦課徵收ニ關スルコト
 第二十九條第一項ノ借入金ニ關スルコト
 歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ又ハ權利ノ抛棄ヲ爲スコト
 繼續費ヲ定メ又ハ變更スルコト
 基本財產及積立金穀等ノ設置、管理及處分ニ關スルコト
 第四十一條ノ財產ノ處分ニ關スルコト

第十四條

協議會員ハ州ニ住所ヲ有シ學識名望アル者ニ就キ臺灣總督之ヲ命ス
協議會員ハ名譽職トス
協議會員ノ任期ハ二年トス但シ補闕ノ協議會員ノ任期ハ其ノ前任者ノ殘任期間トス

第十五條

協議會員職務ヲ怠リ又ハ體面ヲ汚損スル行爲アリタルトキハ臺灣總督ハ之ヲ解任スルコトヲ得

第十六條

名譽職員ハ職務ノ爲ニ要スル費用ノ辦償ヲ受クルコトヲ得

第十七條

州ハ基本財產又ハ積立金穀等ヲ設クルコトヲ得

第十八條

州ハ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲スコトヲ得

第十九條

州ハ其ノ必要ナル費用及法律、勅令又ハ律令ヲ以テ州ノ負擔ニ屬セシメタル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ

第二十條

州ノ費用ハ州稅、州ノ財產ヨリ生スル收入、使用料、手數料其ノ他ノ收入ヲ以テ之ヲ支辨ス

第二十一條

法律、勅令又ハ律令ニ規定アルモノノ外州ノ費用ヲ以テ支辨シ得ル費目左ノ如シ
 吏員ノ給料其ノ他ノ州及郡ノ廳費
 土木費
 敎育費
 衞生費
 勸業費
 社會事業費
 營繕費
 協議會費
 州費用取扱費

第二十二條

州稅トシテ賦課シ得ルモノ左ノ如シ
 地租附加稅
 所得稅附加稅
 戶稅
 營業稅
 雜種稅
戶稅ハ構戶者ヨリ之ヲ徵收ス
營業稅及雜種稅ノ種類ハ臺灣總督之ヲ定ム

第二十三條

州ハ臺灣總督ノ定ムル所ニ依リ其ノ費用ヲ市街庄ニ分賦スルコトヲ得

第二十四條

州ハ營造物ノ使用ニ付使用料ヲ徵收スルコトヲ得
州ハ特定人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得

第二十五條

州ノ費用ヲ以テ支辨スル事業ノ爲特別ノ必要アルトキハ夫役又ハ現品ヲ賦課スルコトヲ得

第二十六條

州ニ屬スル徵收金ハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ徵收金ニ付テハ國ニ屬スル徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵及還付ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル

第二十七條

州稅、使用料、手數料及夫役現品竝其ノ賦課徵收ニ關スル事項ハ臺灣總督之ヲ定ム

第二十八條

使用料及手數料ニ關スル細則ハ州知事之ヲ定ム
細則中ニハ五圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
細則ハ一定ノ公吿式ニ依リ之ヲ吿示スヘシ

第二十九條

州ハ永久ノ利益ト爲ルヘキ事業、舊債償還又ハ天災事變ノ爲必要アル場合ニ限リ臺灣總督ノ許可ヲ受ケ借入金ヲ爲スコトヲ得
州ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲必要アルトキハ臺灣總督ノ許可ヲ受ケ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得

第三十條

州ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ年度開始四月前迄ニ臺灣總督ニ提出シ其ノ認可ヲ受クヘシ
州ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ依ル

第三十一條

州ノ出納ハ翌年度六月三十日ヲ以テ之ヲ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後三月以內ニ臺灣總督ニ之ヲ報吿スヘシ

第三十二條

州ノ費用ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼績費ト爲スコトヲ得

第三十三條

州ハ特別會計ヲ設クルコトヲ得

第三十四條

州ノ收入金及支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ收入金及支拂金ノ例ニ依ル

第三十五條

協議會及協議會員ニ關スル事項、費用辨償、給料、旅費其ノ他給與ニ關スル事項、賠償責任、身元保證其ノ他吏員ニ關スル事項竝財務ニ關スル事項ハ臺灣總督之ヲ定ム

第三十六條

州ハ其ノ事務ノ一部ヲ共同處理スル爲其ノ協議ニ依リ規約ヲ定メ臺灣總督ノ認可ヲ受ケ州組合ヲ設クルコトヲ得

第三十七條

州組合ニハ州ニ關スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及必要ナル事項ニ付テハ臺灣總督之ヲ定ム

第三十八條

州ノ事務ハ臺灣總督之ヲ監督ス

第三十九條

臺灣總督ハ州ノ事務ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得

第四十條

臺灣總督ハ州ニ於テ法律、勅令又ハ律令ヲ以テ其ノ負擔ニ屬セシメタル費用又ハ當該官廳ノ職權ニ依リ命スル費用ヲ豫算ニ載セサルトキ又ハ豫算中不適當卜認ムル費用アルトキハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算ニ加ヘ又ハ削減スルコトヲ得

第四十一條

州ノ廢置分合又ハ區域變更ニ依リ必要アルトキハ臺灣總督ハ關係州知事ノ意見ヲ徵シ州ノ財產ノ處分ヲ爲スコトヲ得

附 則

編集
本令施行ノ期日ハ臺灣總督之ヲ定ム
明治三十四年律令第十四號ハ之ヲ廢止ス
臺灣地方稅規則ハ之ヲ廢止ス但シ大正十年三月三十一日迄ノ分ノ家稅ハ之ヲ存續シ臺灣總督ノ定ムル所ニ依リ州又ハ廳地方費ニ於テ之ヲ賦課徵收ス
前項ノ規定ニ依リ家稅ヲ存續スル間州又ハ廳地方費ニ於テ戶稅ヲ賦課徵收セス
當分ノ內州又ハ廳地方費ニ於テ警察費ヲ支辨スルコトヲ得
本令施行ノ際臺灣地方稅規則ニ依ル地方費區ニ屬スル財產ハ臺灣總督ノ定ムル所ニ依リ州又ハ廳地方費ニ之ヲ分屬セシム

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。