第154回国会における小泉内閣総理大臣施政方針演説


演説

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はじめに

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私は、就任以来、我が国が持続的な経済成長を取り戻すためには、経済・財政、行政、社会の各分野における構造改革を直ちに断行すべきであるとの考えの下、国政に当たってまいりました。今年は、構造改革が本番を迎えます。どのように改革を進め、また、国際社会に対して、いかに責任を果たしていくのか、小泉内閣として国政に当たる基本方針を申し述べます。

昨年12月1日、愛子内親王殿下の御誕生という、国民ひとしく待ち望んだ慶事を迎えました。国民と共に、改めて御誕生をお祝い申し上げ、愛子内親王殿下の健やかな御成長をお祈り申し上げます。

21世紀こそ「平和の世紀」にしたいとの願いとともに明けた昨年、米国におけるテロの発生、我が国近海における武装不審船の出没など、平和の維持、危機管理への取組が、現実の課題として突き付けられました。我が国は、これに毅然として立ち向かうという決意を、具体的な形で明確に示しました。インド洋における活動に当たっている自衛隊員を始め、国際社会の平和維持、国民の安全確保という尊い任務に当たっている諸君に対して、敬意と感謝の意を表明します。安定した平和を実現するためには、国際協調主義に立って、主体的に対応することが何よりも大切です。今後、引き続き、緊張感を持って取り組んでまいります。

今年は、ワールドカップ・サッカー大会が開催されます。大会期間中は、世界中の注目を集め、多くの人々が訪れます。日本に関心を持ち、日本について理解を深めてもらう、またとないチャンスです。我が国の文化伝統や豊かな観光資源を全世界に紹介し、海外からの旅行者の増大と、これを通じた地域の活性化を図ってまいります。この大会が、経済面への波及効果も含め、日本と日本人が元気を取り戻す機会となることを、強く期待しています。

構造改革は、着実に動き出しています。特殊法人改革、規制改革など、様々な改革がスタートを切りました。必要な予算も編成しました。今年は、動き出した改革を一つひとつ軌道に乗せ、さらに大きな流れを作り出す、「改革本番の年」です。そして、「経済再生の基盤を築く年」としなければなりません。この正念場を乗り切って、平成15年度から、改革の成果を国民に示し、平成16年度以降は、民間需要主導の着実な経済成長が実現されることを目指します。

昨年、内閣総理大臣に就任した当初、私が提案した様々な改革の実現は困難であろうと思われました。実際には、多くの分野で改革が進みました。今まで慣れ親しんできた制度や慣行と決別し、新しい時代の要請を柔軟に受け止めなければなりません。

経済情勢が厳しさを増しつつあり、多くの方々が困難に直面している中にあって、小泉内閣の掲げる「改革なくして成長なし」との方針は多数の国民の支持を得ています。この国民の声をしっかりと受け止め、揺るぎない決意で改革に邁進します。

経済財政運営の基本姿勢と金融安定化への取組

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平成14年度予算は、「改革断行予算」です。「5兆円を削減しつつ重点分野に2兆円を再配分する」との方針の下、公共投資やODAを一割削減しました。医療制度も思い切って見直しました。既定経費を基準にせず、歳出の効率化を進める一方、少子高齢化への対応、科学技術・教育・ITの推進などの重点分野に大胆に配分しました。特殊法人などへの財政支出については、その事業を精査し、一般会計特別会計合わせて、1兆1000億円を超える削減を実現しました。

これらの歳出面における努力や歳入面における税外収入の確保などにより、「国債発行額30兆円」を守り、税金を無駄遣いしない体質へ改善するとともに、将来の財政破綻を阻止するための第一歩を踏み出すことができました。今後、歳出の見直しを進め、受益と負担の関係についても引き続き検討を行いつつ、効率的で持続可能な財政への転換を図ってまいります。

平成14年度の経済情勢は、引き続き厳しいものとなることが予想されます。平成14年度予算と平成13年度第二次補正予算とを切れ目なく執行し、改革を断行する一方で、デフレスパイラルに陥ることを回避するために細心の注意を払います。政府は、日銀と一致協力して、デフレ阻止に向けて強い決意で臨みます。

平成16年度には、不良債権問題を正常化します。主要行に対する検査を強化するとともに、整理回収機構による不良債権の時価買取制度などを活用しつつ、不良債権処理と企業再建に積極的に取り組みます。金融情勢について十分注視し、金融の危機を起こさないためには、あらゆる手段を講じます。

金融機関の経営の健全性を確保するため、株式保有制限を課するとともに、これに伴う株式処分を円滑にするため、先般、銀行等保有株式取得機構を設立しました。

ペイオフの円滑な実施に向けて、国民に対する周知に努めるとともに、金融機関に対する検査・監督など金融システムの安定化に万全を期します。

1年前と比べると、製造業は37万人、建設業は21万人の就業者が減少しています。しかし、この1年間のマイナス成長の中でも、サービス業の就業者は50万人増加しています。

雇用を生み出す新たな市場・産業の育成と、ミスマッチの解消、セーフティネットの整備を、引き続き進めます。平成13年度第一次補正予算を活用し、社会人の補助教員や森林作業員など、地域の工夫を活かした雇用創出を目指します。また、中高年齢者の円滑な再就職の促進などに取り組みます。今後は、雇用を分かち合うという観点からのワークシェアリングの実施に向けて検討を行うとともに、より柔軟な働き方が選べるよう、雇用期間や労働時間に関する制度の見直しについて、検討を進めてまいります。

日本経済と地域の活力を支える中小企業を積極的に応援します。

中小企業に対する保証・貸付制度の拡充や、個々の中小企業の実情に応じたきめ細かな対応などを通じ、セーフティネットに万全を期してまいります。

逆境を乗り越え、変化に対応することによって、世界で屈指の地位を築いた中小企業が、金型製造やIT・医療関連など様々な分野で現れています。創造性や機動性に富む元気な中小企業が、全国各地、各産業分野で活躍することが重要です。開業・創業を5年間で倍増させるとともに、新しい分野への進出による経営革新を推進するため、人材育成、技術開発、資金調達など、幅広い観点からの支援を実施します。

構造改革断行の基本姿勢

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昨年、「改革工程表」として、500項目を超える具体的な政策と実施時期を明示しました。今般、日本が目指す経済社会について「構造改革と経済財政の中期展望」を策定しました。今後、先の所信表明演説で明らかにした「小泉構造改革五つの目標」達成に向けて、強力に施策を実施するとともに、時間のかかる改革についても、広範かつ具体的な検討を行い、長期の工程表を作成します。

明確な方向性を持った改革が、需要を掘り起こし、事業機会を創り出し、そして成長を生む。こうした環境を整備することこそ、政府の役割だと考えています。既に、構造改革によって、日本経済の潜在的な力が動き出しつつあります。7000台を超える政府の一般公用車を、3年で全て低公害車にするとの方針を明らかにすると、民間企業は低公害車開発を加速しました。住宅金融公庫の廃止の方針を発表すると、銀行は、住宅金融公庫よりも魅力的な商品の開発を始めました。さらに、郵便事業への民間参入の方針を示すと、民間企業は設備投資と人材確保の検討に取りかかりました。

改革によって変わるのは、国や企業だけではありません。一番変わるのは、国民一人ひとりの生活です。今後、「暮らしの改革」という視点に立って、身近な暮らしがどう変わるのかということを示していきたいと思います。

努力が報われ、再挑戦できる社会

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私は、経済社会の主役である「人」が、能力と個性を発揮し、存分に活躍できる仕組みを備えた「努力が報われ、再挑戦できる社会」の実現を目指します。

税制の在り方は、経済再生の確固たる基盤を築く鍵となります。平成14年度税制改正では、連結納税制度を創設するとともに、中小企業関係税制や金融・証券税制について、所要の措置を講ずることとしています。今後は、個人や企業の経済活動における自由な選択を最大限尊重し、努力が報われる社会を実現するために、税制を再構築していくことが必要です。そのためには、経済活性化をどのように支え、経済社会の構造変化にどう対応するのか、中立・簡素・公平な税制をどう実現するのか、適切な租税負担水準や地方分権にふさわしい地方税の在り方をどう考えるかなど、多岐にわたる課題を検討しなければなりません。経済財政諮問会議政府税制調査会において、総合的に取り組みます。同時に、与党における検討を始め幅広い国民的な議論を期待します。6月ごろを目途に基本的な方針を示すとともに、当面対応すべき課題について年内に取りまとめ、平成15年度以降、実現してまいります。

「努力が報われ、再挑戦できる社会」を実現して、日本の経済・産業を活性化するためには、国民と企業が自由に挑戦できる環境が必要です。様々な分野で、徹底的に規制改革を進めることにより、雇用と市場の拡大による元気な経済社会と、安くて質の高い多様な財・サービスを享受できる暮らしを、同時に実現してまいります。

世界最高水準の「科学技術創造立国」の実現に向け、人の遺伝子情報の医療への応用、極めて微小なレベルでの新材料開発など、最先端の戦略的研究分野に重点的に取り組みます。併せて、産学官の連携の推進、地域における科学技術の振興を図ってまいります。

我が国は、既に、特許権など世界有数の知的財産を有しています。研究活動や創造活動の成果を、知的財産として、戦略的に保護・活用し、我が国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とします。このため、知的財産戦略会議を立ち上げ、必要な政策を強力に推進します。

高速・超高速インターネットの加入者は、この1年間で、64万人から280万人へと、爆発的に増加しました。IT革命の進展を一層加速させるため、ネットワークインフラの整備、未利用光ファイバの利用促進などの規制改革、人材の育成、電子商取引に係るルールの整備、情報セキュリティ対策、個人情報保護の推進などに取り組みます。国民がITの利便性を身近に感じられる情報家電の普及促進にも努めます。これらの施策により、全ての国民がインターネットを通じて、自由かつ安全に、多様な情報と知識を交流できる「世界最先端のIT国家」を実現します。また、住民票パスポートの交付申請などの行政手続を、原則としてオンラインで行うことが可能となる、電子政府・電子自治体の実現に取り組んでまいります。

「努力が報われ、再挑戦できる社会」は、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会です。この新しい社会にふさわしい司法制度を構築し、国民にとって身近なものとするため、早急に司法制度改革推進計画を策定し、改革を着実に進めます。裁判の一層の迅速化を図るための制度や、法科大学院を中核とする法曹養成制度を整備するとともに、弁護士などの法曹人口を増やし、国民が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与する新たな制度を導入します。

国民一人ひとりの人権が尊重される社会を実現するため、独立性の高い人権委員会を設立し、弱い立場にある人権侵害の被害者を実効的に救済する、新たな人権救済制度の整備を目指す法律案を今国会に提出します。

男女が共に個性と能力を十分に発揮できる社会の構築に向け、女性の新しい発想や多様な能力を活かせるよう、様々な分野へのチャレンジ支援策に関する検討を進めてまいります。

民間と地方の知恵が、活力と豊かさを生み出す社会

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「民間にできることは民間に委ね、地方にできることは地方に委ねる」との原則に基づき、行政の構造改革を進め、「民間と地方の知恵が、活力と豊かさを生み出す社会」を実現します。

肥大化し硬直化した政府組織を改革し、簡素で効率的な政府を実現するためには、緒に就いた特殊法人改革を一層強力に進めなければなりません。163ある全ての特殊法人認可法人の徹底的な見直しを行い、昨年12月に「特殊法人等整理合理化計画」を策定し、平成14年度予算に反映させました。石油公団都市基盤整備公団、住宅金融公庫など17法人の廃止、道路4公団など45法人の民営化など、計画の具体化に向け、法制上の対応を始めとした必要な措置を、できる限り速やかに講じます。併せて、この改革の動きを促進させるため、評価・点検を続けてまいります。政府系金融機関の見直しについては、経済財政諮問会議で検討し、年内には結論を得ます。

真に国民本位の行政を実現するため、昨年12月に策定した「公務員制度改革大綱」に従って、具体的な改革を着実に進めてまいります。特に、特殊法人などへの再就職に対する厳しい批判を真摯に受け止め、3月までに役員退職金、給与の削減を決定します。

3月までに、公益法人に対する国の関与を極力少なくするための見直しを行うとともに、公益法人制度の抜本的改革に着手します。

郵政事業については、平成15年中に国営の新たな公社を設立し、全国に公平なサービスを確保しつつ、郵便事業への民間事業者の全面的な参入を可能にするための法律案を、今国会に提出します。郵政三事業のその後の在り方は、懇談会において引き続き議論を進め、夏までには具体案を取りまとめる予定です。

首相公選制については、有識者による懇談会を重ね、幅広い観点から議論をしているところです。夏までには具体案を取りまとめることとしています。

21世紀の我が国を豊かで活力あるものとするためには、地域がその個性や魅力を活かしつつ、真の自立を達成することが不可欠です。2000を超える市町村が合併を検討しており、こうした流れを後押しするとともに、国と地方の役割や税財源配分の在り方の見直しに取り組むなど、地方分権を一層推進してまいります。


人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会

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国民の抱く様々な不安を解消し、「人をいたわり、安全で安心に暮らせる社会」を実現することは、政治の責任です。

我が国は、「国民皆年金、国民皆保険」という世界に誇るべき社会保障制度を作り上げてきました。今世紀、いまだ経験したことのない少子高齢社会を迎える中で、この優れた制度を堅持し、長寿国家にふさわしいものに再構築していかなければなりません。

特に医療制度は、厳しい医療保険財政の下、持続可能な制度にしていくため、改革が待ったなしです。患者、医療保険料を負担する加入者、医療機関の三者がそれぞれ痛みを分かち合う「三方一両損」の方針の下、「聖域」は一切認めず、これまでにない診療報酬の引下げ、高齢者医療を始めとする給付と負担の見直しなど、思い切った改革を行うこととしました。これを早期に実現するとともに、患者本位の医療の実現を目指し、診療情報や医療機関情報の開示などの規制改革を推進します。また、先端科学の研究、予防や健康づくりに重点を置いて、総合的な健康対策を強力に進めます。がん患者の治癒率の大幅な改善を目指すとともに、より多くの方々が健康で生き生きとした老後を暮らせるよう、介護などが必要な老人や心筋梗塞脳卒中などの生活習慣病の患者を大きく減少させる目標の達成に向け、健康増進の基盤整備を図るための法律案を今国会に提出します。

年金不安の解消に向けて、公的年金が、その役割をしっかりと果たしていくことができるよう、次期制度改正を平成16年までに行うこととし、これに向けた本格的な検討を開始します。

BSE問題は、国民に、食に対する不安を与えました。既に、食用として処理される全ての牛を対象とした検査を行っており、現在流通している食肉は、全て安全なものとなっています。感染経路の究明については、引き続き全力を挙げてまいります。今後とも、食肉を始めとする「食の安全」と国民の安心を確保するため、最善を尽くします。

消費者の信頼確保を図るために、生産者と消費者の間に立ち、「食」と「農」の一体化を推進するとともに、農林水産業の構造改革を進めます。国際競争力を高めるため、消費者の求める安心・安全な農産物を安定的に提供し得る産地や、高度な技術、経営戦略を有した活力ある農業経営体を早急に育成します。「意欲と能力のある経営体」に対し、経営の規模拡大や法人化の推進などの施策を集中し、国内生産の高付加価値化などにより、生産から流通にわたる構造を改革します。都市と農山漁村の共生と交流を引き続き推進し、農山漁村の新たなる可能性を切り拓いてまいります。

昨年、交通事故死者数は20年ぶりに9000人を下回りました。一方、犯罪は依然として多発しており、国民の多くは治安の悪化に対する不安を抱いています。来年度4500人の警察官を増員するとともに、職員の増強や鑑識機器の整備により、出入国管理の体制を強化するなど、総合的な治安対策に努力します。また、消防・防災対策に取り組むとともに、災害による被災者への支援や、災害復旧・復興対策にも万全を期してまいります。これらを通じて、「世界一安全な国、日本」の復活を図ります。

美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会

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地球温暖化問題への取組、都市の再生などにより、「美しい環境に囲まれ、快適に過ごせる社会」を子どもたちの世代に確実に引き渡さなければなりません。

緊急に対応を要する地球温暖化の問題に対しては、今国会における京都議定書締結の承認と、これに必要な国内法の整備を目指します。また、米国の建設的な対応を引き続き求めるとともに、途上国を含めた国際的ルールが構築されるよう、最大限の努力を傾けます。9月に開催される「持続可能な開発に関する世界首脳会議」においては、環境保護と開発を共に達成すべきことを訴えてまいります。

京都議定書の目標達成は、決して容易ではありません。国、地方公共団体、事業者、国民が一体となり、総力を挙げて取り組むことが必要です。技術革新や経済界の創意工夫を活かし、目標達成への取組が、我が国の経済活性化、雇用創出などにもつながるよう、環境と経済の両立を達成するための仕組み作りを目指します。併せて、二酸化炭素の吸収源として、健全な森林の育成や保全などに積極的に取り組みます。

温室効果ガスの約9割が、エネルギーの消費から発生する二酸化炭素です。このため、省エネルギー対策、新エネルギー対策を強力に進めるとともに、二酸化炭素を排出しない原子力発電を、安全確保を大前提に着実に推進します。燃料電池は、水素をエネルギーとして利用する時代の扉を開く鍵です。自動車の動力や家庭の電源として、3年以内の実用化を目指します。また、電気事業者による新エネルギーの導入を促進します。

日々の生活の中で、何気なく使用しているエネルギーを減らすため、できるだけ省エネ型製品を使用するなど、我々一人ひとりの生活を見直していこうではありませんか。政府も、一般公用車の低公害車への切替え、食品廃棄物を肥料に再生利用するリサイクルの導入など、身近な改革を進めてきました。今年は、中央官庁への太陽光発電装置の導入を約5倍に拡充するとともに、政府が購入する環境にやさしい製品の品目数を5割増にし、グリーン購入を進めます。

循環型社会の構築を加速するため、年間500万台に上る使用済み自動車の持続的なリサイクルを行うための仕組みを創設し、ゴミゼロ型都市のプロジェクトのうち、早期執行が可能なものから緊急に事業展開を図ります。

快適な都市づくりも緊急の課題です。民間の力を最大限活かして都市開発事業を推進することは、都市の再生に加え、土地の流動化を通じた不良債権問題の解消を図る上で極めて重要です。都市計画に係る規制を全て適用除外とし、民間事業者が自由に事業計画を立案できる新しい都市計画制度を導入するとともに、民間事業者に対する強力な金融支援などを実施します。都市の魅力と国際競争力を高めるため、東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備を始めとする都市再生プロジェクトを、着実に推進します。

子どもたちの夢と希望を育む社会

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「小泉構造改革五つの目標」として掲げた社会に向けて、明るい未来を力強く切り拓く担い手は、「人」です。「子どもたちの夢と希望を育む社会」を実現し、子どもたちが、日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担うことのできる、豊かな個性と能力を持った人間に育つよう、全力を尽くします。

少人数授業や習熟度別指導の推進、教員の資質向上などにより、「確かな学力」の育成を図るとともに、「心の教育」の充実を目指して、青少年が多様な奉仕活動・体験活動を行える環境を整備し、学校週5日制の完全実施を踏まえた活動の場を拡大します。また、これからの日本が世界とアジアの一員として貢献していくためにも、国際的に競争力のある独創的な研究の推進や人材の育成など、知的基盤の拡大を図るための大学の構造改革を目指します。

文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になります。「文化芸術創造プラン」を推進し、世界に通ずるトップレベルの芸術の創造、優れた新進芸術家を輩出するための環境づくりに努めるとともに、国民が文化ボランティアなどにより、自ら積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造することができる環境を整備します。

近年、急速に進行している少子化に的確に対応していくため、保健・福祉、雇用、教育、住宅などの幅広い分野にわたる総合的な対策を推進します。特に、平成16年度までに保育所を中心に15万人の受入児童数の増大を図る「待機児童ゼロ作戦」の推進や、放課後児童クラブの拡充などに力を入れ、子育てを支援してまいります。

安全保障と危機管理の基本姿勢

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文明社会に対する重大な挑戦であるテロとの闘いは、国民の安全を確保するための我が国自身の問題であり、その防止・根絶に向け、国際的連帯の下、主体的に取り組まなければなりません。我が国は、既に、米軍の活動に対する協力支援活動や被災民救援活動などを行っています。今後は、国連安保理決議の実施や、テロ防止諸条約の締結・履行などを通じて、資金対策、出入国管理強化、ハイジャック防止などを始めとする国際的な取組に、引き続き積極的に参画してまいります。

世界の平和と安全の実現のため、テロ対策に加え、大量破壊兵器などの軍縮・不拡散、対人地雷の問題にも着実に取り組みます。さらに、先般の国際平和協力法の改正も踏まえ、国連平和維持活動に貢献してまいります。3月には、自衛隊施設部隊を東チモールPKOへ派遣する予定です。

テロや武装不審船の問題は、国民の生命に危害を及ぼし得る勢力が存在することを、改めて明らかにしました。「備えあれば憂いなし」。平素から、日本国憲法の下、国の独立と主権、国民の安全を確保するため、必要な体制を整えておくことは、国としての責務です。どのような理念と方針の下で、具体的な制度を作っていくのかを明らかにし、国民の十分な理解を得ることが、必要不可欠です。国民の安全を確保し、有事に強い国づくりを進めるため、与党とも緊密に連携しつつ、有事への対応に関する法制について、取りまとめを急ぎ、関連法案を今国会に提出します。

外交の基本姿勢

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我が国の安全と繁栄は、国際社会の平和と繁栄なくして実現できません。基本的人権の尊重と民主主義、市場経済と自由貿易を基調としつつ、多様な文化や価値観が相互に尊重され、人間一人ひとりの幸福と尊厳が守られる国際秩序の発展に向けて、積極的に取り組みます。そのため、各国と幅広い協力関係を発展させていくとともに、安保理改革を始めとする国連の機能強化に向けた取組に努めてまいります。

我が国は、昨年12月に発足したアフガニスタン暫定政権を支援し、真の安定の達成に向け、積極的に人道・復興支援を行ってまいります。我が国が主催した、アフガニスタン復興支援国際会議において発表したとおり、今後、難民・避難民の再定住、地域共同体の再建、地雷不発弾の除去、保健・医療、教育、女性の地位向上の問題などを重点分野とし、幅広い支援を実施していく考えです。

日米関係は、ますます緊密になっています。今月には、訪日されるブッシュ大統領と会談します。昨年6月の首脳会談において一致した戦略対話の強化に引き続き努め、日米安保体制の信頼性を向上させるとともに、両国の持続可能な経済成長を図るため「成長のための日米経済パートナーシップ」を通じた建設的な対話を行ってまいります。また、本土復帰30周年を迎える沖縄の更なる振興に取り組みます。普天間飛行場の移設・返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の実施に全力で取り組み、沖縄県民の負担軽減へ向けた努力を継続するとともに、沖縄の経済的自立を支援します。

私は、先月、ASEAN5か国を訪問し、「率直なパートナー」として「共に歩み共に進む」との基本理念の下で、拡大した東アジアのコミュニティづくりを目指すとの考えを表明しました。その具体化に向け、今回の訪問によって築いた各国首脳との信頼関係の下、日・ASEAN包括的経済連携構想を始めとする、アジア近隣諸国との関係強化の取組を着実に進めてまいります。

中国は、昨年WTOに加盟し、今後、我が国を始めとする国際社会との関係において、一層建設的な役割を果たしていくことが期待されます。国交正常化30周年の記念すべき年に当たる本年、「日本年」・「中国年」事業などを通じ、次の世代を担う若い人々を中心とした交流の輪を広げ、最も重要な二国間関係の一つである日中関係の基盤を、一層確固たるものとするよう努めます。

韓国との間では、ワールドカップ・サッカー大会を共催します。査証の大幅緩和、航空輸送力の増強とあいまって、両国間の人の往来が一層促進されることを期待します。また、日韓国民交流年の関連行事として、多彩な文化交流事業も行われます。手を携えてこれらを成功させ、本年を日韓の協力関係にとって、その絆をより深める年とするよう努めてまいります。

北朝鮮をめぐっては、安全保障上及び人道上の難しい問題が存在しています。日米韓の緊密な連携を維持しつつ、今後とも日朝国交正常化交渉の進展に粘り強く取り組み、諸問題の解決を目指します。

プーチン大統領の下、ロシアは国内改革を着実に進め、また、国際社会の中で一層建設的な役割を果たしつつあります。こうしたロシアの変化を支持し、幅広い分野で協力を推し進め、確固たる信頼関係を構築していく必要があります。平和条約締結問題は、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針の下、精力的に交渉を進めます。

昨年12月に発表した「日・EU協力のための行動計画」の実施などを通じて、国際社会における重要性を増している欧州諸国との関係を、更に発展させてまいります。

我が国は、自らの再生に取り組むと同時に、世界経済の安定に向け、ふさわしい役割を果たしていかなければなりません。そのため、WTO新ラウンドの交渉に積極的に参加し、開発途上国の関心や懸念にも配慮しつつ、世界貿易の一層の自由化とWTOルールの強化を図ってまいります。併せて、先般のシンガポールとの間の経済連携協定の署名を踏まえ、今後、多くの国・地域との経済連携を進めてまいります。

今回、私は、外務省の体制を一新することとしました。新しい体制の下、山積する外交課題に取り組むとともに、内外の信頼を一刻も早く回復するよう、外務省改革を強力に進めてまいります。

むすび

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昨年6月から始めたタウンミーティングは、47都道府県を一巡し、小泉内閣は、多くの国民と活発な対話を行うことができました。今後も、多様な形で、対話を継続します。

いかなる政策も、政治に対する国民の信頼なくして実行できません。構造改革の実現のためには、まず、国会議員が率先して範を示し、国民と共に改革に立ち向かっていかなければなりません。

政治に対する国民の信頼を裏切る行為が、相次いで生じていることは、極めて残念です。こうしたことが今後繰り返されないよう、政治倫理確立のための法整備について、国会において十分議論されることを期待します。また、公共工事をめぐる不正を防止するため、昨年4月に施行した入札契約適正化法の徹底を図ります。

私は、初めての所信表明演説で、改革に立ち向かう決意を国民に問いかけました。先の臨時国会における演説では、変化を恐れない勇気を求めました。改革の痛みが現実のものとなりつつある今、これまで様々な苦境を乗り切って、新しい時代を切り拓いてきた日本と日本人を信じ、未来への希望を決して失わない強さを、改めて求めたいと思います。

これまで不可能だと思われていた改革が、国民の幅広い支持によって、着実に実現の方向に向かっています。国家の発展のため不可欠のものは、自らを助ける精神と、自らを律する精神であり、改革の原動力は国民一人ひとりです。

終わりに、一つのを御紹介したいと思います。昭和21年正月歌会始に詠まれた、昭和天皇の御製であります。

ふりつもるみ雪にたへていろかへぬ松そをゝしき人もかくあれ

終戦後、半年も経たない時に、皇居を眺めて詠まれたものと思われます。の降る、厳しい冬の寒さに耐えて、青々と成長する松のように、人々も雄々しくありたいとの願いを込められたものと思います。

明治維新の激動の中から近代国家を築き上げ、第二次大戦の国土の荒廃に屈することなく祖国再建に立ち上がった、先人たちの献身的努力に思いを致しながら、我々も現下の難局に雄々しく立ち向かっていこうではありませんか。明日の発展のために。子どもたちの未来のために。

国民並びに議員各位の御協力を心からお願い申し上げます。

出典

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