第七「カフィズマ」


第四十六聖詠 編集

伶長に歌わしむ。コレイの諸子の詠。

萬民よ、手を拍ち、歓びの聲を以て神に呼べ、

蓋至上の主は畏るべくして、全地を治むる大王なり、

彼は諸民を我等に従わせ、諸族を我等の足下に従わせたり、

主は我等の爲に嗣業を選べり、即其の愛する所のイアコフの榮えなり。

神は呼ぶ聲に伴われて升り、主は喇叭の聲に伴われて升れり。

我が神に歌い歌えよ、我が王に歌い歌えよ、

蓋神は全地の王なり、皆知恵をもって歌えよ。

神は諸民の王となれり、神は其の聖なる宝座に坐せり。

一〇諸民の牧拍はアウラアムの神の民に聚まれり、蓋地の盾は神にあり、彼は其の上に高く挙げられたり。

第四十七聖詠 編集

歌、コレイの諸子の詠。

主は大いにして、我が神の城邑に、其の聖山に讃揚せらる。

シオン山は美しき高處にして、全地の喜悦なり、其の北方に大王の城邑あり。

神は其の住所に於いて防ぎ護る者として知らる、

蓋視よ、諸王集まりて、偕に過ぎ去れり、

彼等は見て驚き、心亂れて遁れたり、

彼處には恐懼と産婦の如き苦しみと彼等を囲めり、

爾東風を以てファルシスの舟を壞れり。

我等嘗て聞きし如く、今萬軍の主の城邑、我が神の城邑に見るを得たり、神は之を固めて永遠に迄らん。

一〇神よ、我等爾の仁慈を爾の堂の中に念えり。

一一神よ、爾の名の如く、爾の讃美も地の極に至る、爾の右の手は義を満てたり。

一二主よ、爾の判きに因りてシオン山は楽しむべし、イウデヤの女は歓ぶべし。

一三爾等シオンの周囲を行きて、之を環り、其の戍楼を数えよ、

一四其の城垣に心を留め、其の宮室を視よ、之を後世に述べん爲なり、

一五蓋此の神は我等の神にして世々に至り、彼は我等を導きて死の時に至らん。

第四十八聖詠 編集

伶長に歌わしむ。コレイの諸子の詠。

萬民之を聴け、

全地に居る者、貴賤、貧富を論ぜず、皆之に耳をよ。

我が口は睿智を出し、我が心の思いは知識を出さん。

我が耳を傾けて比喩を聴き、悉く以て我が隠語を解かん。

我が患難の日、我を迫害する者の悪我を環る時、我何ぞ懼れん。

己の力を恃み、其の財の多きに誇る者よ、

人敢えて其の兄弟を贖う能わず、彼の爲に神に償いをなす能わず、

其の霊を贖う價は貴し、

一〇人常に存して墓を見ざること、世々之なからん。

一一人皆見る、智者も死し、愚者も無智者も滅びて、其の財を他人に遺す。

一二彼等思えらく、其の家は永く存し、其の住所は世々に存せん、彼等己の名を以て其の地に名づく。

一三惟人は貴きに止まるを得ず、彼は亡ぶる獣の如くならん。

一四彼等の道は愚蒙なり、然れども其の後の人は尚其の意を是とす。

一五彼等は羊の如く地獄に閉ざされ、死は彼等を牧せん、平旦に義者は彼等を主どらん、彼等の力は竭き、墓は彼等の住所とならん。

一六惟神は我を納れんとする時、我が霊を地獄の権より脱れしめん。

一七人富を致し、其の家益々榮ゆる時、爾懼るる毋れ、

一八蓋彼死して一切を携えず、其の榮えは彼に伴わざらん。

一九彼存命の時其の霊を楽しませ、且つ人爾が自ら満足するを見て、爾を讃むれども、

二〇彼は永く光を観ざる其の列祖の處に往かん。

二一人の貴くして無智なるは、亡ぶる獣の如し。

光榮讃詞

第四十九聖詠 編集

アサフの詠。

諸神の神、主は言葉を出して地を召す、日の出ずる處より日の入る處に至る。

神はシオンの即極めて美しき處より顕る、

我が神来る、彼は黙さず、其の前に燬き盞す火あり、其の四周に烈しき風あり。

彼は上より天地を呼ぶ、其の民を裁かん爲なり、

曰う、我の聖者、祭を以て我と約を結びし者を我が前に集めよ。

諸天は神の義を唱えん、蓋此の審判者は神なり。

吾が民よ、聴け、我言わん、イズライリよ、我証を以て爾を責めん、我は神、爾の神なり。

我爾の祭りの爲に爾を譴めんとするに非ず、爾の燔祭りは常に我が前に在り。

我犢を爾の家より、或いは山羊を爾の牢より受けざらん、

一〇蓋林中の諸獣と千山の諸畜と皆我に属す、

一一我山の悉くの禽を知る、野の獣も我が前に在り。

一二我縦令飢うとも、爾に告げざらん、蓋世界と之に満つる者と皆我に属す。

一三我豈に牡牛の肉を食らい、或いは山羊の血を飲まんや。

一四讃美を以て神に献ぜよ、爾の誓いを至上者に償え、

一五憂いの日に我を呼べ、我爾を援けん、爾乃ち我を讃榮せん。

一六神罪人に謂う、爾何爲れぞ我が律を伝え、我が約を爾の口に執りて、

一七自ら我の訓えを疾み、我の言葉を爾の後ろに棄つる、

一八爾盗賊を見れば之に与し、姦淫者に遇えば之と偕にす、

一九爾の口を悪言の爲に啓き、爾の舌は偽りを編む、

二〇爾は坐して兄弟を誹り、爾の母の子を讒す、

二一爾既に之を行い、我黙せり、爾は我も亦爾の如しと思えり。我爾を譴め、爾の罪を爾が目の前に置かん。

二二神を忘るる者よ、此を悟れ、否らずば我奪いて援くる者なからん。

二三讃美を献ずる者は我を恭まう、己の道を慎む者は、我彼に救いを顕わさん。

第五十聖詠 編集

伶長に歌わしむ。ダワィドの詠。
ダワィド、ワィルサワィヤに入りて後、予言者ナファンの彼に来たりし時に之を作れり。

神よ、爾の大いなる憐れみに因りて我を憐れみ、爾が恵みの多きに因りて我の不法をし給え。

屡々しばしば我を我が不法より洗い、我を我が罪より清め給え、

けだし我は我が不法を知る、我の罪は常に我が前に在り。

我は爾ひとり爾に罪を犯し、悪を爾の目の前に行えり、爾は爾の審断に義にして、爾の裁判におおやけなり。

視よ、我は不法に於いてはらまれ、我が母は罪に於いて我を生めり。

視よ、爾は心に真実のあるを愛し、我がうちに於いて智慧を我に顕わせり。

「イッソプ」を以て我にそそげ、然せば我潔くならん、我をあらえ、然せば我雪より白くならん。

一〇我に喜びと楽しみとを聞かせ給え、然せば爾に折られし骨はよろこばん。

一一爾のかんばせを我が罪より避け、我がことごとくの不法をし給え。

一二神よ、潔き心を我に造れ、正しきたましいを我のうちに改め給え。

一三我を爾のかんばせよりうことなかれ、爾の聖神゜を我より取り上ぐること なかれ。

一四爾が救いの喜びを我にかえせ、主宰たる神゜を以て我を固め給え。

一五我不法の者に爾の道を教えん、けんの者は爾に帰らんとす。

一六神よ、我が救いの神よ、我を血より救い給え、然せば我が舌は爾の義をげん。

一七主よ、我がくちびるひらけ、然せば我が口は爾の讃美を揚げん、

一八蓋爾は祭を欲せず、欲せば我此をたてまつらん、爾はやきまつりを喜ばず。

一九神に喜ばるる祭は痛悔のたましいなり、痛悔して謙遜なる心は、神よ、爾軽んじ給わず。

二〇主よ、爾の恵みに因りて恩をシオンに垂れ、イエルサリムのじょうえんを建て給え。

二一其の時に爾義の祭、ささげものやきまつりとを喜びけん、其の時に人々爾の祭壇にこうしそなえんとす。

光榮讃詞

第五十一聖詠 編集

伶長に歌わしむ。ダワィドの教訓。
イドゥメヤ人ドイグ来たりてサウルに告げて、ダワィド アワィメレフの家に至れりと、言いし後に此を作れり。

剛き者よ、何爲れぞ悪業を以て誇る、神の恵みは恒に我と偕にす。

爾の舌は害を計る、譎りなる者よ、爾の舌は鋭き薙刀の如し。

爾悪を好むこと善に逾え、偽りを好むこと真実を言うに越ゆ。

譎の舌よ、爾は悉くの害ある談を好む、

此が爲に神は爾を壞りて残すことなく、爾を爾の住所より、爾の根を生ける者の遅り抜かん。

義人は看て懼れ、彼を笑いて云わん、

視よ、此の人は神を以て己の力とせず、己が財の多きを恃みて、其の悪業に固くなれり。

一〇惟我は青き橄欖の樹の神の家に在るが如し、神の恵みを恃みて永遠に迄らん。

一一我爾が行いし事に縁りて、永遠に爾を讃榮し、爾の名を恃まん、其の爾の聖人の前に善なればなり。

第五十二聖詠 編集

伶長に簫を以て和せしむ。ダワィドの教訓。

無知なる者は其の心に神なしと謂えり。彼等は自ら壞れ、憎むべき悪を行えり、善を爲す者なし。

神は天より人の諸子を臨み、或いは智の明らかにして、神を求むる者ありやを見んと欲す。

皆迷い、均しく無用と爲れり、善を行う者なし、一も亦なし。

不法を行い、餅を食らう如く我が民を食らい、及び神を呼ばざる者、豈に悟らずや。

彼等は懼れなき處に懼れん、蓋神は爾を攻むる者の骨を散らさん、爾彼等を辱しめん、神彼等を棄てたればなり。

誰かシオンより救いをイズライリに与えん。神が其の民の虜を返さん時、イアコフは喜び、イズライリは楽しまん。

第五十三聖詠 編集

伶長に悉く弾きて歌わしむ。ダワィドの教訓。
ジフェイ人来たりてサウルに告げて、ダワィド我等の處に匿るるに非ずやと、言いし後に此を作れり。

神よ、爾の名を以て我を救い、爾の力を以て我を裁き給え。

神よ、我が祷を聴き、我が口の言葉を聆き納れ給え、

蓋外人は起ちて我を攻め、強き者は我が霊を覓む、彼等は神を己の前に置かず。

視よ、神は我の援助なり、主は我が霊を固め給う。

彼は我が敵に其の悪を報いん、爾の真実を以て彼等を滅ぼし給え。

主よ、我心を盡して爾に祭を獻げ、爾の名を讃め揚げん、其の善なるを以てなり、

蓋爾は我を諸々の艱難より救い給えり、我が目は我の敵を見たり。

第五十四聖詠 編集

伶長に琴を弾きて歌わしむ。ダワィドの教訓。

神よ、我が祷を聆き我が願いより匿るる毋れ。

我に耳を傾けて我に聴き給え、我は悲しみの中にさまよい、

敵の聲不虔者の責めに由りて擾う、蓋彼等は不法を以て我を誣い、怒りを以て我に仇す。

我が心は我の衷に慄き、死の恐惶は我に及べり、

驚懼と戦慄とは我に臨み、恐惶は我を囲めり。

我言えり、執か我に鴿の翼を予うるあらん、我飛び去りて安きを獲ん、

遠く離れて野に居らん、

急ぎて旋風と暴風とを避けん。

一〇主よ、彼等を亂し、其の舌を分けよ、蓋我は暴虐と争競とを城邑の中に見る、

一一彼等は昼夜其の城垣の上を繞る。其の中に毒悪と患難あり、

一二残害は其の中にあり、詭詐と誑騙とは其の衢を離れず。

一三我を謗る者は敵に非ず、敵ならば我之を忍ばん、我に高ぶる者は我が仇に非ず、仇ならば我之を避けん、

一四乃爾嘗て我と儔しき者、我の友、我の近き者たり、

一五我と親しき語らいを爲しし者、偕に神の宮に行きし者たり。

一六願わくは死は彼等に至らん、願わくは彼等は生きながら地獄に降らん、悪事は其の住所に、其の間に在ればなり。

一七惟我神に呼ばん、主乃我を救わん。

一八晩と朝と午に我祈りて呼ばん、彼乃我の聲を聴かん、

一九我が霊を我を攻むる者より平安に脱れしめん、彼等夥しければなり。

二〇神は聴かん、世の前より在ます者は彼等を卑くせん、蓋彼等に改新なし、彼等は神を畏れず、

二一己の手を彼等と和睦する者に伸べ、己の約に背けり、

二二其の口は膏より滑らかにして、其の心に仇を懐き、其の言葉は油より柔らかにして是れ白刃なり。

二三爾の重任を主に負わしめよ、彼は爾を扶けん。彼は何時も義人に撼くを容さざらん。

二四神よ、爾は彼等を滅びの穴に陥れん、血を流し、二心を行う者は生きて其の日の半ばにも至るを得ず。主よ、惟我爾を頼む。

光榮讃詞