皇室典範
朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝國議会の協賛を経た皇室典範を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年一月十五日
皇室典範
編集法律第三号
皇室典範
- 第一條
- 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
- 第二條
- 皇位は、左の順序により、皇族に、これを傳える。
- 一 皇長子
- 二 皇長孫
- 三 その他の皇長子の子孫
- 四 皇次子及びその子孫
- 五 その他の皇子孫
- 六 皇兄弟及びその子孫
- 七 皇伯叔父及びその子孫
前項各号の皇族がないときは、皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを傳える。
前二項の場合においては、長系を先にし、同等內では、長を先にする。
- 第三條
- 皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前條に定める順序に從つて、皇位継承の順序を変えることができる。
- 第四條
- 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに卽位する。
- 第五條
- 皇后、太皇太后、皇太后、親王、親王妃、內親王、王、王妃及び女王を皇族とする。
- 第六條
- 嫡出の皇子及び嫡男系嫡出の皇孫は、男を親王、女を內親王とし、三世以下の嫡男系嫡出の子孫は、男を王、女を女王とする。
- 第七條
- 王が皇位を継承したときは、その兄弟姉妹たる王及び女王は、特にこれを親王及び內親王とする。
- 第八條
- 皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という。
- 第九條
- 天皇及び皇族は、養子をすることはできない。
- 第十條
- 立后及び皇族男子の婚姻は、皇室会議の議を経ることを要する。
- 第十一條
- 年齢十五年以上の內親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、內親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
- 第十二條
- 皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる。
- 第十三條
- 皇族の身分を離れる親王又は王の妃並びに直系卑属及びその妃は、他の皇族と婚姻した女子及びその直系卑属を除き、同時に皇族の身分を離れる。但し、直系卑属及びその妃については、皇室会議の議により、皇族の身分を離れないものとすることができる。
- 第十四條
- 皇族以外の女子で親王妃又は王妃となつた者が、その夫を失つたときは、その意思により、皇族の身分を離れることができる。
前項の者が、その夫を失つたときは、同項による場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
第一項の者は、離婚したときは、皇族の身分を離れる。
第一項及び前項の規定は、前條の他の皇族と婚姻した女子にこれを準用する。
第十五條 皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。
第十六條 天皇が成年に達しないときは、攝政を置く。
天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、國事に関する行爲をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、攝政を置く。
第十七條 攝政は、左の順序により、成年に達した皇族が、これに就任する。
一 皇太子又は皇太孫
二 親王及び王
三 皇后
四 皇太后
五 太皇太后
六 內親王及び女王
前項第二号の場合においては、皇位継承の順序に從い、同項第六号の場合においては、皇位継承の順序に準ずる。
第十八條 攝政又は攝政となる順序にあたる者に、精神若しくは身体の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前條に定める順序に從つて、攝政又は攝政となる順序を変えることができる。
第十九條 攝政となる順位にあたる者が、成年に達しないため、又は前條の故障があるために、他の皇族が、攝政となつたときは、先順位にあたつていた皇族が、成年に達し、又は故障がなくなつたときでも、皇太子又は皇太孫に對する場合を除いては、攝政の任を讓ることがない。
第二十條 第十六條第二項の故障がなくなつたときは、皇室会議の議により、攝政を廃する。
第二十一條 攝政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
第二十二條 天皇、皇太子及び皇太孫の成年は、十八年とする。
第二十三條 天皇、皇后、太皇太后及び皇太后の敬称は、陛下とする。
前項の皇族以外の皇族の敬称は、殿下とする。
第二十四條 皇位の継承があつたときは、 卽位の礼を行う。
第二十五條 天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。
第二十六條 天皇及び皇族の身分に関する事項は、これを皇統譜に登錄する。
第二十七條 天皇、皇后、太皇太后及び皇太后を葬る所を陵、その他の皇族を葬る所を墓とし、陵及び墓に関する事項は、これを陵籍及び墓籍に登錄する。
第二十八條 皇室会議は、議員十人でこれを組織する。
議員は、皇族二人、衆議院及び参議院の議長及び副議長、內閣総理大臣、宮内庁の長並びに最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人を以て、これに充てる。
議員となる皇族及び最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は、各々成年に達した皇族又は最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官の互選による。
第二十九條 內閣総理大臣たる議員は、皇室会議の議長となる。
第三十條 皇室会議に、予備議員十人を置く。
皇族及び最高裁判所の裁判官たる議員の予備議員については、第二十八條第三項の規定を準用する。
衆議院及び参議院の議長及び副議長たる議員の予備議員は、各々衆議院及び参議院の議員の互選による。
前二項の予備議員の員数は、各々その議員の員数と同数とし、その職務を行う順序は、互選の際、これを定める。
內閣総理大臣たる議員の予備議員は、內閣法の規定により臨時に內閣総理大臣の職務を行う者として指定された國務大臣を以て、これに充てる。
宮内庁の長たる議員の予備議員は、內閣総理大臣の指定する宮内庁の官吏を以て、これに充てる。
議員に事故のあるとき、又は議員が欠けたときは、その予備議員が、その職務を行う。
第三十一條 第二十八條及び前條において、衆議院の議長、副議長又は議員とあるのは、衆議院が解散されたときは、後任者の定まるまでは、各々解散の際衆議院の議長、副議長又は議員であつた者とする。
第三十二條 皇族及び最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官たる議員及び予備議員の任期は、四年とする。
第三十三條 皇室会議は、議長が、これを招集する。
皇室会議は、第三條、第十六條第二項、第十八條及び第二十條の場合には、四人以上の議員の要求があるときは、これを招集することを要する。
第三十四條 皇室会議は、六人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
第三十五條 皇室会議の議事は、第三條、第十六條第二項、第十八條及び第二十條の場合には、出席した議員の三分の二以上の多数でこれを決し、その他の場合には、過半数でこれを決する。
前項後段の場合において、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第三十六條 議員は、自分の利害に特別の関係のある議事には、参與することができない。
第三十七條 皇室会議は、この法律及び他の法律に基く権限のみを行う。
附則
この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
現在の皇族は、この法律による皇族とし、第六條の規定の適用については、これを嫡男系嫡出の者とする。
現在の陵及び墓は、これを第二十七條の陵及び墓とする。
この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)は、この法律と一体を成すものである。
附則[昭和二十四年五月三一日法律第一三四号]
編集附則
1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。但し、新聞出版用紙割当事務庁設置法第七条の改正規定は、昭和二十四年五月二十五日から適用する。
2~5 省略
附則[平成二十九年六月十六日法律第六十三号]
編集附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一条並びに次項、次条、附則第八条及び附則第九条の規定は公布の日から、附則第十条及び第十一条の規定はこの法律の施行の日の翌日から施行する。
2 前項の政令を定めるに当たっては、内閣総理大臣は、あらかじめ、皇室会議の意見を聴かなければならない。
(この法律の失効)
第二条 この法律は、この法律の施行の日以前に皇室典範第四条の規定による皇位の継承があったときは、その効力を失う。
(皇室典範の一部改正)
第三条 皇室典範の一部を次のように改正する。
附則に次の一項を加える。
この法律の特例として天皇の退位について定める天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)は、この法律と一体を成すものである。
(宮内庁法の一部改正)
第十一条 宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)の一部を次のように改正する。
附則を附則第一条とし、同条の次に次の二条を加える。
第二条 宮内庁は、第二条各号に掲げる事務のほか、上皇に関する事務をつかさどる。この場合において、内閣府設置法第四条第三項第五十七号の規定の適用については、同号中「第二条」とあるのは、「第二条及び附則第二条第一項前段」とする。
2 第三条第一項の規定にかかわらず、宮内庁に、前項前段の所掌事務を遂行するため、上皇職を置く。
3 上皇職に、上皇侍従長及び上皇侍従次長一人を置く。
4 上皇侍従長の任免は、天皇が認証する。
5 上皇侍従長は、上皇の側近に奉仕し、命を受け、上皇職の事務を掌理する。
6 上皇侍従次長は、命を受け、上皇侍従長を助け、上皇職の事務を整理する。
7 第三条第三項及び第十五条第四項の規定は、上皇職について準用する。
8 上皇侍従長及び上皇侍従次長は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条に規定する特別職とする。この場合において、特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号。以下この項及び次条第六項において「特別職給与法」という。)及び行政機関の職員の定員に関する法律(昭和四十四年法律第三十三号。以下この項及び次条第六項において「定員法」という。)の規定の適用については、特別職給与法第一条第四十二号中「侍従長」とあるのは「侍従長、上皇侍従長」と、同条第七十三号中「の者」とあるのは「の者及び上皇侍従次長」と、特別職給与法別表第一中「式部官長」とあるのは「上皇侍従長及び式部官長」と、定員法第一条第二項第二号中「侍従長」とあるのは「侍従長、上皇侍従長」と、「及び侍従次長」とあるのは「、侍従次長及び上皇侍従次長」とする。
第三条 第三条第一項の規定にかかわらず、宮内庁に、天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)第二条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となつた皇族に関する事務を遂行するため、皇嗣職を置く。
2 皇嗣職に、皇嗣職大夫を置く。
3 皇嗣職大夫は、命を受け、皇嗣職の事務を掌理する。
4 第三条第三項及び第十五条第四項の規定は、皇嗣職について準用する。
5 第一項の規定により皇嗣職が置かれている間は、東宮職を置かないものとする。
6 皇嗣職大夫は、国家公務員法第二条に規定する特別職とする。この場合において、特別職給与法及び定員法の規定の適用については、特別職給与法第一条第四十二号及び別表第一並びに定員法第一条第二項第二号中「東宮大夫」とあるのは、「皇嗣職大夫」とする。
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