「古今和歌集/巻十四」の版間の差分

巻十四：恋四

 

00677

 

みちのくの－あさかのぬまの－はなかつみ－かつみるひとに－こひやわたらむ

 

00678

 

あひみすは－こひしきことも－なからまし－おとにそひとを－きくへかりける

 

00679

 

いそのかみ－ふるのなかみち－なかなかに－みすはこひしと－おもはましやは

 

00680

 

きみてへは－みまれみすまれ－ふしのねの－めつらしけなく－もゆるわかこひ

 

00681

 

ゆめにたに－みゆとはみえし－あさなあさな－わかおもかけに－はつるみなれは

 

00682

 

いしまゆく－みつのしらなみ－たちかへり－かくこそはみめ－あかすもあるかな

 

00683

 

いせのあまの－あさなゆふなに－かつくてふ－みるめにひとを－あくよしもかな

 

00684

 

はるかすみ－たなひくやまの－さくらはな－みれともあかぬ－きみにもあるかな

 

00685

 

こころをそ－わりなきものと－おもひぬる－みるものからや－こひしかるへき

 

00686

 

かれはてむ－のちをはしらて－なつくさの－ふかくもひとの－おもほゆるかな

 

00687

 

あすかかは－ふちはせになる－よなりとも－おもひそめてむ－ひとはわすれし

 

00688

 

おもふてふ－ことのはのみや－あきをへて－いろもかはらぬ－ものにはあるらむ

 

00689

 

さむしろに－ころもかたしき－こよひもや－われをまつらむ－うちのはしひめ

 

00690

 

きみやこむ－われやゆかむの－いさよひに－まきのいたとも－ささすねにけり

 

00691

 

いまこむと－いひしはかりに－なかつきの－ありあけのつきを－まちいてつるかな

 

00692

 

つきよよし－よよしとひとに－つけやらは－こてふににたり－またすしもあらす

 

00693

 

きみこすは－ねやへもいらし－こむらさき－わかもとゆひに－しもはおくとも

 

00694

 

みやきのの－もとあらのこはき－つゆをおもみ－かせをまつこと－きみをこそまて

 

00695

 

あなこひし－いまもみてしか－やまかつの－かきほにさける－やまとなてしこ

 

00696

 

つのくにの－なにはおもはす－やましろの－とはにあひみむ－ことをのみこそ

 

00697

 

しきしまや－やまとにはあらぬ－からころも－ころもへすして－あふよしもかな

 

00698

 

こひしとは－たかなつけけむ－ことならむ－しぬとそたたに－いふへかりける

 

00699

 

みよしのの－おほかはのへの－ふちなみの－なみにおもはは－わかこひめやは

 

00700

 

かくこひむ－ものとはわれも－おもひにき－こころのうらそ－まさしかりける

 

00701

 

あまのはら－ふみととろかし－なるかみも－おもふなかをは－さくるものかは

 

00702

 

あつさゆみ－ひきののつつら－すゑつひに－わかおもふひとに－ことのしけけむ

 

00703

 

なつひきの－てひきのいとを－くりかへし－こしとけくとも－たえむとおもふな

 

00704

 

さとひとの－ことはなつのの－しけくとも－かれゆくきみに－あはさらめやは

 

00705

 

かすかすに－おもひおもはす－とひかたみ－みをしるあめは－ふりそまされる

 

00706

 

おほぬさの－ひくてあまたに－なりぬれは－おもへとえこそ－たのまさりけれ

 

00707

 

おほぬさと－なにこそたてれ－なかれても－つひによるせは－ありてふものを

 

00708

 

すまのあまの－しほやくけふり－かせをいたみ－おもはぬかたに－たなひきにけり

 

00709

 

たまかつら－はふきあまたに－なりぬれは－たえぬこころの－うれしけもなし

 

00710

 

たかさとに－よかれをしてか－ほとときす－たたここにしも－ねたるこゑする

 

00711

 

いてひとは－ことのみそよき－つきくさの－うつしこころは－いろことにして

 

00712

 

いつはりの－なきよなりせは－いかはかり－ひとのことのは－うれしからまし

 

00713

 

いつはりと－おもふものから－いまさらに－たかまことをか－われはたのまむ

 

00714

 

あきかせに－やまのこのはの－うつろへは－ひとのこころも－いかかとそおもふ

 

00715

 

せみのこゑ－きけはかなしな－なつころも－うすくやひとの－ならむとおもへは

 

00716

 

うつせみの－よのひとことの－しけけれは－わすれぬものの－かれぬへらなり

 

00717

 

あかてこそ－おもはむなかは－はなれなめ－そをたにのちの－わすれかたみに

 

00718

 

わすれなむと－おもふこころの－つくからに－ありしよりけに－まつそこひしき

 

00719

 

わすれなむ－われをうらむな－ほとときす－ひとのあきには－あはむともせす

 

00720

 

たえすゆく－あすかのかはの－よとみなは－こころあるとや－ひとのおもはむ

 

00721

 

よとかはの－よとむとひとは－みるらめと－なかれてふかき－こころあるものを

 

00722

 

そこひなき－ふちやはさわく－やまかはの－あさきせにこそ－あたなみはたて

 

00723

 

くれなゐの－はつはなそめの－いろふかく－おもひしこころ－われわすれめや

 

00724

 

みちのくの－しのふもちすり－たれゆゑに－みたれむとおもふ－われならなくに

 

00725

 

おもふより－いかにせよとか－あきかせに－なひくあさちの－いろことになる

 

00726

 

ちちのいろに－うつろふらめと－しらなくに－こころしあきの－もみちならねは

 

00727

 

あまのすむ－さとのしるへに－あらなくに－うらみむとのみ－ひとのいふらむ

 

00728

 

くもりひの－かけとしなれる－われなれは－めにこそみえね－みをははなれす

 

00729

 

いろもなき－こころをひとに－そめしより－うつろはむとは－おもほえなくに

 

00730

 

めつらしき－ひとをみむとや－しかもせぬ－わかしたひもの－とけわたるらむ

 

00731

 

かけろふの－それかあらぬか－はるさめの－ふるひとなれは－そてそぬれぬる

 

00732

 

ほりえこく－たななしをふね－こきかへり－おなしひとにや－こひわたりなむ

 

00733

 

わたつみと－あれにしとこを－いまさらに－はらははそてや－あわとうきなむ

 

00734

 

いにしへに－なほたちかへる－こころかな－こひしきことに－ものわすれせて

 

00735

 

おもひいてて－こひしきときは－はつかりの－なきてわたると－ひとしるらめや

 

00736

 

たのめこし－ことのはいまは－かへしてむ－わかみふるれは－おきところなし

 

00737

 

いまはとて－かへすことのは－ひろひおきて－おのかものから－かたみとやみむ

 

00738

 

たまほこの－みちはつねにも－まとはなむ－ひとをとふとも－われかとおもはむ

 

00739

 

まてといはは－ねてもゆかなむ－しひてゆく－こまのあしをれ－まへのたなはし

 

00740

 

あふさかの－ゆふつけとりに－あらはこそ－きみかゆききを－なくなくもみめ

 

00741

 

ふるさとに－あらぬものから－わかために－ひとのこころの－あれてみゆらむ

 

00742

 

やまかつの－かきほにはへる－あをつつら－ひとはくれとも－ことつてもなし

 

00743

 

おほそらは－こひしきひとの－かたみかは－ものおもふことに－なかめらるらむ

 

00744

 

あふまての－かたみもわれは－なにせむに－みてもこころの－なくさまなくに

 

00745

 

あふまての－かたみとてこそ－ととめけめ－なみたにうかふ－もくつなりけり

 

00746