==== 白駒による注 ====
『解析概論』増訂第二版を元に、片仮名を平仮名に、旧字体を新字体に変換したサンプルです。第三版と見比べると、異なる点が多々あることが分かります(第三パラグラフで §53 とあるのはミスか。第三版では修正済み)。どうせ旧字体を完全に再現するのは無理ですから、初めからこのサンプルのように投稿してはどうか、というのが私の考えです。増訂第二版を元に機械的に字体を変えるだけならば、第三版の著作権を侵害することにはならないでしょう。
『解析概論』増訂第二版をなるべく忠実に再現したサンプルです。出力できない旧字体はやむを得ず新字体にしています。例えば「弱」「節(節とは異なる字体)」「述」「化」「既(既とは異なる字体)」。旧字体と新字体の対応を調べたり、旧字体が Unicode に含まれているかどうか調べるには、[http://brickhouse.jp/qji/ こちらのサイト]が便利です。
==== 64.指數数函數数,三角函數数 ====
§54 デ實數ニ關スルで実数に関する展開
{{解析概論/equation|<math>e^z =\sum \frac{z^n}{n!}</math>}}
ニに於テて <math>z</math> ヲを複素數ニシテ数にして,<math>e^z</math> ノの定義ヲ擴を拡張シタガしたが,コノヤウナ擴このやうな拡張ハは全クく規約的 (conventional) デで,拘束力薄弱デアルである.然ルニるに前節ニに述ベタべた解析的延長ノの原則ニヨレバによれば,<math>e^z</math> ヲ擴を拡張シテして解析函數ヲ数を得ルニハるには,上記ガが唯一無二ノの方法デアルコトガであることが確定シタノデアルしたのである(261頁注意).<math>\sin z</math>, <math>\cos z</math> 等ニ關シテモに関しても同様デアルである.
本節デハでは,コノヤウナこのやうな立場カラから指數数函數数,三角函數ヲ数を再考スルする.(所謂代數数解析ノの現代化!)
コノ擴この拡張ノ實の実質上ノの意味ヲを示スタメニすために次ノの考察ヲを附ケけ加ヘルへる.§53 デで,擴拡張サレタルされたる <math>e^z=\exp(z)</math> ニ關シテモに関しても加法定理 <math>\exp(z_1+z_2)=\exp(z_1)\cdot\exp(z_2)</math> ガが成立ツコトヲつことを計算ニヨツテ證によつて証明シタガしたが,解析的延長ノの原則ニヨレバによれば,ソレハ當それは当然デで,計算ヲを用ヰズシテゐずして明白デアルである.今先ヅづ <math>z_2</math> ヲを一ツノ實數トスルつの実数とする.然ラバらば左邊ノ辺の <math>\exp(z_1+z_2)</math> モも又右邊ノ辺の <math>\exp(z_1)\cdot\exp(z_2)</math> モも <math>z_1</math> ニ關シテハに関しては正則デで,ソレラガ實數それらが実数軸上ノの <math>z_1</math> ニ關シテハに関しては一致スルコトガすることが既知ダカラだから,任意ノの <math>z_1</math> ニ關シテモに関しても一致スルする.サテさて今度ハは <math>z_1</math> ヲを任意ノの複素數トシテ数として,上記ノ兩邊ヲの両辺を <math>z_2</math> ノの函數ト数と見テて,同様ニに解析的延長ノの方法ヲを適用スレバすれば,任意ノの複素數数 <math>z_1, z_2</math> ニ關シテに関して指數数函數ノ数の加法定理ガが成立ツコトガつことが分カルかる.約言スレバすれば函數数 <math>\exp(z)</math> ハは解析的延長ニに際シテして,ソノその解析的性質ヲを保有スルする.コレハこれは重要ナルなる論點デアル点である.
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