春秋左氏傳/001 隱公/07

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訓読文

【經】　七年、春王の三月、叔姫《しゆくき》、紀《き》に歸《とつ》ぐ。滕侯《とうこう》卒《しゆつ》す。夏、中丘《ちうきう》に城《き》づく。齊侯《せいこう》其弟年《ねん》をして來聘《らいへい》せしむ。秋、公、邾《ちゆ》を伐つ。冬、天王《てんわう》、凡伯《はんばく》をして來聘せしむ。戎《じう》、凡伯を楚丘《そきう》に伐ち以《ゐ》て歸《かへ》る。

【傳】　七年（周ノ桓王四年）春、滕侯卒すとて、名を書せざるは、未だ同盟《どうめい》せざるなり^[1]。凡《およ》そ諸侯同盟すれば、是《こゝ》に於て名を稱《しよう》す。故に薨《こう》ずれば則ち赴《つ》ぐるに名を以てす。終を告げ、嗣《し》を稱して、以て好《よしみ》を繼《つ》ぎ、民《たみ》を息《やすま》す^[2]。之を禮經《れいけい》^[3]と謂ふ。
　夏、中丘《ちうきう》に城《き》づくとは時《とき》ならざる^[4]を書するなり。
　齊侯、夷仲年《いちうねん》^[5]をして來聘せしむるは、（隱公六年→）艾《かい》の盟《ちかひ》^[6]を結ぶなり。
　秋、宋、鄭と平《たひら》ぐ。七月庚申《かうしん》、宿《しゆく》に盟ふ。
　公、邾を伐つは、宋の爲《た》めに討《う》ちしなり^[7]。
　初、戎、周に朝《てう》して、幣《へい》^[8]を公卿《こうけい》に發《いた》せしとき、凡伯^[9]、賓《ひん》と（シテ之ヲ饗應）せざりき。冬、王、凡伯をして（魯ニ）來聘せしむ。還《かへ》るとき、戎、之を楚丘^[10]に伐ち、以て歸る。陳、鄭と平ぐ。
　十二月、陳の五父《ほ》、鄭に如《ゆ》き蒞《のぞ》みて盟《ちか》ふ。壬申《じんしん》、鄭伯と盟ひ、歃《すゝ》ること忘《わす》るゝ^[11]が如《ごと》し。洩伯《せつはく》^[12]曰く、『五父は必ず（災ヲ）免《のが》れじ。盟を賴《たの》まず^[13]』と。鄭の良佐《りやうさ》^[14]、陳に如き蒞みて盟ふ。辛巳《しんし》、陳侯と盟ひ、亦《また》陳の將に亂れんとするを知《し》れり。
　（隱公三年→）鄭の公子忽《こつ》、王^[15]の所に在り。故に、陳侯、之に妻《めあ》はせんと請《こ》ふ^[16]。鄭伯、之を許す。乃《すなは》ち婚《こん》を成《な》せり^[17]。

註

1. 公羊傳には、滕侯の名を書せざるは、微國なればなりと曰ふ。
2. 亡君の終を告げ、位を嗣ぐの主を稱し、以て嗣君、先君に繼ぎて鄰好を修め、人民を休息せしむ。
3. 禮經は禮の大法。
4. 傳に時ならずと稱する者は、皆、冬を俟ちて城づくも亦可なる者、謂はゆる已むを得て而も已まざる者なり。凡そ難に備ふるに非ずして城づく者は、傳に、時なると時ならざるとを以て之を釋す。難に備ふる者は、則ち已むを得ざるあり、故に譏ること無し。
5. 齊侯の弟なる年。
6. 六年に在り。
7. 公、邾を距みて更に鄭と平ぎ、鄭を以て援と爲さんと欲せしが、今、鄭復た宋と盟ふ、故に懼れて邾を伐ち、以て宋を求めんと欲す、故に宋の爲に討つと曰ふ。
8. 進物。
9. 周の卿士。
10. 衞の地。
11. 血を歃るに、心此に在らざる也。歃るは血を以て口の旁に塗る也。
12. 鄭の洩駕。
13. 盟に當りて惰慢なるをいふ。
14. 鄭の大夫。
15. 周王。
16. 公子忽、王に寵あるが故に、陳人、婚を請ひしなり。
17. 婚を許諾せり。