海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律
本則
編集(目的)
- 第一条
- この法律は、海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとって、海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶の航行の安全の確保が極めて重要であること、並びに海洋法に関する国際連合条約においてすべての国が最大限に可能な範囲で公海等における海賊行為の抑止に協力するとされていることにかんがみ、海賊行為の処罰について規定するとともに、我が国が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な事項を定め、もって海上における公共の安全と秩序の維持を図ることを目的とする。
(定義)
- 第二条
- この法律において「海賊行為」とは、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶を除く。)に乗り組み又は乗船した者が、私的目的で、公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)又は我が国の領海若しくは内水において行う次の各号のいずれかの行為をいう。
- 一 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為
- 二 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶内にある財物を強取し、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させる行為
- 三 第三者に対して財物の交付その他義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求するための人質にする目的で、航行中の他の船舶内にある者を略取する行為
- 四 強取され若しくはほしいままにその運航が支配された航行中の他の船舶内にある者又は航行中の他の船舶内において略取された者を人質にして、第三者に対し、財物の交付その他義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求する行為
- 五 前各号のいずれかに係る海賊行為をする目的で、航行中の他の船舶に侵入し、又はこれを損壊する行為
- 六 第一号から第四号までのいずれかに係る海賊行為をする目的で、船舶を航行させて、航行中の他の船舶に著しく接近し、若しくはつきまとい、又はその進行を妨げる行為
- 七 第一号から第四号までのいずれかに係る海賊行為をする目的で、凶器を準備して船舶を航行させる行為
(海賊行為に関する罪)
- 第三条
- 前条第一号から第四号までのいずれかに係る海賊行為をした者は、無期又は五年以上の懲役に処する。
- 前項の罪(前条第四号に係る海賊行為に係るものを除く。)の未遂は、罰する。
- 前条第五号又は第六号に係る海賊行為をした者は、五年以下の懲役に処する。
- 前条第七号に係る海賊行為をした者は、三年以下の懲役に処する。ただし、第一項又は前項の罪の実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
第四条
- 前条第一項又は第二項の罪を犯した者が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
- 前項の罪の未遂は、罰する。
(海上保安庁による海賊行為への対処)
- 第五条
- 海賊行為への対処は、この法律、海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)その他の法令の定めるところにより、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。
- 前項の規定は、海上保安庁法第五条第十七号に規定する警察行政庁が関係法令の規定により海賊行為への対処に必要な措置を実施する権限を妨げるものと解してはならない。
第六条
- 海上保安官又は海上保安官補は、海上保安庁法第二十条第一項において準用する警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第七条の規定により武器を使用する場合のほか、現に行われている第三条第三項の罪に当たる海賊行為(第二条第六号に係るものに限る。)の制止に当たり、当該海賊行為を行っている者が、他の制止の措置に従わず、なお船舶を航行させて当該海賊行為を継続しようとする場合において、当該船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由のあるときには、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。
(海賊対処行動)
- 第七条
- 防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において海賊行為に対処するため必要な行動をとることを命ずることができる。この場合においては、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十二条の規定は、適用しない。
- 防衛大臣は、前項の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、次に掲げる事項について定めた対処要項を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、現に行われている海賊行為に対処するために急を要するときは、必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。
- 一 前項の行動(以下「海賊対処行動」という。)の必要性
- 二 海賊対処行動を行う海上の区域
- 三 海賊対処行動を命ずる自衛隊の部隊の規模及び構成並びに装備並びに期間
- 四 その他海賊対処行動に関する重要事項
- 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項を、遅滞なく、国会に報告しなければならない。
- 一 第一項の承認をしたとき その旨及び前項各号に掲げる事項
- 二 海賊対処行動が終了したとき その結果
(海賊対処行動時の自衛隊の権限)
- 第八条
- 海上保安庁法第十六条、第十七条第一項及び第十八条の規定は、海賊対処行動を命ぜられた海上自衛隊の三等海曹以上の自衛官の職務の執行について準用する。
- 警察官職務執行法第七条の規定及び第六条の規定は、海賊対処行動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、同条中「海上保安庁法第二十条第一項」とあるのは、「第八条第二項」と読み替えるものとする。
- 自衛隊法第八十九条第二項の規定は、前項において準用する警察官職務執行法第七条及び同項において準用する第六条の規定により自衛官が武器を使用する場合について準用する。
(我が国の法令の適用)
(関係行政機関の協力)
- 第十条
- 関係行政機関の長は、第一条の目的を達成するため、海賊行為への対処に関し、海上保安庁長官及び防衛大臣に協力するものとする。
(国等の責務)
- 第十一条
- 国は、海賊行為による被害の防止を図るために必要となる情報の収集、整理、分析及び提供に努めなければならない。
- 海上運送法(昭和二十四年法律第百八十七号)第二十三条の三第二項に規定する船舶運航事業者その他船舶の運航に関係する者は、海賊行為による被害の防止に自ら努めるとともに、海賊行為に係る情報を国に適切に提供するよう努めなければならない。
(国際約束の誠実な履行等)
- 第十二条
- この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意するとともに、確立された国際法規を遵守しなければならない。
(政令への委任)
- 第十三条
- この法律に定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附則 抄
編集(施行期日)
- 第一条
- この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。
- 第二条
- 削除
(経過措置)
- 第三条
- 第三条第四項ただし書の規定は、この法律の施行後に自首した者がその施行前にした行為についても、適用する。
- 第四条
- この法律の施行の際現に自衛隊法第八十二条の規定により行動を命ぜられている自衛隊の部隊の当該行動については、第七条第一項後段の規定は、適用しない。
附 則 (平成二三年六月二四日法律第七四号) 抄
編集(施行期日)
- 第一条
- この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
附 則 (平成二四年九月五日法律第七一号) 抄
編集(施行期日)
- 1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
参考資料
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