汚名演説
演説
編集副大統領[1]、下院議長[2]、上院議員及び下院議員諸君[3]。
昨日、1941年12月7日――この日は汚名と共に記憶されることであろうが――、アメリカ合衆国は、大日本帝国の海軍及び空軍[4]による意図的な奇襲攻撃を受けた。
合衆国は、同国との間に平和的関係を維持しており、日本の要請により、太平洋の平和維持に向け、同国の政府及び天皇[5]との対話を続けてきた。実際、日本の航空隊が米国のオアフ島に対する爆撃を開始した1時間後に、駐米日本大使[6]とその同僚[7]は、最近米国が送った書簡に対する公式回答を我が国の国務長官[8]に提出した。この回答には、これ以上外交交渉を続けても無駄と思わせる記述こそあったものの、戦争や武力攻撃の警告や暗示は全くなかった。
次のことは記録されるべきであろう。ハワイから日本までの距離を鑑みれば、昨日の攻撃が数日前、あるいは事によると数週間前から、周到に計画されていたことは明らかである。この間、日本政府は、持続的平和を希望するとの偽りの声明と表現で、合衆国を故意に欺こうとしてきた。
ハワイ諸島に対する昨日の攻撃は、米国の海軍力と軍事力に深刻な被害をもたらした。残念ながら、極めて多くの国民の命が失われたことをお伝えせねばならない。さらに、サンフランシスコとホノルルの間の公海上で、米国艦隊が魚雷攻撃を受けたとの報告も受けた。
つまり、日本は太平洋全域にわたる奇襲攻撃を敢行したのである。昨日と今日の事件が全てを物語っている。米国民は既に見解を固めており、この事件が自国のまさに存続と安全とを脅かすという事実を充分理解している。
陸軍及び海軍の最高指揮官として、私は自国の防衛のため、あらゆる措置を講ずるよう指示した。
だが我々全国民は、自国に対するこの猛攻撃が如何なる性格のものであったか[10]を、決して忘れない。
この計画的侵略を打倒するのにどれほど時間が掛かろうとも、米国民は正義の力をもって必ずや完全勝利を達成する。
全力で自国を防衛するだけでなく、このような形の背信行為が今後2度と我々を脅かさないようにせねばならない。私のこの主張は、議会と国民の意志を反映していると信じる。
戦闘行為は存在する。もはや、国民や国土や国益が重大な危機にあるという事実を無視することはできない。
軍への信頼と我々国民の限りない決意をもって、我々は必ずや勝利を収めてみせる。神のご加護を祈る。
議会に対しては、以下のとおり宣言するよう要請する。1941年12月7日の日曜日に日本の一方的かつ卑劣な攻撃が開始されたため、アメリカ合衆国と大日本帝国の間に戦争状態が開始したと。
脚注
編集- ↑ ヘンリー・A・ウォーレス(任1941年1月20日 - 1945年1月20日)。
- ↑ サム・レイバーン(任1940年9月16日 - 1947年1月3日)。
- ↑ 草稿の時点では、この1文は「TO THE CONGRESS THE UNITED STATES」(合衆国議会へ)となっていた。
- ↑ 原文は「air forces」。便宜上「空軍」と訳したが、大日本帝国には空軍はなく、攻撃を行ったのは海軍航空隊の艦載機。
- ↑ 昭和天皇(在位1926年12月25日 - 1989年1月7日)。
- ↑ 野村吉三郎(任1940年 - 1942年)。
- ↑ 来栖三郎。
- ↑ コーデル・ハル(任1933年3月4日 - 1944年11月30日)。
- ↑ 原文は「And」。草稿にはなかった。
- ↑ 「the character of the onslaught(猛攻撃の性格)」とは不当性、即ち真珠湾攻撃が奇襲であったことを指す。ローズヴェルトは、日本の攻撃には正義がないと主張しているのである。
底本
編集- 汚名演説(音声)
- FDR's "Day of Infamy" Speech (ミズーリ大学カンザスシティ校HP内資料)
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