父と子と聖神の名に依るアミン
問 『父と子と聖神』とは何を指すや
答 是は聖三者を指すなり我等は信ず神は唯一なれども三位を有つことを即ち第一の位は父第二の位は子第三の位は聖神なり此唯一にして三位なる神に同等の権威恭敬礼拝を帰す
問 『名に依る』とは如何なる意なるや
答 恭敬を献ぐ或は光栄を帰すと云ふ意なり
問 『アミン』とは如何なる意なるや
答 実に其通り夫れに相違なしと云う意なり
問 何故に此祈祷のうちへ『アミン』と云う語を加へられしや
答 我等が其口に唱ふる如く自ら堅く信ずるの意を示すなり
問 何時我等は此祈祷を唱ふべきや
答 此祈祷は常に善き業を為すの前に総て唱ふべし如何となれば我等は常に其行ふこと語ることを総て聖三者の光栄の為にせざるべからざればなり
問 我等は此祈祷文は他の祈祷を唱ふる時に当りて如何なる外形上の記号を行ふべきや
答 己の身に十字架の記号をなすべし
問 十字架の記号を如何様になすべきや
答 十字架の記号を為すには右の手の指即ち拇指食指中指を伸ばして一つに合せ他の残りの二つの指即ち無名指小指を掌の方へ屈め斯くして其指を先づ最初に額へ当てて『父』と唱へ次に胸へ当てて『子』と唱へ其次に右の肩へ当てて『聖神の』と唱へ終に左の肩へ当てて『名に依るアミン』と唱ふるなり
問 其様に指を合すは何の表なりや
答 先づ三つの指を合すは神は唯一なれども三位を有つことを示すなり又二つの指を掌の方へ屈むるは是れ神の子なる我等の救主イイスス ハリストスは神と人との二性を有つことを示すなり而して己の身に十字架の記号を為すは是れ我等が十字架に釘られしイイスス ハリストスを信ずるに依て救はるることを示すなり
問 何故に額と胸と両肩にて十字架の記号を為すや
答 我等も智識と感情と意思を聖くするが為なり
- ○ 祈祷をなすときは必ず其身に十字架の記号を行ふべし又此十字架の記号を食物飲物衣服及び其他の物品にも行ふべし盖十字架の記号は神の恩寵を具ふるものなればなり
- ○ 若し誰か十字架の記号を軽々しく行ひ或は十字架の記号を行ふことを耻る者は神に対する信仰を表はさざるものにして斯る人をば『主も亦其聖徒と共に父の光栄をもて来る時之を耻づべし』(可八の三十八)