問 神に祈るとは如何なることぞ
答 神に祈るとは神の徳を崇め其恩を謝し又其助を願ひ求むることを言ふなり
問 我等は如何様にして祈るべきや
答 我等は時として心の中のみにて祈ることあり然れども我等人間は皆霊魂と肉体より成立つものなるが故に大概は或る外儀を用ひて祈るを常とす例令ば己が身に十字架の記号を為し又は膝を屈め或は時として深く神を敬ひ畏るるの心を現はすが為め又は深く神の前に己を卑下するが為に伏して拝する等の類なり
問 如何なる時又如何なる処にて祈るべきや
答 如何なる時にも亦如何なる処にても祈るべきなり
問 然れども如何なる時殊更に祈るべきや
答 殊に朝睡眠より醒め起きたる時に祈るべし盖神が我等を夜中護り給ひし其恩を謝するが為め又其日のうち神の祝福を願ふが為なり
次に神の助を願ふが為めに其日の業を始むる前に祈るべし
又神の恩を謝するが為に其日の業を終りたる後にも祈るべし
昼飯を喫する前には神の祝福を願ひ昼飯を喫し終りたる後には神の恩を感謝すべし(勿論朝夕の食前食後にも)
夜に入りては寝る前に祈るべし盖神が一日中我等を護り給ひし恩を感謝するが為め亦其夜を護り給ふことを願ふが為なり
問 我等は祈る時に当り神の名を唱ふる外に他の名を唱ふることありや
答 我等は祈る時に当り神の名を唱ふる外に至聖至潔なる童貞女神の母マリヤと諸天使及び諸聖人の名を唱ふ
問 若し我等右の規定に従ひて祈るときは果て其祈祷は神に喜び納れらるるや
答 果て然りと云ふを得ず若し神を畏るるの心を懐かず唯口のみを以て祈るときは啻に神の恩に與からざるのみならず返て神の怒に触るるのみなり