楽しき生涯 (新字旧仮名)


たのしき生涯しょうがい 編集

いんなき紀律きりつなき一片いっぺん真情しんじょう 編集

我の諂ふべき人なし
我の組すべき党派なし
我の戴くべき僧侶なし
我の維持すべき爵位なし

我に事ふべきの神あり
我に愛すべきの国あり
我に救ふべきの人あり
我に養ふべきの父母と妻子あり

四囲の山何ぞ青き
加茂の水何ぞ清き
空の星何ぞ高き
朝の風何ぞさは

一函の書に千古の智恵あり
以て英雄と共に語るを得べし
一茎の筆に奇異の力あり
以て志を千載に述るを得べし

我に友を容るゝの室あり
我に情を綴るゝのペンあり
炉辺団坐して時事を慨し
異域書を飛して孤独を慰む

翁は机に凭れ
媼は針にあり
婦はくりやはしく
児は万歳を舞ふ

感謝して日光を迎へ
感謝して麁膳に対し
感謝して天職を執り
感謝して眠に就く

生を得る何ぞ楽しき
讃歌絶ゆる間なし

 

この著作物は、1930年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)80年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、1929年1月1日より前に発行された(もしくはアメリカ合衆国著作権局に登録された)ため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。