日本国とドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約
日本国とドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約をここに公布する。
御名 御璽
昭和五十七年九月四日
内閣総理大臣 鈴木 善幸
条約第十四号
日本国とドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約
日本国政府及びドイツ民主共和国政府は、両国間の友好及び相互協力の関係を強化すること並びに両国間の経済関係を深めかつ一層発展させることを希望し、
通商及び航海に関する条約を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。
これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。
第一条
両締約国は、両国間の貿易を発展させ及び両国間の経済関係を強化することを目的として平等及び相互の利益の原則に基づき協力するよう並びに、この目的の達成のための発意及び措置を奨励するよう、それぞれの国の法令に従い、努力するものとする。
第二条
1 輸入若しくは輸出に対し若しくはこれらに関連して課され又は輸入若しくは輸出のための支払手段の国際的移転に対して課されるすべての種類の関税及び課徴金に関し、これらの関税及び課徴金の徴収の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、並びに第四条に規定するすべての事項に関し、いずれか一方の締約国が第三国を原産地とする産品又は第三国に仕向けられる産品に対して与えており又は将来与えることのあるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の締約国の領域を原産地とする同様の産品又は他方の締約国の領域に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられる。
2 1の規定は、いずれか一方の締約国が与える次の特別の利益には、適用しない。
⒜ 国境貿易を容易にするため隣接国に与える特別の利益
⒝ 当該一方の締約国の法令により輸入品として取り扱われる海産物のうち当該一方の締約国の船舶によつて採捕された海産物又は海上において当該一方の締約国の船舶内で加工若しくは製造をすることにより得られた海産物に与える特別の利益
第三条
1 いずれの一方の締約国の産品も、一又は二以上の第三国の領域を通過して輸送された後のものであつても、他方の締約国の領域への輸入に際しては、それらの産品が当該一方の締約国の領域から直接に輸入された場合に課される関税又は課徴金よりも高い関税又は課徴金を課されることはない。
2 1の規定は、第三国の領域を通過する間に積み替えられ、再包装され又は倉庫において保管された産品についても、適用する。
第四条
1 いずれか一方の締約国の領域を原産地とする産品で他方の締約国の領域に輸入されたものには、当該他方の締約国の領域内において、同様の国内産品に直接に又は間接に課されるいかなる種類の内国税その他の内国課徴金よりも高い内国税その他の内国謀徴金を、直接にも間接にも、課してはならない。
2 いずれか一方の締約国の領域を原産地とする産品で他方の締約国の領域に輸入されたものには、当該他方の締約国の領域内において、国内における当該産品の販売、販売のための提供、購入、輸送、流通又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、国内原産の同様の産品に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えなければならない。
第五条
1 いずれの一方の締約国も、いずれかの産品の他方の締約国の領域からの輸入又はその領域への輸出に対し、いかなる禁止又は制限も課してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出が同様に禁止され又は制限される場合は、この限りでない。
2 1の規定は、各締約国が、重大な安全上の利益の保護、公衆衛生の保護並びに病気、害虫及び寄生物に対する動植物の保護に関する措置を採用し又は実施することを妨げるものと解してはならない。
第六条
第二条1の規定の適用を妨げることなく、各締約国は、一時的に自国の領域に持ち込まれ、かつ、自国の領域から持ち出される他方の締約国の次の物品に対し、自国の法令の定めるところにより、関税及び課徴金の免除に関して最恵国待遇を与える。
⒜ 商品見本
⒝ 試験用及び実験用の物品
⒞ 展覧会、共進会及び見本市に出品される物品
⒟ 組立工が設備の組立て及び取付けに用いる器具
⒠ 加工され又は修理される物品及び加工又は修理に必要な材料
⒡ 輸出され又は輸入される貨物の容器
第七条
1 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、身体及び財産の保護に関し、内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。
2 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、自己の権利の行使及び擁護のためすべての審級にわたり裁判所の裁判を受け及び行政機関に対して申立てをする権利に関し、内国民待遇及び最恵国待遇を与えられる。
3 各締約国の国民は、自国の領事官と通信し及びその事務所に自国の領事官を訪問する権利を与えられる。
4 いずれか一方の締約国の領域内において他方の締約国の国民が、公判前においてであるかその他の場合においてであるかを問わず、拘禁その他の身体の自由の制限を受けた場合には、当該一方の締約国の権限のある当局は、直ちに、当該他方の締約国の領事官に通報しなければならない。当該他方の締約国の領事官は、遅滞なく当該国民を訪問し及び当該国民と通信することを許される。
5 いずれの一方の締約国の国民も、他方の締約国の領域内において、第三国の国民に課される租税、手数料若しくは課徴金よりも重い又はこれら以外のいかなる種類の租税、手数料又は課徴金も課されることはない。ただし、各締約国は、相互主義に基づいて租税に関する特定の利益を与える権利又は二重課税の回避のための協定により租税に関する特別の利益を与える権利を留保する。
第八条
いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の港その他の投 錨 びよう地に入るときは、当該一方の締約国の領事官は、当該船舶並びにその乗組員及び旅客に対して十分な援助を与える権利を有する。
第九条
第十条
1 いずれか一方の締約国の国旗を掲げる船舶で、国籍の証明のため当該一方の締約国の法令により要求される書類を備えているものは、公海並びに他方の締約国の港、場所及び水域において、当該一方の締約国の船舶と認められる。
2 いずれか一方の締約国の権限のある当局が発給した船舶のトン数の測度に関する証書は、他方の締約国の権限のある当局により、その発給した証書と同等のものと認められる。
3 いずれの一方の締約国の商船も、他方の締約国の商船及び第三国の商船と同様の限度においてかつ同様の条件で、外国との間における通商及び航海のために開放されている当該他方の締約国のすべての港、場所及び水域に出入し及び停泊する権利を有する。いずれの一方の締約国の商船並びにその乗組員、旅客及び積荷も、他方の締約国の港、場所及び水域において、すべての事項に関し、当該他方の締約国の商船及び第三国の商船並びにこ れらの商船の乗組員、旅客及び積荷に与えられる待遇より不利でない待遇を当該他方の締約国によつて与えられる。
4 1から3までの規定は、沿岸貿易には、適用しない。いずれか一方の締約国の商船が、外国から輸送する旅客若しくは積荷の全部若しくは一部の陸揚げをするため又は外国向けの旅客若しくは積荷の全部若しくは一部の積載をするため、他方の締約国の法令の定めるところにより当該他方の締約国の一の港から他の港への航行をすることは、沿岸貿易とはみなされない。
5 この条約において「商船」には、漁船を含まない。
第十一条
1 いずれの一方の締約国も、難破、海上損害又は不可抗力による寄航の場合において、自国の船舶並びにその乗組員、旅客及び積荷に対して与える援助、保護及び免除と同様の援助、保護及び免除を他方の締約国の船舶並びにその乗組員、旅客及び積荷に対して与える。当該船舶から引き揚げられた物品については、国内消費のために搬入される場合を除くほか、すべての関税を免除する。
2 いずれか一方の締約国の船舶が他方の締約国の沿岸で座礁し又は難破した場合には、当該他方の締約国の関係当局は、最寄りの地にある船舶所属国の領事官又は、当該領事官がいない場合には、当該船舶所属国の外交使節団にその旨を通報する。
第十二条
1 両締約国は、いずれか一方の締約国の国民若しくは第九条の法人に該当する法人と他方の締約国の国民若しくは同条の法人に該当する法人との間で締結される商事契約から又はこれに関連して生ずることのある紛争の解決のため、両国の仲裁機関の利用をあらゆる可能な方法により奨励するものとする。
2 各締約国は、いずれか一方の締約国の国民若しくは第九条の法人に該当する法人と他方の締約国の国民若しくは同条の法人に該当する法人との間で締結される商事契約から又はこれに関連して生ずることのある紛争に関する仲裁判断を拘束力のあるものとして承認し、かつ、仲裁判断の援用がされる領域の手続規則に従つてこれを執行する。もつとも、仲裁による当該紛争の解決につき契約自体又は妥当な形式により作成された別個の約定において規定している場合に限る。
3 仲裁判断の承認及び執行は、次の場合には、拒否することができる。
⑴ 判断の援用を不利益とする当事者の請求がある場合において、当該当事者が、承認及び執行を求められた締約国の権限のある当局に対し次のいずれかについての証拠を提出するとき。
⒜ 2にいう契約又は約定の当事者が、適用を受ける法令により無能力者であつたこと又は当該契約若しくは約定が、これらの当事者が準拠法として指定した法令により若しくはその指定がなかつたときは判断が行われた国の法令により無効であること。
⒝ 判断の援用を不利益とする当事者が、仲裁人の選定若しくは仲裁手続について適当な通告を受けなかつたこと又はその他の理由により防
⒞ 判断が、仲裁付託の条項に定められていない紛争若しくはその条項の範囲内にない紛争に関するものであること又は仲裁付託の範囲を超える事項に関する判定を含むものであること。ただし、仲裁に付託された事項に関する判定を仲裁に付託されなかつた事項に関する判定と分離することができる場合には、判断のうち仲裁に付託された事項に関する判定の部分は、承認し、かつ、執行することができる。
⒟ 仲裁機関の構成又は仲裁手続が、当事者の合意に従つたものでなかつたこと又は、そのような合意がなかつたときは、仲裁が行われた国の法令に従つたものでなかつたこと。
⒠ 判断が、当事者を拘束するものとなるに至つていないこと又は、判断が行われた国若しくは判断の基礎となつた法令の属する国の権限のある当局により、取り消され若しくは停止されたこと。
⑵ 承認及び執行を求められた締約国の権限のある当局が次のいずれかを認める場合
⒜ 紛争の対象である事項が、当該締約国の法令により仲裁による解決の不可能なものであること。
⒝ 当該判断の承認及び執行をすることが、当該締約国の公の秩序に反すること。
第十三条
両締約国間のすべての支払は、それぞれの国の法令の定めるところにより、交換可能通貨で行う。
第十四条
各締約国は、この条約の運用に影響を及ぼす問題に関して他方の締約国の行う提案に対し好意的な考慮を払うものとし、また、協議のための適当な機会を与える。
第十五条
1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかにベルリンで交換されるものとする。
2 この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生じ、五年の期間効力を有するものとし、その後は、3に定めるところにより終了する時まで効力を存続する。
3 いずれの一方の締約国も、六箇月前に他方の締約国に対して文書による予告を与えることにより、最初の五年の期間の終わりに又はその後いつでもこの条約を終了させることができる。
以上の証拠として、各全権委員は、この条約に署名調印した。
千九百八十一年五月二十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
園田 直
ドイツ民主共和国政府のために
オスカー・フィッシャー
議定書
日本国とドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約(以下「条約」という。)に署名するに当たり、下名の全権委員は、各自の政府から正当に委任を受け、条約の不可分の一部と認められる次の規定を更に協定した。
1 条約のいかなる規定も、著作権及び工業所有権に関し、いかなる権利も許与し、又はいかなる義務も課するものと解してはならない。
2 条約第十二条のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が千九百五十八年六月十日にニュー・ヨークで作成された外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約又はこれを改正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国として有しており又は有することのある権利及び義務を害するものと解してはならない。
3 条約のいかなる規定も、いずれか一方の締約国が関税及び貿易に関する一般協定若しくは国際通貨基金協定又はこれらを改正し若しくは補足する多数国間の協定の締約国である場合には、これらの協定に基づく当該一方の締約国の権利及び義務を害するものと解してはならない。
4⑴ 各締約国は、自国が国家企業を設立し若しくは維持し又はいずれかの企業に対して排他的な若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与える場合においてこれらの国家企業又は企業が輸入又は輸出を伴う購入又は販売を行うときは、これらの国家企業又は企業を無差別待遇の一般原則に合致する方法で行動させることを約束する。
5 条約第七条4に関し、次のことが了解される。
⒜ 第七条4の通報は、当該他方の締約国の国民が拘禁その他の身体の自由の制限を受けた時からいかなる場合にも三日以内には行わなければならない。
⒝ 当該他方の締約国の領事官は、当該他方の締約国の国民が拘禁その他の身体の自由の制限を受けた時からいかなる場合にも四日以内には当該国民を訪問し及び当該国民と通信することを許される。
6 条約の適用上、条約第九条2の最恵国待遇は、直接投資(次に掲げる方法によるものを含む。)については、相互主義に基づいて与えられることが合意される。
⒜ 出資者に専属する企業、子会社又は営業所の設立又は拡張
⒝ 既存の企業の所有権の完全取得
⒞ 新設又は既存の企業への参加
以上の証拠として、各全権委員は、この議定書に署名調印した。
千九百八十一年五月二十八日に東京で、英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
園田 直
ドイツ民主共和国政府のために
オスカー・フィッシャー
(右条約の英文)
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