新体詩抄/高僧ウルゼーの詩(丶山仙士)
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- 此篇は高僧ウルゼー初め王の寵愛を得て大權を握り威を海内に振ひ其富王室に劣らざるに至りしも忽ち王の意に戻り官職を奪はれ所有を沒收せられたる時世運の定まりなきを嘆息する所にして頗る有名の作なり
丶山仙士
おさらばさらばいざさらば | 再び會はぬ暇乞ひ |
榮譽に永く別るべし | 人の習は皆都て |
利運の端の芽出しなば | 八重咲きにほふ花盛り |
位に位重なりて | 榮曜〔ママ〕發華を極むれば |
愚な胸に思ふ樣 | 運命强く |
天にも登る龍なりと | 悦びいさむをろかさよ |
冬やゝ深く置く霜の | 惰け用捨も荒野原 |
根までを枯らす霜枯に | 運極はまりて身の墮落 |
見るも愍れな有樣は | 我が今日の身の上ぞ |
永の年月心なく | 名譽の海に浮べるは |
浮袋にてうか〳〵と | 游ぐ童子に異ならず |
飽まで强き我が意地も | |
こらへをふせず張り裂けて | 勞れはてたる精神に |
忠を盡して年寄れる | 其の甲斐もなく今ははや |
身の零落に淚川 | 水屑とこそは成るべけれ |
浮世の虚飾や譽れ程 | 忌むべき物はあらずかし |
今に至りて我が胸に | 初めて悟る所あり |
廣き世界の其内で | 王者の機嫌取り取りに |
此世を渡る |
憐むべきは無きぞかし |
願ふ所は其笑顏 | 恐るゝ所は其不興 |
彼と是との氣がねして | 憂さ恐怖さの數々は |
軍するより尚ほ多し | 女子の機嫌取るに増す |
遂に 零落する時は | 天より落るルシファなり |
再ぴ浮ぶ瀬はあらず |
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原文: |
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翻訳文: |
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