新体詩抄/チヤールス、キングスレー氏悲歌(丶山仙士)


チヤールス、キングスレー氏悲歌

編集

丶山仙士

無常を告ぐる入相の 鐘の音るたそがれ
三人みたりの漁夫帆を上げて 入る日を指して西の海
走ら進めども 妻子の為引かさるゝ
心の中皆同じ 父の出舩を眺めつゝ
おき向ひて彳める 童子餘念
まうけ薄く子澤山 雨の降る日も風の夜も
打掛くる浪おと 最とさまじき其時も
かせらぬ男の身 袖のひぬの女子の身

三人の漁夫の妻三人 日も西山入相の
鐘ものか聞ゆれ 籠りし燈臺の
火を挑んと立寄りて つまめるしんつま思ひ
窓の戸開けて眺むれば にわかあめ驟雨やら暴風はやてやら
空打過ぐるむら雲 色黒と物ごし
暴風如何吹けとて かさ如何増せとて
打掛くる浪音 如何程すごく聞けとて
せがやならぬ男の身 袖のひぬの女子の身

朝日かゞやく砂磯 潮引き去りて其跡
殘る三つの屍ぞ 三人の漁夫の妻三人
歸らぬ旅門出して 歸らぬ夫のきがら
髮振り亂し取がり 消る計啼き入て
目もあてられぬ風情 かせらぬ男の身
袖のひぬの女子の身 ひと日も早く世を去れ
一日も早く樂をせん 屍の跡の砂磯
寄せ来る浪のくだけ 鳴りたきや鳴れよゑゝ儘よ
この文書は翻訳文であり、原文から独立した著作物としての地位を有します。翻訳文のためのライセンスは、この版のみに適用されます。
原文:
 

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。

 
翻訳文:
 

この著作物は、1900年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)80年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。