新・文化庁における文化政策の展開と本格移転先庁舎の整備について
新・文化庁における文化政策の展開と本格移転先庁舎の整備について
平成30年8月7日 文化庁移転協議会
1.新・文化庁における文化政策の展開
編集文化芸術は,豊かな人間性や創造性,感動や共感,心身の健康など,人々に多様な恩恵をもたらすのみならず,新たな需要や高い付加価値を生み出すなど,質の高い経済活動を実現する上での源泉ともなるものである。このような文化芸術の力を最大限発揮するため,その基盤となる文化行政の在り方について,近年大きな変革が求められてきている。
このような新たな文化行政の展開に向けて,文化庁については,平成28年3月の「政府関係機関移転基本方針」(まち・ひと・しごと創生本部決定)等において,中央省庁の移転に関する3つの基本的な視点((1)地方創生の視点,(2)国の機関としての機能確保の視点,(3)移転費用等の視点)から検討を行った結果,文化財が豊かで伝統的な文化が蓄積した京都に移転することにより,文化財を活用した観光振興・観光客向けの効果的な文化発信・生活文化の振興などの面からモデル的な取組を推進し,こうした先進的な取組を全国に効果的に波及させることが期待できること,地方の目線・地方創生の観点に立った文化行政の企画立案能力の向上ひいては全国各地の地方文化の掘り起こしや磨き上げにつなげていくことが期待できること,文化庁の移転に伴う費用について,京都側が土地の提供や庁舎建設費用についての応分の負担をする意向が示されていることなどを踏まえ,京都への全面的な移転を決定している。
平成29年4月には,先行移転として「地域文化創生本部」を京都に設置し,文化に関する政策調査研究,生活文化の振興,文化財等を生かした広域文化観光など新たな取組を進めてきている。また,同年7月の「新・文化庁の組織体制の整備と本格移転に向けて」(文化庁移転協議会)では,本格移転における組織体制の大枠,移転場所及び移転時期について決定しており,今後も同決定に基づき,移転に向けた取組を着実に進めることとしている。
平成29年6月には,文化芸術政策の根本法である文化芸術振興基本法が改正され,新たな「文化芸術基本法」が制定された。その改正趣旨は,従前の文化芸術の振興にとどまらず,観光,まちづくり,国際交流,福祉,教育,産業その他の分野における施策を同法の範囲に取り込み,文化芸術により生み出される様々な価値を,文化芸術の継承・発展及び創造に活用させることとしている。
本年3月には,同法に基づく初の基本計画として「文化芸術推進基本計画」を閣議決定した。同計画は,文化審議会による審議や,新たに設置された関係府省庁で構成される「文化芸術推進会議」の開催を経て策定され,文化芸術の本質的価値(豊かな人間性の涵養,創造力・感性の育成など)に加え,社会的・経済的価値(他者と共感し合う心や人間相互の理解の促進,質の高い経済活動の実現など)を明確化するとともに,関係府省庁の文化芸術関連施策を含む文化芸術政策の目指すべき姿や今後5年間(2018-2022年度)の基本的な方向性を示している。
さらに,本年6月には,改正基本法の附則第二条の規定に基づき,文化庁が中核となって我が国の文化行政を総合的に推進していく体制を整備するため,文部科学省設置法の一部改正が行われた。また,先述の「新・文化庁の組織体制の整備と本格移転に向けて」では,遅くとも2021年度中を目指すとされる本格移転に当たって,本庁を京都に置くこと,本庁においては,国会対応,外交関係,関係府省庁との連携調整等に係る政策の企画立案業務及び東京で行うことが必要な団体対応等の執行業務を除くすべての業務を行うこと,その職員数(定員及び定員外職員の数)は,全体の7割を前提に,京都府,京都市をはじめとする地元の協力も得ながら,250人程度以上と見込むものとしている。
こうしたことから,改正後の文部科学省設置法を踏まえ,また,京都への本格移転を見据え,本年10月に予定される文化庁組織の抜本改編においては,縦割を越えた開放的・機動的な文化芸術政策集団の形成を掲げて新・文化庁を発足させ,文化部・文化財部の2部制の廃止により文化庁次長及び審議官それぞれの2名体制を構築するとともに,文化芸術資源を活用した観光振興や地方創生の拡充,文化発信力の向上, 食文化など生活文化の振興,文化創造や文化政策調査研究の推進に加え,文部科学省本省から移管される芸術教育や博物館に関する事務への対応など,文化庁の機能強化を図り,文化芸術立国実現に向け,我が国の文化芸術政策を一層推進していく。
また,同法改正に際し,文化庁の京都移転が,政府関係機関の地方への移転の先行事例であることを踏まえ,効果及び影響の検証を行う旨決議された(※)。これを踏まえ,地域文化創生本部における先行的取組の検証に加え,現在の文化庁庁舎における本格移転後を見据えた試行の検証を行い,必要に応じて改善を図る。
- (※)文部科学省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院文部科学委員会,参議院文教科学委員会)
2.本格移転先庁舎の整備
編集文化庁の本格移転先庁舎となる,京都府警察本部本館等の整備については,「新・文化庁の組織体制の整備と本格移転に向けて」に基づき,国と京都府及び京都市との間で検討を進めてきた。
これまでの検討を踏まえ,今後の文化庁の本格移転先庁舎の整備について,以下のとおり進めることとする。
(1)整備スキーム
編集- 文化庁の本格移転先庁舎については,上記とりまとめに基づき,京都府が京都市の協力を得て,京都府警察本部本館の耐震化も含めた改修を行うとともに,隣接地に新庁舎の増築を行い,整備後,文化庁が長期的に貸付を受ける。
- 本格移転先庁舎の整備は,歴史的・文化的価値のある建物を適切に保存しつつ,「新・文化庁」の庁舎としての品格と機能性を併せ持つことをコンセプトとし,整備主体である京都府は,庁舎等の設計・工事等について,使用者である文化庁の意向を十分に尊重し,文化庁及び京都市と協議しつつ進める。
(2)文化庁使用部分に係る整備規模
編集- 文化庁の使用部分については,本格移転の規模に応じ,新営一般庁舎面積算定基準(国土交通省大臣官房官庁営繕部)に基づく執務室の面積,倉庫等の附属面積等に加え,東京との連絡調整のためのテレビ会議室,文化庁の機能強化に当たって必要となる文化情報発信室等の固有業務室を設ける。
- 文化庁への貸付面積は,現時点では京都府警察本部本館(約4,280㎡)分を含め約6,680㎡を上限とし,今後設計を進める中で最終的に確定することとする。
(3)増築部分の合築
編集- 増築部分については,整備主体である京都府における府庁敷地内の有効活用や整備費用抑制,文化庁における利便性の向上や賃借料抑制等の利点を踏まえ,国として必要な耐震性能その他の性能及び政府機関庁舎にふさわしい独立性・シンボル性の確保を前提に,京都府において整備を予定している新行政棟との合築棟とする。
- 整備主体である京都府は,合築棟とすることにより,本格移転のスケジュールに影響を与えないよう,速やかに整備に着手する。
(4)文化庁使用部分に係る役割分担等
編集- 京都府は,京都市の協力を得て,庁舎の計画・調査・設計・工事・監理・外構に係る整備,セキュリティ関連を含む設備の整備,庁舎及び設備の管理・修繕(軽微な修繕を除く。)を担う。その際,内外から訪問者の多い文化庁長官室,応接室,文化情報発信室等においては,地元京都をはじめとする伝統産業の振興と日本文化の発信力強化のため,魅力ある内装等の整備に配慮する。
- 文化庁は,賃借料及び光熱水料,清掃・警備・軽微な修繕を担う。また,文化庁の事由により庁舎の改修又は模様替えが必要となった場合には,当該費用を担う。
- 京都府及び京都市が所有する会議室並びに文化庁におけるテレビ会議システムの利用に当たっては相互に便宜を図るものとする。また,本庁舎に加え,地元に既にある豊富で多様な施設やスペースを活用し,文化庁からの発信の拠点とする。
- 賃借料の本格移転時の算定及びその後の評価換えに当たっては,十分な説明と時間的余裕を持って,丁寧に文化庁との調整を図る。
- 賃借料は「文化庁の全面的な移転に向けた地元の協力について」(平成30年8月7日付京都府・京都市)を踏まえ,設定する。
この著作物は、日本国著作権法10条2項又は13条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同法10条2項及び13条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 憲法その他の法令
- 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
- 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
- 上記いずれかのものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの
- 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道
この著作物は、米国政府、又は他国の法律、命令、布告、又は勅令等(Edict of governmentも参照)であるため、ウィキメディアサーバの所在地である米国においてパブリックドメインの状態にあります。“Compendium of U.S. Copyright Office Practices”、第3版、2014年の第313.6(C)(2)条をご覧ください。このような文書には、“制定法、裁判の判決、行政の決定、国家の命令、又は類似する形式の政府の法令資料”が含まれます。