彼得前書(明治元訳) 第二章

第二章

編集

1 このゆゑ爾曹なんぢらすべての怨恨うらみすべての詭譎いつはりまた僞善ぎぜん媢嫉ねたみおよびすべて謗言そしりすて
2 いまうまれし嬰兒をさなごちちしたごと爾曹なんぢらこころやしなまことのちちしたふべしこれより爾曹なんぢらそだちすくひいたらん
3 なんぢらあぢはひてしゆめぐみあるものしりたらんにはかくごとくすべし
4 しゆひとすてられたまへどかみえらばれたるたふといけるいしなり
5 爾曹なんぢらかれにきたいけるいしごとたてられてれいいへとなりまたきよ祭司さいしとなりイエス・キリストによりかみよろこばるるれい祭物そなへものささぐべし
6 そは聖書せいしよしるしてわれえらびところたふとすみ首石おやいしをシヲンにおくことをしんずるものはづかしめられじとあればなり
7 このいししんずる爾曹なんぢらにはたふとものとなりしんぜざるものには工師いへつくりすてられてすみ首石おやいしとなれるいしとなり
8 またつまづいしさまたぐるいはなるなり彼等かれらことばしんぜざるによりこれつまづ彼等かれらかくさだめられたるなり
9 爾曹なんぢらえらばれたるやからわうなる祭司さいしきよきたみかみつけものなり爾曹なんぢらをしてめし幽暗くらきよりいだそのたへなるひかりいれたまひしものおのれとくあらはさしめんため爾曹なんぢらかくごとものとなしたまへるなり
10 爾曹なんぢらもとたみあらされば(※1)いまかみたみとなるもと矜恤あはれみうけされいま矜恤あはれみうけたり

11 あいするものわれ爾曹なんぢら(※2)にすす爾曹なんぢら賓旅たびびとまた寄寓やどれるものなれば靈魂たましひさからひてたたかにくよくさるべし
12 またなんぢら異邦人いはうじんうちありよきおこなひなすべしこれ爾曹なんぢらそしりてあくおこなものいへ異邦人いはうじんをして爾曹なんぢらよきおこなひ眷顧かへりみたまふかみあがめしめんためなり
13 なんぢらしゆためすべひとたつところものしたがあるひかみにあるわう
14 あるひあくおこなものばつぜんおこなものほむためわうよりつかはされたる方伯つかさしたがふべし
15 そはなんぢらぜんおこなふをおろかなるひと無知むちことばとどむるはかみむねなればなり
16 なんぢら自由じゆうなるものごとくせよされその自由じゆうあくおほふことなくかみしもべごとくすべし
17 すべてひとうやま兄弟きやうだいあいかみおそわうたふとぶべし

18 しもべなるもの畏懼おそれ主人しゆじんしたがふべしただ善良よきもの柔和にうわなるものにのみならず苛刻なさけなきものにもしたがふべし
19 ひともしうくべからざる苦難くるしみをうけかみうやまひてこれしのばばほむべきことなり
20 爾曹なんぢらもしあやまちをなしうたれてこれしのぶともなんほむべきことならんされどぜんをなしくるしめられてこれしのばばかみ嘉稱ほまれべし
21 爾曹なんぢらめされたるはこれためなりそはキリスト爾曹なんぢらためくるしみをうけ爾曹なんぢらをしておのれあとしたがはしめんとてかた爾曹なんぢらのこたまへばなり
22 かれつみをかさずまたそのくち詭譎いつはりなかりき
23 かれののしられてののしらずくるしめられてはげしきことばいださずたださばものこれまかせたり
24 かれ(※3)うへかかり我儕われらつみみづかおのおひたまへりこれ我儕われらをしてつみしにいかしめんためなりかれむちうたれしにより爾曹なんぢらいやされたり
25 それ爾曹なんぢらはもとひつじごとまよひたりしがいまなんぢらの靈魂たましひ牧者ぼくしや監督かんとくかへれり

※1 明治14(1881)年版では「されば」→「されど」。
※2 明治14(1881)年版では「爾曹なんぢら」→「なんぢら」。
※3 明治14(1881)年版では「かれ」→「かれ」。