帝都高速度交通営団法/昭和25年
第一章 総則
編集第一条 帝都高速度交通営団ハ東京市[1]及其ノ附近ニ於ケル交通機関ノ整備拡充ヲ図ル為地下高速度交通事業ヲ営ムコトヲ目的トスル法人トス
帝都高速度交通営団ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前項ノ事業ニ関聯スル事業ヲ営ミ又ハ之ニ投資スルコトヲ得
第二条 帝都高速度交通営団ノ資本金ハ六千万円トシ之ヲ六十万口ニ分チ一口ノ出資金額ヲ百円トス但シ資本金ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ増加スルコトヲ得
第三条 削除
第四条 帝都高速度交通営団ハ出資ニ対シ勅令ノ定ムル所ニ依リ出資証券ヲ発行ス
第五条 日本国有鉄道ハ四千万円ヲ限リ帝都高速度交通営団ニ出資スルコトヲ得
第六条 日本国有鉄道又ハ公共団体ガ帝都高速度交通営団ニ出資シタル場合ニ於テハ其ノ引受ケタル出資ノ出資金払込ハ其ノ他ノ出資金払込ト之ヲ異ニスルコトヲ得
第七条 帝都高速度交通営団ノ出資者ノ責任ハ其ノ出資額ヲ限度トス
出資者ハ帝都高速度交通営団ニ払込ムベキ出資額ニ付相殺ヲ以テ之ニ対抗スルコトヲ得ズ
第八条 出資者ハ帝都高速度交通営団ノ承認ヲ経テ其ノ持分ヲ譲渡スルコトヲ得
第九条 払込ヲ怠リタル出資者ニ対シ帝都高速度交通営団ガ一月以上ノ相当ノ期間ヲ定メ払込ノ請求ヲ為シタルニ拘ラズ出資者ガ払込ヲ為サザルトキハ帝都高速度交通営団ハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ出資者ノ持分ヲ処分スルコトヲ得
帝都高速度交通営団ハ持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ヨリ滞納金額及定款ヲ以テ定メタル違約金ノ額ヲ控除シタル金額ヲ従前ノ出資者ニ払戻スコトヲ要ス
持分ノ処分ニ依リテ得タル金額ガ滞納金額ニ満タザル場合ニ於テハ帝都高速度交通営団ハ従前ノ出資者ニ対シ不足額ノ弁済ヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ帝都高速度交通営団ガ損害賠償及定款ヲ以テ定メタル違約金ノ請求ヲ為スコトヲ妨ゲズ
出資者ガ第一項ノ期間内ニ払込ヲ為サザルトキハ帝都高速度交通営団ハ其ノ出資者ニ対シ二週間内ニ出資証券ヲ帝都高速度交通営団ニ提出スベキ旨ヲ通知スルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テ提出ナキ出資証券ハ其ノ効力ヲ失フ
前項ノ場合ニ於テハ帝都高速度交通営団ハ遅滞ナク失効シタル出資証券ノ番号並ニ其ノ出資者ノ氏名及住所ヲ公告スルコトヲ要ス
第十条 帝都高速度交通営団ハ定款ヲ以テ左ノ事項ヲ決定スベシ
一 目的
二 名称
三 事務所ノ所在地
四 資本金額、出資及資産ニ関スル事項
五 役員及会議ニ関スル事項
六 業務及其ノ執行ニ関スル事項
七 交通債券ノ発行ニ関スル事項
八 会計ニ関スル事項
九 公告ノ方法
第十一条 帝都高速度交通営団ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ登記ヲ為スコトヲ要ス
前項ノ規定ニ依リ登記スベキ事項ハ登記ノ後ニ非ザレバ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ
第十二条 帝都高速度交通営団ニ付解散ヲ必要トスル事由発生シタル場合ニ於テ其ノ処置ニ関シテハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 帝都高速度交通営団ニ非ザル者帝都高速度交通営団又ハ之ニ類似スル名称ヲ用フルコトヲ得ズ
第十四条 民法第四十四条、第五十条、第五十一条第一項、第五十四条及第五十七条並ニ非訟事件手続法第三十五条第一項ノ規定ハ帝都高速度交通営団ニ之ヲ準用ス
第二章 役員
編集第十五条 帝都高速度交通営団ニ総裁副総裁各一人、理事五人以上及監事三人以上ヲ置ク
第十六条 総裁ハ帝都高速度交通営団ヲ代表シ其ノ業務ヲ総理ス
副総裁ハ総裁事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理シ総裁欠員ノトキハ其ノ職務ヲ行フ
副総裁及理事ハ総裁ヲ輔佐シ定款ノ定ムル所ニ依リ帝都高速度交通営団ノ業務ヲ分掌シ又ハ之ニ参与ス
監事ハ帝都高速度交通営団ノ業務ヲ監査ス
第十七条 総裁、副総裁、理事及監事ハ主務大臣之ヲ命ジ総裁及副総裁ノ任期ハ五年、理事ノ任期ハ四年、監事ノ任期ハ三年トス
第十八条 総裁、副総裁及業務ヲ分掌スル理事ハ他ノ職業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ主務大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第十九条 帝都高速度交通営団ニ評議員若干人ヲ置キ主務大臣之ヲ命ズ
評議員ハ事業経営ニ関スル重要事項ニ付総裁ノ諮問ニ応ジ必要アルトキハ之ニ対シ意見ヲ述ブルコトヲ得
評議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ三年トス
第三章 交通債券
編集第二十条 帝都高速度交通営団ハ払込資本金額ノ十倍ヲ限リ交通債券ヲ発行スルコトヲ得
第二十一条 交通債券ハ額面金額五十円以上トシ無記名利札附トス但シ応募者又ハ所有者ノ請求ニ依リ記名式ト為スコトヲ得
交通債券ハ割引ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十二条 帝都高速度交通営団ハ交通債券借換ノ為一時第二十条ノ制限ニ依ラズ交通債券ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ交通債券ヲ発行シタルトキハ発行後一月内ニ其ノ発行額面金額ニ相当スル旧交通債券ヲ償還スベシ
第二十三条 交通債券ハ売出ノ方法ヲ以テ之ヲ発行スルコトヲ得
第二十四条 日本国有鉄道ハ予算ノ範囲内ニ於テ交通債券ノ引受ヲ為スコトヲ得
第二十五条 帝都高速度交通営団ニ於テ交通債券ヲ発行セントスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
第二十六条 削除
第二十七条 削除
第二十八条 交通債券ノ消滅時効ハ元金ニ在リテハ十五年、利子ニ在リテハ五年ヲ以テ完成ス
第二十九条 交通債券ノ所有者ハ帝都高速度交通営団ノ財産ニ付他ノ債権者ニ先チテ自己ノ債権ノ弁済ヲ受クル権利ヲ有ス
前項ノ規定ハ民法上ノ一般ノ先取特権ノ行使ヲ妨グルコトナシ
第三十条 所得税法中国債以外ノ公債ニ関スル規定ハ交通債券ニ之ヲ準用ス
第三十一条 本章ニ規定スルモノノ外交通債券ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四章 会計
編集第三十二条 帝都高速度交通営団ノ事業年度ハ四月ヨリ九月迄及十月ヨリ翌年三月迄トス
第三十三条 帝都高速度交通営団ハ其ノ資本金ノ四分ノ一ニ達スル迄ハ毎事業年度ニ於テ準備金トシテ利益金ノ百分ノ十以上ヲ積立ツベシ
第三十四条 帝都高速度交通営団ハ払込ミタル出資金額ニ対シ勅令ヲ以テ定ムル割合ヲ超エテ利益金ノ配当ヲ為スコトヲ得ズ
第五章 監督及助成
編集第三十五条 帝都高速度交通営団ハ主務大臣之ヲ監督ス
第三十六条 定款ノ変更及利益金ノ処分ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ
第三十七条 主務大臣ハ帝都高速度交通営団ニ対シ監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
主務大臣ハ部下ノ官吏ヲシテ何時ニテモ帝都高速度交通営団ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査セシムルコトヲ得
第三十八条 主務大臣ハ帝都高速度交通営団ニ対シ地下高速度鉄道ノ建設又ハ改良ヲ命ズルコトヲ得
第三十九条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ予算ノ範囲内ニ於テ帝都高速度交通営団ニ補助金ヲ交付スルコトヲ得
第四十条 帝都高速度交通営団ハ地下高速度鉄道ノ建設又ハ改良工事施行ノ為地下埋設物ノ移転其ノ他ノ工事ノ施行ヲ必要トスル場合ニ在リテハ其ノ工事ノ施行方法又ハ其ノ工事ノ施行ニ因リテ生ズル損失ノ補償ニ付当該管理者ト協議ヲ為スベシ但シ法令ニ別段ノ規定アル場合ハ其ノ規定ノ適用ヲ妨ゲズ
前項ノ協議ヲ為スコト能ハザルトキ又ハ協議調ハザルトキハ帝都高速度交通営団ノ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
前項ノ裁定中補償ニ付不服アル者ハ協議ノ相手方ヲ被告トシ裁定ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三月内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ訴訟ハ裁定ノ効力ヲ停止セズ
第四十一条 削除
第四十二条 役員ガ法令、定款若ハ主務大臣ノ命令ニ違反シ又ハ公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ之ヲ解任スルコトヲ得
第六章 罰則
編集第四十三条 帝都高速度交通営団本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキハ総裁又ハ総裁ノ職務ヲ行ヒ若ハ代理スル副総裁ヲ五千円以下ノ過料ニ処ス副総裁又ハ理事ノ分掌業務ニ係ルトキハ副総裁又ハ理事ヲ過料ニ処スコト亦同ジ
第四十四条 帝都高速度交通営団ノ総裁、副総裁又ハ業務ヲ分掌スル理事第十八条ノ規定ニ違反シ他ノ職業ニ従事シタルトキハ千円以下ノ過料ニ処ス
第四十五条 第十三条ノ規定ニ違反シ帝都高速度交通営団又ハ之ニ類似スル名称ヲ用ヒタル者ハ千円以下ノ過料ニ処ス
附則
編集第四十六条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十七条 主務大臣ハ設立委員ヲ命ジ帝都高速度交通営団ノ設立ニ関スル事務ヲ処理セシム
第四十八条 設立委員ハ定款ヲ作成シ主務大臣ノ認可ヲ受クベシ
前項ノ認可アリタルトキハ設立委員ハ出資者ヲ募集スベシ
第四十九条 設立委員ハ出資者ノ募集ヲ終リタルトキハ出資申込書ヲ主務大臣ニ提出シ設立ノ認可ヲ申請スベシ
前項ノ認可ヲ受ケタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク出資第一回ノ払込ヲ為サシムルコトヲ要ス
第五十条 出資第一回ノ払込完了シタルトキハ出資者ノ総会ヲ招集スベシ
前項ノ総会終結シタルトキハ設立委員ハ遅滞ナク其ノ事務ヲ帝都高速度交通営団総裁ニ引渡スベシ
総裁前項ノ事務ノ引渡ヲ受ケタルトキハ総裁、副総裁、理事及監事ノ全員ハ事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スベシ
帝都高速度交通営団ハ設立ノ登記ヲ為スニ因リテ成立ス
第五十一条 本法ニ規定スルモノノ外帝都高速度交通営団ノ設立ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十二条 陸上交通事業ヲ営ム会社ガ陸上交通事業調整法第二条ノ命令ニ依リ帝都高速度交通営団ニ事業ノ譲渡ヲ為シタルトキハ其ノ譲渡ニヨリ取得シタル交通債券ノ価格ニ関シ譲渡ヲ為シタル事業年度ニ於ケル法人税法ニ依ル所得、営業税法ニ依ル純益及臨時所得税法ニ依ル利益ノ計算ニ付命令ヲ以テ特例ヲ設クルコトヲ得
第五十三条 帝都高速度交通営団ニ事業ヲ譲渡シテ解散シタル会社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ時価ヲ以テ交通債券ヲ残余財産ノ分配金ニ充ツルコトヲ得
第五十四条 帝都高速度交通営団ハ陸上交通事業調整法第二条ノ命令ニ基キ鉄道財団ニ属スルモノノ全部ヲ譲受ケタルトキハ該鉄道財団及之ヲ担保トスル借入金又ハ社債ノ元利支払義務ヲ承継ス
前項ノ場合ニ於テ帝都高速度交通営団ニ属シタル鉄道財団ハ従前ト同一ノ態様ニ於テ前項ノ元利支払義務ヲ担保ス
第一項ノ規定ニ依リ社債ノ元利支払義務ノ承継アリタル場合ニ於テ其ノ債務ニ付テハ社債ニ関スル法令ヲ準用ス
前三項ニ規定スルモノノ外第一項ノ鉄道財団及債務ノ承継ノ場合ニ於テ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五十五条 登録税法第六条ノ三ヲ第六条ノ四トシ第六条ノ二ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第六条ノ三 帝都高速度交通営団ガ交通債券ニ付登記ヲ受クルトキハ左ノ区別ニ従ヒ登録税ヲ納ムベシ
一 交通債券ノ払込
払込金額千分ノ二
二 登記事項ノ変更、消滅又ハ廃止
毎一件金十円
第五十六条 登録税法第十九条第七号中「庶民金庫、」ノ下ニ「帝都高速度交通営団、」ヲ、「庶民金庫法、」ノ下ニ「帝都高速度交通営団法、」ヲ加フ
第五十七条 印紙税法第五条中第六号ノ二ノ次ニ左ノ一号ヲ加フ
六ノ三 帝都高速度交通営団ノ発スル出資証券
附則(昭和21年5月6日勅令第262号)抄
編集本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
附則(昭和21年8月30日法律第14号)抄
編集第二十九条 この法律施行の期日は、各規定について、勅令でこれを定める。
附則(昭和24年5月25日法律第105号)抄
編集1 この法律は、日本国有鉄道法施行の日から施行する。但し、第一条の規定は、公布の日から、第二十二条の規定は、昭和二十四年五月三十一日から施行する。
附則(昭和25年3月31日法律第79号)抄
編集1 この法律は、昭和二十五年四月一日から施行する。
3 第七条から第十一条までの規定による改正規定は、法人の昭和二十五年四月一日以後に終了する事業年度分の法人税から適用し、法人の同日前に終了した事業年度分の法人税については、なお従前の例による。
脚注
編集- ↑ 東京都制施行後は、同法第191条第1項により「東京都」と読み替えられる。この項は、地方自治法施行により東京都制が廃止された後も、同法附則第2条但書の規定により有効である。
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。