大日本帝國憲法

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原文 編集

吿文󠄁

皇朕󠄁レ謹ミ畏ミ
皇祖
皇宗ノ神靈ニ誥ケ白サク皇朕󠄁レ天壤無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ寳祚ヲ承繼シ舊圖ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニ世局ノ進󠄁運󠄁ニ膺リ人文󠄁ノ發達󠄁ニ隨ヒ宜ク
皇祖
皇宗ノ遺󠄁訓ヲ明徵ニシ典憲󠄁ヲ成立シ條章ヲ昭示シ內ハ以テ子孫ノ率󠄁由スル所󠄁ト爲シ外ハ以テ臣民翼󠄂贊ノ道󠄁ヲ廣メ永遠󠄁ニ遵󠄁行セシメ益〻國家ノ丕基ヲ鞏固ニシ八洲民生ノ慶福ヲ增進󠄁スヘシ玆ニ皇室典範及憲󠄁法ヲ制定ス惟フニ此レ皆
皇祖
皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述󠄁スルニ外ナラス而シテ朕󠄁カ躬ニ逮󠄁テ時ト俱ニ擧行スルコトヲ得ルハ洵ニ
皇祖
皇宗及我カ
皇考ノ威靈ニ倚藉スルニ由ラサルハ無シ皇朕󠄁レ仰テ
皇祖
皇宗及
皇考ノ神祐ヲ禱リ倂セテ朕󠄁カ現在及將來ニ臣民ニ率󠄁先シ此ノ憲󠄁章ヲ履行シテ愆ラサラムコトヲ誓フ庶幾󠄁クハ

神靈此レヲ鑒ミタマヘ

憲󠄁法發布勅語

朕󠄁國家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣榮トシ朕󠄁カ祖宗ニ承クルノ大權ニ依リ現在及將來ノ臣民ニ對シ此ノ不磨󠄁ノ大典ヲ宣布ス

惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼󠄂ニ倚リ我カ帝國ヲ肇造󠄁シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖󠄁ナル祖宗ノ威德ト竝ニ臣民ノ忠實勇武ニシテ國ヲ愛シ公󠄁ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル國史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕󠄁我カ臣民ハ卽チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ囘想シ其ノ朕󠄁カ意ヲ奉體シ朕󠄁カ事ヲ奬順シ相與ニ和衷協同シ益〻我カ帝國ノ光榮ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺󠄁業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負󠄁擔ヲ分󠄁ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ

(上諭)

朕󠄁祖宗ノ遺󠄁烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕󠄁カ親愛スル所󠄁󠄁ノ臣民ハ卽チ朕󠄁カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所󠄁󠄁ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ增進󠄁シ其ノ懿德良能ヲ發達󠄁セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼󠄂贊ニ依リ與ニ俱ニ國家ノ進󠄁運󠄁ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日[2]ノ詔命ヲ履踐シ玆ニ大憲󠄁ヲ制定シ朕󠄁カ率󠄁由スル所󠄁󠄁ヲ示シ朕󠄁カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠󠄁ニ循行スル所󠄁󠄁ヲ知ラシム

國家統治ノ大權ハ朕󠄁カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所󠄁󠄁ナリ朕󠄁及朕󠄁カ子孫ハ將來此ノ憲󠄁法ノ條章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ

朕󠄁ハ我カ臣民ノ權利及財產ノ安全󠄁ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲󠄁法及法律ノ範圍內ニ於テ其ノ享有ヲ完全󠄁ナラシムヘキコトヲ宣言ス

帝國議會ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議會開會ノ時ヲ以テ此ノ憲󠄁法ヲシテ有効ナラシムルノ期トスヘシ

將來若此ノ憲󠄁法ノ或ル條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕󠄁及朕󠄁カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲󠄁法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕󠄁カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛󠄁更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ

朕󠄁カ在廷ノ大臣ハ朕󠄁カ爲ニ此ノ憲󠄁法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕󠄁カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲󠄁法ニ對シ永遠󠄁ニ從順ノ義務ヲ負󠄁フヘシ

御名御璽

明治二十二年二月十一日

內閣總理大臣 伯爵󠄂 黑田淸隆
樞密院議長 伯爵󠄂 伊藤博󠄁文󠄁
外務大臣 伯爵󠄂 大隈重信
海軍大臣 伯爵󠄂 西鄕從道󠄁󠄁
農商務大臣 伯爵󠄂 井上 馨
司法大臣 伯爵󠄂 山田顯義
大藏大臣兼內務大臣 伯爵󠄂 松󠄁方正義
陸軍大臣 伯爵󠄂 大山 巖
文󠄁部大臣 子爵󠄂 森 有禮
遞信大臣 子爵󠄂 榎本武揚


大日本帝國憲󠄁法
第一章 天皇
第一條
大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二條
皇位ハ皇室典範ノ定ムル所󠄁ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス
第三條
天皇ハ神聖󠄁ニシテ侵󠄁スヘカラス
第四條
天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲󠄁法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ
第五條
天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ
第六條
天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公󠄁布及執行ヲ命ス
第七條
天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス
第八條
天皇ハ公󠄁共ノ安全󠄁ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避󠄁クル爲緊急󠄁ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス
此ノ勅令ハ次󠄁ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公󠄁布スヘシ
第九條
天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公󠄁共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ增進󠄁スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス
第十條
天皇ハ行政各部ノ官制及文󠄁武官ノ俸給ヲ定メ及文󠄁武官ヲ任免ス但シ此ノ憲󠄁法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ揭ケタルモノハ各〻其ノ條項ニ依ル
第十一條
天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二條
天皇ハ陸海軍ノ編󠄁制及常備兵額ヲ定ム
第十三條
天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス
第十四條
天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス
戒嚴ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條
天皇ハ爵󠄂位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス
第十六條
天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス
第十七條
攝政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所󠄁ニ依ル
攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ
第二章 臣民權利義務
第十八條
日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所󠄁ニ依ル
第十九條
日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所󠄁ノ資󠄁格ニ應シ均ク文󠄁武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公󠄁務ニ就クコトヲ得
第二十條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所󠄁ニ從ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第二十一條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所󠄁ニ從ヒ納󠄁稅ノ義務ヲ有ス
第二十二條
日本臣民ハ法律ノ範圍內ニ於テ居住󠄁及移轉ノ自由ヲ有ス
第二十三條
日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮󠄁捕監禁審問處罰ヲ受クルコトナシ
第二十四條
日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判󠄁官ノ裁判󠄁ヲ受クルノ權ヲ奪ハルヽコトナシ
第二十五條
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住󠄁所󠄁ニ侵󠄁入セラレ及搜索セラルヽコトナシ
第二十六條
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ祕密ヲ侵󠄁サルヽコトナシ
第二十七條
日本臣民ハ其ノ所󠄁有權ヲ侵󠄁サルヽコトナシ
公󠄁益ノ爲必要ナル處分󠄁ハ法律ノ定ムル所󠄁ニ依ル
第二十八條
日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第二十九條
日本臣民ハ法律ノ範圍內ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス
第三十條
日本臣民ハ相當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所󠄁ノ規程ニ從ヒ請󠄁願ヲ爲スコトヲ得
第三十一條
本章ニ揭ケタル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ天皇大權ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第三十二條
本章ニ揭ケタル條規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴觸セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス
第三章 帝國議會
第三十三條
帝國議會ハ貴族院衆議院ノ兩院ヲ以テ成立ス
第三十四條
貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所󠄁ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十五條
衆議院ハ選󠄁擧法ノ定ムル所󠄁ニ依リ公󠄁選󠄁セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十六條
何人モ同時ニ兩議院ノ議員タルコトヲ得ス
第三十七條
凡テ法律ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルヲ要ス
第三十八條
兩議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各〻法律案ヲ提出スルコトヲ得
第三十九條
兩議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同會期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
第四十條
兩議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各〻其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採󠄁納󠄁ヲ得サルモノハ同會期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
第四十一條
帝國議會ハ每年之ヲ召集ス
第四十二條
帝國議會ハ三箇月ヲ以テ會期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
第四十三條
臨時緊急󠄁ノ必要アル場合ニ於テ常會ノ外臨時會ヲ召集スヘシ
臨時會ノ會期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル
第四十四條
帝國議會ノ開會閉會會期ノ延長及停會ハ兩院同時ニ之ヲ行フヘシ
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停會セラルヘシ
第四十五條
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選󠄁擧セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以內ニ之ヲ召集スヘシ
第四十六條
兩議院ハ各〻其ノ總議員三分󠄁ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四十七條
兩議院ノ議事ハ過󠄁半󠄁數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所󠄁ニ依ル
第四十八條
兩議院ノ會議ハ公󠄁開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ祕密會ト爲スコトヲ得
第四十九條
兩議院ハ各〻天皇ニ上奏スルコトヲ得
第五十條
兩議院ハ臣民ヨリ呈󠄁出スル請󠄁願書ヲ受クルコトヲ得
第五十一條
兩議院ハ此ノ憲󠄁法及議院法ニ揭クルモノヽ外內部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第五十二條
兩議院ノ議員ハ議院ニ於テ發言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負󠄁フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演說刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公󠄁布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ處分󠄁セラルヘシ
第五十三條
兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ內亂外患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮󠄁捕セラルヽコトナシ
第五十四條
國務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及發言スルコトヲ得
第四章 國務大臣及樞密顧問
第五十五條
國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律勅令其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
第五十六條
樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所󠄁ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ國務ヲ審議ス
第五章 司法
第五十七條
司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判󠄁所󠄁之ヲ行フ
裁判󠄁所󠄁ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條
裁判󠄁官ハ法律ニ定メタル資󠄁格ヲ具󠄁フル者ヲ以テ之ニ任ス
裁判󠄁官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分󠄁ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條
裁判󠄁ノ對審判󠄁決ハ之ヲ公󠄁開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞󠄁アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判󠄁所󠄁ノ決議ヲ以テ對審ノ公󠄁開ヲ停ムルコトヲ得
第六十條
特別裁判󠄁所󠄁ノ管轄󠄁ニ屬スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條
行政官廳ノ違󠄂法處分󠄁ニ由リ權利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟󠄁ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判󠄁所󠄁ノ裁判󠄁ニ屬スヘキモノハ司法裁判󠄁所󠄁ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス
第六章 會計
第六十二條
新ニ租稅ヲ課シ及稅率ヲ變更󠄁スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
但シ報償ニ屬スル行政上ノ手數料及其ノ他ノ收納󠄁金ハ前󠄁項ノ限ニ在ラス
國債ヲ起󠄁シ及豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ負󠄁擔トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
第六十三條
現行ノ租稅ハ更󠄁ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ舊ニ依リ之ヲ徵收ス
第六十四條
國家ノ歲出歲入ハ每年豫算ヲ以テ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
豫算ノ款項ニ超過󠄁シ又ハ豫算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝國議會ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第六十五條
豫算ハ前󠄁ニ衆議院ニ提出スヘシ
第六十六條
皇室經費ハ現在ノ定額ニ依リ每年國庫ヨリ之ヲ支出シ將來增額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝國議會ノ協贊ヲ要セス
第六十七條
憲󠄁法上ノ大權ニ基ツケル既定ノ歲出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ屬スル歲出ハ政府ノ同意ナクシテ帝國議會之ヲ廢除シ又ハ削󠄁減スルコトヲ得ス
第六十八條
特別ノ須要ニ因リ政府ハ豫メ年限ヲ定メ繼續費トシテ帝國議會ノ協贊ヲ求ムルコトヲ得
第六十九條
避󠄁クヘカラサル豫算ノ不足ヲ補フ爲ニ又ハ豫算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル爲ニ豫備費ヲ設クヘシ
第七十條
公󠄁共ノ安全󠄁󠄁ヲ保持スル爲緊急󠄁ノ需用アル場合ニ於テ內外ノ情󠄁形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ處分󠄁ヲ爲スコトヲ得
前󠄁項ノ場合ニ於テハ次󠄁ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第七十一條
帝國議會ニ於テ豫算ヲ議定セス又ハ豫算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前󠄁年度ノ豫算ヲ施行スヘシ
第七十二條
國家ノ歲出歲入ノ決算ハ會計檢査院之ヲ檢査確定シ政府ハ其ノ檢査報告ト俱ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
會計檢査院ノ組織及職權ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 補則
第七十三條
將來此ノ憲󠄁法ノ條項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝國議會ノ議ニ付スヘシ
此ノ場合ニ於テ兩議院ハ各〻其ノ總員三分󠄁ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分󠄁ノ二以上ノ多數ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第七十四條
皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
皇室典範ヲ以テ此ノ憲󠄁法ノ條規ヲ變更󠄁スルコトヲ得ス
第七十五條
憲󠄁法及皇室典範ハ攝政ヲ置クノ間之ヲ變更󠄁スルコトヲ得ス
第七十六條
法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用井タルニ拘ラス此ノ憲󠄁法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵󠄁由ノ効力ヲ有ス
歲出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ總テ第六十七條ノ例ニ依ル

JIS X 0208版 編集

告文

皇朕レ謹ミ畏ミ
皇祖
皇宗ノ神靈ニ誥ケ白サク皇朕レ天壤無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ寶祚ヲ承繼シ舊圖ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニ世局ノ進運ニ膺リ人文ノ發達ニ隨ヒ宜ク
皇祖
皇宗ノ遺訓ヲ明徴ニシ典憲ヲ成立シ條章ヲ昭示シ内ハ以テ子孫ノ率由スル所ト爲シ外ハ以テ臣民翼贊ノ道ヲ廣メ永遠ニ遵行セシメ益々國家ノ丕基ヲ鞏固ニシ八洲民生ノ慶福ヲ増進スヘシ茲ニ皇室典範及憲法ヲ制定ス惟フニ此レ皆
皇祖
皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述スルニ外ナラス而シテ朕カ躬ニ逮テ時ト倶ニ擧行スルコトヲ得ルハ洵ニ
皇祖
皇宗及我カ
皇考ノ威靈ニ倚藉スルニ由ラサルハ無シ皇朕レ仰テ
皇祖
皇宗及
皇考ノ神祐ヲ祷リ併セテ朕カ現在及將來ニ臣民ニ率先シ此ノ憲章ヲ履行シテ愆ラサラムコトヲ誓フ庶幾クハ
神靈此レヲ鑒ミタマヘ

憲法發布勅語

朕國家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣榮トシ朕カ祖宗ニ承クルノ大權ニ依リ現在及將來ノ臣民ニ對シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス

惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼ニ倚リ我カ帝國ヲ肇造シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威徳ト竝ニ臣民ノ忠實勇武ニシテ國ヲ愛シ公ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル國史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕我カ臣民ハ即チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ囘想シ其ノ朕カ意ヲ奉體シ朕カ事ヲ奬順シ相與ニ和衷協同シ益々我カ帝國ノ光榮ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負擔ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ

(上諭)

朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ増進シ其ノ懿徳良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ倶ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履踐シ茲ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム

國家統治ノ大權ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ將來此ノ憲法ノ條章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ

朕ハ我カ臣民ノ權利及財産ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範圍内ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス

帝國議會ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議會開會ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有効ナラシムルノ期トスヘシ

將來若此ノ憲法ノ或ル條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ

朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ爲ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ

御名御璽

明治二十二年二月十一日

内閣總理大臣 伯爵 黒田清隆
樞密院議長 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 大隈重信
海軍大臣 伯爵 西郷從道
農商務大臣 伯爵 井上 馨
司法大臣 伯爵 山田顯義
大藏大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山 巌
文部大臣 子爵 森 有禮
遞信大臣 子爵 榎本武揚


大日本帝國憲法
第一章 天皇
第一條
大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二條
皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス
第三條
天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第四條
天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ
第五條
天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ
第六條
天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第七條
天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス
第八條
天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ發ス
此ノ勅令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
第九條
天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス
第十條
天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
第十一條
天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二條
天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
第十三條
天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス
第十四條
天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス
戒嚴ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條
天皇ハ爵位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス
第十六條
天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス
第十七條
攝政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ
第二章 臣民權利義務
第十八條
日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十九條
日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ應シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
第二十條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第二十一條
日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第二十二條
日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ居住及移轉ノ自由ヲ有ス
第二十三條
日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問處罰ヲ受クルコトナシ
第二十四條
日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ權ヲ奪ハルヽコトナシ
第二十五條
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及搜索セラルヽコトナシ
第二十六條
日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ祕密ヲ侵サルヽコトナシ
第二十七條
日本臣民ハ其ノ所有權ヲ侵サルヽコトナシ
公益ノ爲必要ナル處分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第二十八條
日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第二十九條
日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス
第三十條
日本臣民ハ相當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ請願ヲ爲スコトヲ得
第三十一條
本章ニ掲ケタル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ天皇大權ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第三十二條
本章ニ掲ケタル條規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴觸セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス
第三章 帝國議會
第三十三條
帝國議會ハ貴族院衆議院ノ兩院ヲ以テ成立ス
第三十四條
貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十五條
衆議院ハ選擧法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十六條
何人モ同時ニ兩議院ノ議員タルコトヲ得ス
第三十七條
凡テ法律ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルヲ要ス
第三十八條
兩議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
第三十九條
兩議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同會期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
第四十條
兩議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同會期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
第四十一條
帝國議會ハ毎年之ヲ召集ス
第四十二條
帝國議會ハ三箇月ヲ以テ會期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
第四十三條
臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常會ノ外臨時會ヲ召集スヘシ
臨時會ノ會期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル
第四十四條
帝國議會ノ開會閉會會期ノ延長及停會ハ兩院同時ニ之ヲ行フヘシ
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停會セラルヘシ
第四十五條
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新ニ議員ヲ選擧セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ
第四十六條
兩議院ハ各々其ノ總議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四十七條
兩議院ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十八條
兩議院ノ會議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ祕密會ト爲スコトヲ得
第四十九條
兩議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第五十條
兩議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得
第五十一條
兩議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノヽ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第五十二條
兩議院ノ議員ハ議院ニ於テ發言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ處分セラルヘシ
第五十三條
兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内亂外患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ
第五十四條
國務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及發言スルコトヲ得
第四章 國務大臣及樞密顧問
第五十五條
國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律勅令其ノ他國務ニ關ル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
第五十六條
樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ國務ヲ審議ス
第五章 司法
第五十七條
司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條
裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條
裁判ノ對審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ對審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第六十條
特別裁判所ノ管轄ニ屬スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條
行政官廳ノ違法處分ニ由リ權利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ屬スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス
第六章 會計
第六十二條
新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ變更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
但シ報償ニ屬スル行政上ノ手數料及其ノ他ノ收納金ハ前項ノ限ニ在ラス
國債ヲ起シ及豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
第六十三條
現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ舊ニ依リ之ヲ徴收ス
第六十四條
國家ノ歳出歳入ハ毎年豫算ヲ以テ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
豫算ノ款項ニ超過シ又ハ豫算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝國議會ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第六十五條
豫算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ
第六十六條
皇室經費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年國庫ヨリ之ヲ支出シ將來増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝國議會ノ協贊ヲ要セス
第六十七條
憲法上ノ大權ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ屬スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝國議會之ヲ廢除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
第六十八條
特別ノ須要ニ因リ政府ハ豫メ年限ヲ定メ繼續費トシテ帝國議會ノ協贊ヲ求ムルコトヲ得
第六十九條
避クヘカラサル豫算ノ不足ヲ補フ爲ニ又ハ豫算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル爲ニ豫備費ヲ設クヘシ
第七十條
公共ノ安全ヲ保持スル爲緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第七十一條
帝國議會ニ於テ豫算ヲ議定セス又ハ豫算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ豫算ヲ施行スヘシ
第七十二條
國家ノ歳出歳入ノ決算ハ會計檢査院之ヲ檢査確定シ政府ハ其ノ檢査報告ト倶ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
會計檢査院ノ組織及職權ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 補則
第七十三條
將來此ノ憲法ノ條項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝國議會ノ議ニ付スヘシ
此ノ場合ニ於テ兩議院ハ各々其ノ總員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多數ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第七十四條
皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ條規ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十五條
憲法及皇室典範ハ攝政ヲ置クノ間之ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十六條
法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用井タルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ効力ヲ有ス
歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ總テ第六十七條ノ例ニ依ル

新字新仮名版 編集

告文こうもん

すめられ、つつしかしこ
皇祖こうそ
皇宗こうそう神霊しんれいもうさく。すめられ、天壌無窮てんじょうむきゅう宏謨こうぼしたがい、惟神いしん宝祚ほうそ承継しょうけいし、旧図きゅうと保持ほじして、あえ失墜しっついすることし。かえりみるに、世局せいきょく進運しんうんあたり、人文じんぶん発達はったつしたがい、よろし
皇祖こうそ
皇宗こうそう遺訓いくん明徴めいちょうにし、典憲てんけん成立せいりつし、条章じょうしょう昭示しょうじし、うちもっ子孫しそん率由そつゆうするところし、そともっ臣民翼賛しんみんよくさんみちひろめ、永遠えいえん遵行じゅんこうせしめ、益々ますます国家こっか丕基ひき鞏固きょうこにし、八洲民生はっしゅうみんせい慶福けいふく増進ぞうしんすべし。ここ皇室典範こうしつてんぱんおよび憲法けんぽう制定せいていす。おもうに、みな
皇祖こうそ
皇宗こうそう後裔こうえいのこしたまえる統治とうち洪範こうはん紹述しょうじゅつするにほかならず、しかしてちんおよびときとも挙行きょこうすることをるは、まこと
皇祖こうそ
皇宗こうそうおよび
皇考こうこう威霊いれい倚藉いしゃするにらざるはし。すめられ、あおぎ
皇祖こうそ
皇宗こうそうおよび
皇考こうこう神祐しんゆういのり、あわせてちん現在げんざいおよび将来しょうらいに、臣民しんみん率先そっさん憲章けんしょう履行りこうしてあやまらざらんことをちかう。庶幾こいねがわくは
神霊しんれいれをかんがみたまえ。

憲法発布勅語けんぽうはっぷちょくご

ちん国家こっか隆昌りゅうしょう臣民しんみん慶福けいふくとをもっ中心ちゅうしん欣栄きんえいとし、ちん祖宗そそうくるの大権たいけんり、現在げんざいおよび将来しょうらい臣民しんみんたいし、不磨ふま大典たいてん宣布せんぷす。
おもうに、そうは、臣民祖先しんみんそせん協力輔翼きょうりょくほよく帝国ていこく肇造ちょうぞうし、もっ無窮むきゅうれたり。れ、神聖しんせいなる祖宗そそう威徳いとくならび臣民しんみん忠実勇武ちゅうじつゆうぶにしてくにあいし、こうしたがい、もっ光輝こうきある国史こくし成跡せいせきのこしたるなり。ちん臣民しんみんすなわ祖宗そそう忠良ちゅうりょうなる臣民しんみん子孫しそんなるを回想かいそうし、ちん奉体ほうたいし、ちんこと奨順しょうじゅんし、相与あいとも和衷協同わちゅうきょうどうし、益々ますます帝国ていこく光栄こうえい中外ちゅうがい宣揚せんようし、祖宗そそう遺業いぎょう永久えいきゅう鞏固きょうこならしむるの希望きぼうおなじくし、負担ふたんわかつにうることをうたがわざるなり。

上諭じょうゆ

ちん祖宗そそう遺烈いれつけ、万世一系ばんせいいっけい帝位ていいみ、ちん親愛しんあいするところ臣民しんみんすなわちん祖宗そそう恵撫慈養けいぶじようしたまいしところ臣民しんみんなるをおもい、康福こうふく増進ぞうしんし、懿徳良能いとくりょうのう発達はったつせしめんことをねがい、また翼賛よくさんともとも国家こっか進運しんうん扶持ふじせんことをのぞみ、すなわ明治十四年十月十二日めいじじゅうよねんじゅうがつじゅうににち詔命しょうめい履践りせんし、ここ大憲たいけん制定せいていし、ちん率由そつゆうするところしめし、ちん後嗣こうしおよび臣民しんみんおよび臣民しんみん子孫しそんたるものをして永遠えいえん循行じゅんこうするところらしむ。
国家統治こっかとうち大権たいけんは、ちんこれ祖宗そそうけて、これ子孫しそんつたうるところなり。ちんおよびちん子孫しそんは、将来しょうらい憲法けんぽう条章じょうしょうしたがこれおこなうことをあやまらざるべし。
ちんは、臣民しんみん権利けんりおよび財産ざいさん安全あんぜん貴重きちょうし、およびこれ保護ほごし、憲法けんぽうおよび法律ほうりつ範囲内はんいないおい享有きょうゆう完全かんぜんならしむべきことを宣言せんげんす。
帝国議会ていこくぎかいは、明治二十三年めいじにじゅうさんねんもっこれ召集しょうしゅうし、議会ぎかい開会かいかいときもっ憲法けんぽうをして有効ゆうこうならしむるのとすべし。
将来しょうらいもし憲法けんぽう条章じょうしょう改定かいていするの必要ひつようなる時宜じぎるにいたらば、ちんおよびちん継統けいとう子孫しそんは、発議はつぎけんこれ議会ぎかいし、議会ぎかいは、憲法けんぽうさだめたる要件ようけんこれ議決ぎけつするのほかちん子孫しそんおよび臣民しんみんは、あえこれ紛更ふんこうこころみることをざるべし。
ちん在廷ざいてい大臣だいじんは、ちんため憲法けんぽう施行しこうするのせめにんずべく、ちん現在げんざいおよび将来しょうらい臣民しんみんは、憲法けんぽうたい永遠えいえん従順じゅうじゅん義務ぎむうべし。

御名御璽

明治二十二年二月十一日

内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
枢密院議長 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 大隈重信
海軍大臣 伯爵 西郷従道
農商務大臣 伯爵 井上 馨
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山 巌
文部大臣 子爵 森 有礼
逓信大臣 子爵 榎本武揚


大日本帝国憲法
第一章 天皇
第一条
大日本帝国は、万世一系の天皇之を統治す。
第二条
皇位は、皇室典範の定むる所に依り、皇男子孫之を継承す。
第三条
天皇は、神聖にして、侵すべからず。
第四条
天皇は、国の元首にして、統治権を総攬し、此の憲法の条規に依り、之を行う。
第五条
天皇は、帝国議会の協賛を以て立法権を行う。
第六条
天皇は、法律を裁可し、其の公布及執行を命ず。
第七条
天皇は、帝国議会を召集し、其の開会、閉会、停会及衆議院の解散を命ず。
第八条
  1. 天皇は、公共の安全を保持し、又は其の災厄を避くる為緊急の必要に由り、帝国議会閉会の場合に於て、法律に代るべき勅令を発す。
  2. 此の勅令は、次の会期に於て帝国議会に提出すべし。若議会に於て承諾せざるときは、政府は、将来に向て其の効力を失うことを公布すべし。
第九条
天皇は、法律を執行する為に、又は公共の安寧秩序を保持し、及臣民の幸福を増進する為に必要なる命令を発し、又は発せしむ。但し、命令を以て法律を変更することを得ず。
第十条
天皇は、行政各部の官制及文武官の俸給を定め、及文武官を任免す。但し、此の憲法又は他の法律に特例を掲げたるものは、各々其の条項に依る。
第十一条
天皇は、陸海軍を統帥す。
第十二条
天皇は、陸海軍の編制及常備兵額を定む。
第十三条
天皇は、戦を宣し、和を講じ、及諸般の条約を締結す。
第十四条
  1. 天皇は、戒厳を宣告す。
  2. 戒厳の要件及効力は、法律を以て之を定む。
第十五条
天皇は、爵位、勲章及其の他の栄典を授与す。
第十六条
天皇は、大赦、特赦、減刑及復権を命ず。
第十七条
  1. 摂政を置くは、皇室典範の定むる所に依る。
  2. 摂政は、天皇の名に於て大権を行う。
第二章 臣民権利義務
第十八条
日本臣民たるの要件は、法律の定むる所に依る。
第十九条
日本臣民は、法律命令の定むる所の資格に応じ、ひとしく文武官に任ぜられ、及其の他の公務に就くことを
第二十条
日本臣民は、法律の定むる所に従い、兵役の義務を有す。
第二十一条
日本臣民は、法律の定むる所に従い、納税の義務を有す。
第二十二条
日本臣民は、法律の範囲内に於て、居住及移転の自由を有す。
第二十三条
日本臣民は、法律に依るにあらずして、逮捕、監禁、審問、処罰を受くることなし。
第二十四条
日本臣民は、法律に定めたる裁判官の裁判を受くるの権を奪わるることなし。
第二十五条
日本臣民は、法律に定めたる場合を除く外、其の許諾なくして住所に侵入せられ、及捜索せらるることなし。
第二十六条
日本臣民は、法律に定めたる場合を除く外、信書の秘密を侵さるることなし。
第二十七条
  1. 日本臣民は、其の所有権を侵さるることなし。
  2. 公益の為必要なる処分は、法律の定むる所に依る。
第二十八条
日本臣民は、安寧秩序を妨げず、及臣民たるの義務に背かざるかぎりに於て、信教の自由を有す。
第二十九条
日本臣民は、法律の範囲内に於て、言論、著作、印行、集会及結社の自由を有す。
第三十条
日本臣民は、相当の敬礼を守り、別に定むる所の規程に従い、請願を為すことを得。
第三十一条
本章に掲げたる条規は、戦時又は国家事変の場合に於て、天皇大権の施行を妨ぐることなし。
第三十二条
本章に掲げたる条規は、陸海軍の法令又は紀律に牴触せざるものに限り、軍人に準行す。
第三章 帝国議会
第三十三条
帝国議会は、貴族院、衆議院の両院を以て成立す。
第三十四条
貴族院は、貴族院令の定むる所に依り、皇族、華族及勅任せられたる議員を以て組織す。
第三十五条
衆議院は、選挙法の定むる所に依り、公選せられたる議員を以て組織す。
第三十六条
何人も、同時に両議院の議員たることを得ず。
第三十七条
すべて法律は、帝国議会の協賛を経るを要す。
第三十八条
両議院は、政府の提出する法律案を議決し、及各々法律案を提出することを得。
第三十九条
両議院のいつに於て否決したる法律案は、同会期中に於て再び提出することを得ず。
第四十条
両議院は、法律又は其の他の事件につき、各々其の意見を政府に建議することを得。但し、其の採納を得ざるものは、同会期中に於て再び建議することを得ず。
第四十一条
帝国議会は、毎年之を召集す。
第四十二条
帝国議会は、三箇月を以て会期とす。必要ある場合に於ては、勅命を以て之を延長することあるべし。
第四十三条
  1. 臨時緊急の必要ある場合に於て、常会の外、臨時会を召集すべし。
  2. 臨時会の会期を定むるは、勅命に依る。
第四十四条
  1. 帝国議会の開会、閉会、会期の延長及停会は、両院同時に之を行うべし。
  2. 衆議院解散を命ぜられたるときは、貴族院は、同時に停会せらるべし。
第四十五条
衆議院解散を命ぜられたるときは、勅令を以てあらたに議員を選挙せしめ、解散の日より五箇月以内に之を召集すべし。
第四十六条
両議院は、各々其の総議員三分の一以上出席するに非ざれば、議事を開き議決を為すことを得ず。
第四十七条
両議院の議事は、過半数を以て決す。可否同数なるときは、議長の決する所に依る。
第四十八条
両議院の会議は、公開す。但し、政府の要求又は其の院の決議に依り、秘密会と為すことを得。
第四十九条
両議院は、各々天皇に上奏することを得。
第五十条
両議院は、臣民より呈出する請願書を受くることを得。
第五十一条
両議院は、此の憲法及議院法に掲ぐるものの外、内部の整理に必要なる諸規則を定むることを得。
第五十二条
両議院の議員は、議院に於て発言したる意見及表決に付、院外に於て責を負うことなし。但し、議員自ら其の言論を演説、刊行、筆記又は其の他の方法を以て公布したるときは、一般の法律に依り処分せらるべし。
第五十三条
両議院の議員は、現行犯罪又は内乱外患に関る罪を除く外、会期中、其の院の許諾なくして逮捕せらるることなし。
第五十四条
国務大臣及政府委員は、何時たりとも各議院に出席し、及発言することを得。
第四章 国務大臣及枢密顧問
第五十五条
  1. 国務各大臣は、天皇を輔弼ほひつし、其の責に任ず。
  2. 凡て法律、勅令其の他国務に関る詔勅は、国務大臣の副署を要す。
第五十六条
枢密顧問は、枢密院官制の定むる所に依り、天皇の諮詢に応え、重要の国務を審議す。
第五章 司法
第五十七条
  1. 司法権は、天皇の名に於て、法律に依り、裁判所之を行う。
  2. 裁判所の構成は、法律を以て之を定む。
第五十八条
  1. 裁判官は、法律に定めたる資格をそなうる者を以て之に任ず。
  2. 裁判官は、刑法の宣告又は懲戒の処分に由るの外、其の職を免ぜらるることなし。
  3. 懲戒の条規は、法律を以て之を定む。
第五十九条
裁判の対審判決は、之を公開す。但し、安寧秩序又は風俗を害するのおそれあるときは、法律に依り又は裁判所の決議を以て、対審の公開を停むることを得。
第六十条
特別裁判所の管轄に属すべきものは、別に法律を以て之を定む。
第六十一条
行政官庁の違法処分に由り権利を傷害せられたりとするの訴訟にして、別に法律を以て定めたる行政裁判所の裁判に属すべきものは、司法裁判所に於て受理するの限に在らず。
第六章 会計
第六十二条
  1. 新に租税を課し、及税率を変更するは、法律を以て之を定むべし。
  2. 但し、報償に属する行政上の手数料及其の他の収納金は、前項の限に在らず。
  3. 国債を起し、及予算に定めたるものを除く外、国庫の負担となるべき契約を為すは、帝国議会の協賛を経べし。
第六十三条
現行の租税は、更に法律を以て之を改めざる限は、旧に依り之を徴収す。
第六十四条
  1. 国家の歳出歳入は、毎年、予算を以て帝国議会の協賛を経べし。
  2. 予算の款項に超過し、又は予算の外に生じたる支出あるときは、後日帝国議会の承諾を求むるを要す。
第六十五条
予算は、さきに衆議院に提出すべし。
第六十六条
皇室経費は、現在の定額に依り、毎年、国庫より之を支出し、将来、増額を要する場合を除く外、帝国議会の協賛を要せず。
第六十七条
憲法上の大権に基づける既定の歳出及法律の結果に由り又は法律上政府の義務に属する歳出は、政府の同意なくして帝国議会之を廃除し、又は削減することを得ず。
第六十八条
特別の須要しゅように因り、政府は、予め年限を定め、継続費として帝国議会の協賛を求むることを得。
第六十九条
避くべからざる予算の不足を補う為に、又は予算の外に生じたる必要の費用に充つる為に、予備費を設くべし。
第七十条
  1. 公共の安全を保持する為緊急の需用ある場合に於て、内外の情形に因り政府は帝国議会を召集することあたわざるときは、勅令に依り財政上必要の処分を為すことを得。
  2. 前項の場合に於ては、次の会期に於て帝国議会に提出し、其の承諾を求むるを要す。
第七十一条
帝国議会に於て予算を議定せず、又は予算成立に至らざるときは、政府は、前年度の予算を施行すべし。
第七十二条
  1. 国家の歳出歳入の決算は、会計検査院之を検査確定し、政府は、其の検査報告と倶に、之を帝国議会に提出すべし。
  2. 会計検査院の組織及職権は、法律を以て之を定む。
第七章 補則
第七十三条
  1. 将来、此の憲法の条項を改正するの必要あるときは、勅命を以て議案を帝国議会の議に付すべし。
  2. 此の場合に於て、両議院は、各々其の総員三分の二以上出席するに非ざれば議事を開くことを得ず、出席議員三分の二以上の多数を得るに非ざれば改正の議決を為すことを得ず。
第七十四条
  1. 皇室典範の改正は、帝国議会の議を経るを要せず。
  2. 皇室典範を以て此の憲法の条規を変更することを得ず。
第七十五条
憲法及皇室典範は、摂政を置くの間、之を変更することを得ず。
第七十六条
  1. 法律、規則、命令又は何等の名称を用いたるにかかわらず、此の憲法に矛盾せざる現行の法令は、すべて遵由の効力を有す。
  2. 歳出上政府の義務に係る現在の契約又は命令は、総て第六十七条の例に依る。

註釈 編集

  1. 底本には章立てに当たる文はない。w:上諭も参照のこと。
  2. 「十月十二日」は御署名原本による。w:国会開設の詔も参照のこと。底本とした官報号外では「十月十四日」とされている。


 

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