大塚徹・あき詩集/琉球の女


琉球の女 編集

杏の実の匂うたそがれ
私は 風の贈物をうけよう。

蒼白い月かげにぬれて
デイゴの樹にまつわる
夜潮のささやきを聞こう。

この春 この貧しい町におとずれて
眉のほそい 琉球の女たちは
蛇皮線を弾いて 異国の酒を売った。

鼓を打ち、笛の音にあわせて
エキゾチックな 色あざやかな歌々を
かの日の 疲れはて 青ざめた
娘子軍のかなしい踊りよ!
(その虚洞うつろな瞳は穹を眺めて
 遠くふるさとの老母の姿が消えた)

杏の実の匂うたそがれ
私は この漂白の人達のかなしみをよせて
熱帯の強烈な酒に酔いしれよう。
私は 風の贈物をうけよう。

〈昭和四年、炬火〉