流木 編集

涯しない 海霧の
濡れて漂うこころの磯辺。

流木の――わが妻よ。

かい抱けば
身にも沁む 海藻の匂い
なげうてば
眼刺す 夜光の虫か

流木の――わが妻よ。

俺も海鳥 岩暗く
濡れて漂うこころの磯辺。

〈昭和七年、愛誦〉