大塚徹・あき詩集/杳き暴風
< 大塚徹・あき詩集
杳き暴風
編集海のかなた はろかに
とおざかりゆく
わが死は
かく靜かに――かく寂しく――
雪雲垂るる 曠野の涯
述懐の 緑の
慄然と 佇む
いっぽんの 裸木
かかるとき 漆黒の大鴉
夕昏の 枯梢に
――啼かず 翔ばず
わが太陽は 虚しく
歳月とともに
友情の花束も 色褪せゆかむ。
わが死を歎く
やがては めでたく この世を終えむ
かくて 後の世に
世に人にいれられざりし
至福なるわが永却の
じ。
その
紫のすみれなど ほのかに匂い
白骨は 青苔に
轣轆と 響き
寥冷と
よろ
春風秋雨――ひそひそやかにめぐりめぐりて
――
消えてゆく
わが臨終は 孤り 微笑えみつつ
靜かにしづかに――寂しくさみしくあれよ、
と。
〈昭和十六年、日本詩壇〉