哥林多前書(明治元訳) 第八章

Wikisource:宗教 > 聖書 > 明治元訳新約聖書 (明治37年) > 哥林多前書(明治元訳)

第八章

1 偶像（ぐうざう）に獻（ささげ）し物（もの）に就（つい）ては我儕（われら）みな知識（ちしき）あることをしる知識（ちしき）は人（ひと）を驕（ほこら）しむ然（され）ど愛（あい）は徳（とく）を建（たつ）るもの也（なり）
2 若（もし）みづから能（よく）ものを知（しる）と意（おも）ふ者（もの）は未（いま）だ其（その）知（しる）べきほどをも知（しら）ざる者（もの）なり
3 人（ひと）もし神（かみ）を愛（あい）せば是（これ）神（かみ）に知（しら）れたる也（なり）
4 偶像（ぐうざう）に獻（ささげ）し物（もの）を食（しよく）するに就（つい）ては我儕（われら）偶像（ぐうざう）の世（よ）に無（なき）ものなるを知（しる）また獨（ひとり）の神（かみ）の外（ほか）に神（かみ）なきを知（しる）
5 神（かみ）と稱（となふ）るもの或（あるひ）は天（てん）に在（あり）あるひは地（ち）に在（あり）て多（おほく）の神（かみ）おほくの主（しゆ）あるが如（ごと）しと雖（いへど）も
6 我儕（われら）に於（おい）ては惟（ただ）一（ひとり）の神（かみ）すなはち父（ちち）あるのみ萬物（よろづのもの）これより生（なり）われら之（これ）に歸（き）す又（また）ひとりの主（しゆ）即（すなは）ちイエス・キリストあり萬物（よろづのもの）これに由（より）われらも之（これ）に由（よれ）り
7 然（され）どみな斯（かか）る事（こと）を知（しら）ず今（いま）に至（いた）りて尚（なほ）心（こころ）に偶像（ぐうざう）を顧（かへり）み之（これ）を偶像（ぐうざう）に獻（ささげ）し物（もの）と意（おもひ）て食（しよく）する者（もの）あり是（この）故（ゆゑ）にその心（こころ）弱（よわく）して汚（けがさ）るるなり
8 神（かみ）と我儕（われら）の關係（かかはり）は食物（しよくもつ）に由（よる）に非（あら）ず食（しよく）するも益（まさ）ることなく食（しよく）せざるも損（おと）ることなし
9 然（され）ど爾曹（なんぢら）愼（つつし）みて其（その）自由（じゆう）を柔弱（よわき）者（もの）の躓（つまづき）となす勿（なか）れ
10 人（ひと）もし知識（ちしき）ある所（ところ）の爾（なんぢ）偶像（ぐうざう）の廟（みや）に坐（ざ）して食（しよく）するを見（み）ば柔弱（よわき）者（もの）の心（こころ）之（これ）に勸（すすめ）られて偶像（ぐうざう）に獻（ささげ）し物（もの）を食（しよく）せざらん乎（や）
11 又（また）キリストの代（かはり）て死（しに）たまひし弱（よわ）き兄弟（きやうだい）爾（なんぢ）の知識（ちしき）に因（より）て淪亡（ほろび）ざらん乎（や）
12 此（かく）の如（ごと）く爾曹（なんぢら）兄弟（きやうだい）に罪（つみ）を犯（をか）し其（その）弱（よわ）き心（こころ）を傷（いた）めしむるはキリストに罪（つみ）を犯（をか）すなり
13 是（この）故（ゆゑ）に若（も）し食物（しよくもつ）わが兄弟（きやうだい）を礙（つまづ）かせば我（われ）は兄弟（きやうだい）を礙（つまづ）かせざる爲（ため）に永久（いつまで）も肉（にく）を食（くら）はじ