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だい十六くわ 救世主すくいぬし昇天せうてん

95●イエズス、キリスト御復活ごふくくわつ後何のちなにたまふたか

イエズス、キリスト御復活ごふくくわつのち四十にち間屡々あいだしばゝゝ弟子等でしたちあらはれ、其復活そのふくくわつせうし、叉聖会まらせいくわいことをしたまふたのであります。

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四十にちあいだしばゝゞ弟子でしあらはれ。

すなはペトロまた二人ににんに、十人じふにんに、十一にんに、七にんに、五百にんまで叉他またほかひとにもあらはたまふた。さうしてこれ夜分やぶんでなく昼間ひるまあきらかにものいひ、且食かつしょくし、からだきずとをせ、これけさせ、弟子でしうたがひはらさせ、

復活ふくくわつせう

たまふた、すなはいよい復活ふくくわつしたとこと様々さまゞゝ証拠せうこもっみとめさせたまふた。何故なぜなればキリスト御復活ごふくくわつなにより信仰しんかう基礎どだいるからであります。しも御復活ごふくくわつかったらキリストは偽者いつはりものはれることまぬがれず、せいパウロあきらかにった、「キリスト復活ふくくわつたまはなかったら我等われら宣教せんけうむなしく、汝等なんじら信仰しんかうむなし」と(コリント前書十五。十四)

しかれども御約束おんやくそくとほ復活ふくくわつたまふたならたゞひとではない、たれでもこと出来できよりもつよい、天主てんしゅちから復活ふくくわつたまふたとすれば、天主自てんしゅみずか其教そのをしへまことなるを保証ほせうたまふたことる。御自分ごじぶんちから復活ふくくわつたまふたとすれば、御自分ごじぶんいよいおっしゃったとほ天主てんしゅ御子おんこなることあきらかにれる。それ御復活ごふくくわつ我々われゝゝ信仰しんかうもっと肝要かんえう基礎どだいであります。

叉聖会またせいくわいことをしたまふた。

すなは将来信者せうらいしんじゃをし活治かつをさめるみち使徒等しとたちをしたまふた。殊更ことさらに、

だい一、みづか御父おんちちよりつかはされたごと自分じぶん使徒等しとたちつかはし(ヨハネ廿。廿一)

だい二、ひとつみゆる叉赦またゆるさぬ権力けんりょく使徒等しとたちあたへ(ヨハネ廿。廿三)

だい三、ペトロ教会けうくわい総牧者そうぼくしゃし(ヨハネ廿一。十五)

だい四、使徒等しとたち全世界ぜんせかいをしへべ、洗礼せんれいさづけ、おっしゃったところひとまもらせることめいじ、をはりまでともこと約束やくそくたまふた(マテオ廿八。十八)のであります。

ちう天主てんしゅ御計おはからひで、キリスト御復活ごふくくわつ信仰しんかうかた基礎どだいばかりでない、歴史上れきしぜうでもうごかすべからざるいちじるしい事実じじつであります。そもそ歴史れきしもっ種々いろゝゝ事実じじつつたはってるがりながらけっして軽々かるゞゝしくしんずべきものではない。其真偽そのしんぎすなはまことであるかないかを調しらべること必要ひつえうであります。いよいまこと相違さうゐないとの証拠せうこあらば、しんがたことでもしんずるほかはない。それ事実じじつ真偽しんぎたしかめるに評論へうろんふものがあって、これによるのが肝要かんえうである。歴史上れきしぜう評論へうろん

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二点にてんきまる、だい一、ことつたへたひとはたしてあざむかれたではないか、だい二、あるひひとあざむきはぬか、此二点このにてん調しらべるはずである。御復活ごふくくわついて此二点このにてんろんずれば、だい一、御復活ごふくくわつ証拠人せうこにんけっしてあざむかれてらぬ。何故なぜなれば(一)中話なかばなししんじたではなく、自分共じぶんども何人なんにんも、幾度いくども、種々いろゝゝところで、たり、御言おことばいたり、あつかったり何処どこまでもあきらめたりしたのであります。(二)叉軽率またけいそつしんじたでもない、あとうたがひ点少かどすこしものこらぬやうに、めううたがひれた。(三)やうや種々しゅゞゝしるしもっ其疑そのうたがひ立派りっぱはらしたのであるから、あざむかれてらぬことあきらかであります。

だい二、叉御復活またごふくくわつ証拠人せうこにんあざむかぬのは尚明なほあきらかである。何故なぜなれば(一)一旦いったん臆病おくべうげたのに、御復活ごふくくわつがなかったら一層力いっそうちからおとして、矢張原やはりもと職業しょくげうもどほかはなかった。

(二)それ皆立帰みなたちかへって、無学むがくながらまるかはったやうに、たれにもはゞからず公然こうぜん御復活ごふくくわつげたばかりでない、(三)皆身みなみをしまず、いましめられても、たれても、はずかしめられても、くるしめられても、相変あいかはらず生命いのちめて、御復活ごふくくわつせうしたのであり

[下段]

ます、(四)生命いのちめて事実じじつ言通いひとほ証人せうにんは、なかなかあざむくものではない。

これもっ二点揃にてんそろってるから、御復活ごふくくわつしんずべきことあきらかにれる。しも種々いろゝゝつたはって昔話むかしばなしいて一々いちゝゝ此二点このにてん調しらべてたら、いままでかたしんじられたことでもしんずるにらず、しんじられぬとみとめられることは沢山たくさんあるに相違さうゐない。

しかるに御復活ごふくくわつ証拠せうここれとゞまらぬ。すこしも抜目ぬけめのないやうに、尚大事なほだいじわけ此二点このにてんくわはった。すなは弟子等でしたちたとかりひとあざむきたいとおもったにしても、けっしてあざむ事出来ことできぬやうにったとことで、其所そこ中々大事なかゝゝだいじであります。かんがへてよ、イエズス御死骸ごしがいはかって番兵ばんぺいまもられたのに、御復活ごふくくわつしたとはせるやうにすれば、うしてもなによりさき其死骸そのしがいうまってかねばならぬが、弟子等でしたち死骸しがいぬす事出来ことできたらうか、それくはだてさうもなかった。みな一旦逃いったんにげ、流石さすがかしらペトロさへも下女げじょおそれて、鉄面皮あつかましくもイエズスらぬと三度さんどまで言張いひは位臆病くらひおくべうなれば、

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とてイエズス死骸しがいぬすむやうなくはだてものでない。こと三日みっかのち復活ふくくわつするとの御約束おんやくそくなれば、それまでなりともってはずであった。しか万一盗まんいちぬすみたいとおもったにせよ、ぬすまれぬやうに確乎ちゃん番兵ばんぺいくにかしらからかれてれば、うしても(一)賄賂まいなひもったぶらか事出来ことできず、(二)尚更なほさら暴力ぼうりょくもっうば事出来ことできず、これ仕掛しかけたばかりでもばつまぬがれなかったであろう。(三)それなら番兵ばんぺいらないやうにぬす事出来ことできぬかとふに、尚更出来なほさらできぬ、ぬすまれぬやうにかれた番兵ばんぺいだもの。(四)それ番兵ばんぺい交代寝かはるゞゝゝねるにしても、皆一遍みないっぺん寝入ねいはずがない。(五)寝入ねいったにせよ、弟子でしおもてから墓石はかいし取除とりのけて死骸しがいぬすみ、あるひわきからあなってらうとしても、おとさせずには出来できぬ。(六)一人ひとりでもめたらかなら朋友ともだちおこして死骸しがい取止とりとめ、盗人ぬすびとをもつかまへたはずではないかうしてもぬす仕様しやうがない。(七)叉言またいはれたとほ番兵ばんぺい寝入ねいったあひだぬすまれたとすれば、寝入ねいったもの証人せうにんとするのは不条理ふでうりではないか。(八)それでもぬすまれたのをよみがへったとひとしんぜさせることは、到底彼たうていか臆病おくべう無学むがく弟子でし出来できこと

[下段]

ゆゑ、何処どこからろんじてもキリスト御復活ごふくゝわつ信仰上しんかうぜうのみならず、歴史上れきしぜうかならうごかすべからざる事実じじつはねばなりませぬ。キリスト復活ふくゝわつまことでなければ、キリストけうさへるにられぬわけである。

96●イエズス、キリスト御復活ごふくくわつのち四十日目にちめなにたまふたか

イエズス、キリスト御復活ごふくゝわつのち四十日目しじふにちめに、弟子等でしたち目前めのまへてんのぼたまふた、これ御昇天ごせうてんまうします。

イエズス四十日目にちめに、ヱルザレムからおよそてうほどへだゝったゲッセマニそのうへあたオリベト橄欖山かんらんざん)とやま使徒等しとたち連行つれゆき、懇々遺言こんゝゝゆゐごんあたへ、全世界ぜんせかいをしへひろめる事等ことなどめいじ、をはりまでともことやくし、祝福しゅくふくしながら、皆之みなこれそゝいでったときよりあがたま事見ことみえ、皆頻みなしきりあふいでたがくもさへぎられてえなくたまふた、イエズス

てんのぼたまふた

だい一のわけは、ひととして何時いつまでも此世このよたま事出来ことできねば、数々かずゝゞ働苦はたらきくるしみ報酬ほうしう霊魂れいこん

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肉身にくしんけるためである、イエズスおいても「らくたね」とりました。だい二のわけは、御約束おんやくそくとほ天国てんごくおい信者しんじゃるべき場所ばしょそなへるためである、それ我等われら御跡おんあとしたったならばかならともよろこびはずであります。だい三のわけは、御傷おんきず聖父おんちち御前みまへそなへて、えずひと伝達とりつぎたまためであります。かね古聖所こせいしょとゞまってった霊魂れいこん天国てんごく引連ひきつたまふたのであります。

ちゅうイエズス御自分ごじぶんちからてんのぼたまふたによって

これを「御昇天ごせうてん

なづける。せいマリアいてときは、御自分ごじぶんちからでなく天主てんしゅよりてんげられなさったによって「被昇天ひせうてん」とまうします。

97●ちちなる天主てんしゅみぎたまふとはなん意味いみでありますか

イエズス、キリストひととしてもてんおい御父おんちゝとも光栄さかえ万物ばんぶつ主宰つかさどたまふとの意味いみであります。

とひことばは、使徒信経しとしんけういてあるから其訳そのわけたづねる。

[下段]

て「ひとみぎす」とは、むかしからの形容語けいようごであって、実際じっさい今右いまみぎすわってるとの意味いみでない、直次ぢきつぎくらゐるとだけとゞまる。それ天主てんしゅ聖父おんちゝ右左みぎひだりことまうすにおよばず、またイエズス、キリスト実際坐じっさいざしてられるとわけでもない、むし御休息おやすみったとはねばなりませぬ。

イエズス、キリスト天主てんしゅとして御父おんちゝならたまことは、だい五十二のとひはれたとほりで、これしてイエズスはゞからず「われちゝとはひとつである」と(ヨ ハ ネ十。三十)おっしゃった。しかひととしてはうでない、またちゝわれよりさらおほきくまします」と(ヨ ハ ネ十四。廿八)おっしゃったとほりであります。りながら

ひととしても

すなはひとたるところでも、万物ばんぶつうへ万民ばんみんうへって、御父おんちゝ直次ぢきつぎくらひましまして、

御父おんちゝとも

たっとばれ、礼拝れいはいせられ、

万物ばんぶつ主宰つかさどたまふ。

れば御父おんちちごとくに礼拝れいはいし、敬愛けいあいし、もっぱつかまつるべきものであります。それ聖父おんちゝみぎたまふとはれる。

98●イエズス、キリスト今何処いまどこましま

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イエズス、キリスト天主てんしゅとしては何処どこにもましませど、ひととしては天国てんごく聖体せいたい秘跡ひせきうちましますのであります。

片時かたときわすれてはならぬが、イエズス、キリストひとたまふた天主てんしゅだいにてましませば、神人両性しんじんりょうせいすなは天主てんしゅひととの持前もちまへねてられますから、

天主てんしゅとして

無論天むろんてんにもにもましまさぬところなし、

ひととしては

我等われらおなじく五しゃくからだたまふによって、其体そのからだ何処どこにもられるわけにはかず、てんのぼたまふたので、

天国てんごく

すなは聖人等せいじんたちられたまところまします、叉地上またちぜうえずながら我等われらともとゞまため叉我々またわれゝゝ霊魂れいこんかてためかたじけなくさだたまふた

聖体せいたい秘跡ひせき

こもってられます。(だい三百二十以下いかとひゆ)

99●イエズス、キリストふたゝてんよりきたたまはずでありますか

しかイエズス、キリストをはりあたって、すべてのひと

[下段]

善悪ぜんあく審判さばために、ふたゝてんよりきたたまはずであります。

イエズス、キリスト一度人いちどひとすくため此世このよくだたまふたのに、また再臨さいりん」とて

をはり審判しんぱんするため

ふたゝくだるとの約束やくそくたまひ、御昇天ごせうてんとき、二天使てんし使徒等しとたちこれげたのであります。其審判そのさばきは「公審判こうしんぱん」とふが其訳そのわけは、いまではたれ救霊たすかりるか、たれ地獄ぢごくばっせられてるかはれず、イエズス、キリストかた信仰しんかうするひとおほいのに、叉軽またかろんじてしきりきらひともあるればイエズス、キリストはじ其信者そのしんじゃとくをも、叉其敵及またそのてきおよ悪人あくにんあやまちをも、其賞罰そのせうばつをも、おほやけらせるために、

ふたゝてんよりきたたまはずであります

だい百三十四のとひよ)

だいでう せい れい