三たび秦辺紀略に就て補録

 
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三たび秦辺紀略に就て補録
 
 其後予章叢書中に、朱中尉詩集五巻あることを見出した。朱議霧の著としてあつて、即ち林確斎の本名である。早速一読したが、中に左の一首があるので、こゝに補録することにした。

  送梁質人帰南豊

終年頗覚傷哀楽。得汝知逢糸竹音。夕柝月明青壁路。晨門風入白頭吟。孤生自分惟親剣。老子何期遂断金。記得陂辺梅樹発。停杯相望共苦岑。〈知字は如の訛りならん〉

 この外に冠石簡熊養及在赤石と題せる五律、除夕同熊養及石閣梅下和躬菴韻と題せる七律などがあつて、質人が養及との交りも、林確斎との関係から来て居るのではないかと思はれる。要するにこの集には質人集中に見える人々の名が多く見え、易堂、程山、髻山諸子等明末遺老の消息を研究するに於て有益なる資料であることは勿論である。

(昭和四年六月記)

 
 

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