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マルコによる福音書(口語訳)

<聖書<口語新約聖書

『口語 新約聖書』日本聖書協会、1954年

口語訳聖書

マルコによる福音書

目次

第1章編集

1:1編集

神の子イエス・キリストの福音のはじめ。

1:2編集

預言者イザヤの書に、「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。

1:3編集

荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」と書いてあるように、

1:4編集

バプテスマのヨハネが荒野に現れて、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。

1:5編集

そこで、ユダヤ全土とエルサレムの全住民とが、彼のもとにぞくぞくと出て行って、自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。

1:6編集

このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。

1:7編集

彼は宣べ伝えて言った、「わたしよりも力のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを解く値うちもない。

1:8編集

わたしは水でバプテスマを授けたが、このかたは、聖霊によってバプテスマをお授けになるであろう」。

1:9編集

そのころ、イエスはガリラヤのナザレから出てきて、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。

1:10編集

そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのように自分に下って来るのを、ごらんになった。

1:11編集

すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。

1:12編集

それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。

1:13編集

イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。

1:14編集

ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた、

1:15編集

「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」。

1:16編集

さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、海で網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。

1:17編集

イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。

1:18編集

すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。

1:19編集

また少し進んで行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。

1:20編集

そこで、すぐ彼らをお招きになると、父ゼベダイを雇人たちと一緒に舟において、イエスのあとについて行った。

1:21編集

それから、彼らはカペナウムに行った。そして安息日にすぐ、イエスは会堂にはいって教えられた。

1:22編集

人々は、その教に驚いた。律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。

1:23編集

ちょうどその時、けがれた霊につかれた者が会堂にいて、叫んで言った、

1:24編集

「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。

1:25編集

イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。

1:26編集

すると、けがれた霊は彼をひきつけさせ、大声をあげて、その人から出て行った。

1:27編集

人々はみな驚きのあまり、互に論じて言った、「これは、いったい何事か。権威ある新しい教だ。けがれた霊にさえ命じられると、彼らは従うのだ」。

1:28編集

こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの全地方、いたる所にひろまった。

1:29編集

それから会堂を出るとすぐ、ヤコブとヨハネとを連れて、シモンとアンデレとの家にはいって行かれた。

1:30編集

ところが、シモンのしゅうとめが熱病で床についていたので、人々はさっそく、そのことをイエスに知らせた。

1:31編集

イエスは近寄り、その手をとって起されると、熱が引き、女は彼らをもてなした。

1:32編集

夕暮になり日が沈むと、人々は病人や悪霊につかれた者をみな、イエスのところに連れてきた。

1:33編集

こうして、町中の者が戸口に集まった。

1:34編集

イエスは、さまざまの病をわずらっている多くの人々をいやし、また多くの悪霊を追い出された。また、悪霊どもに、物言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスを知っていたからである。

1:35編集

朝はやく、夜の明けるよほど前に、イエスは起きて寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた。

1:36編集

すると、シモンとその仲間とが、あとを追ってきた。

1:37編集

そしてイエスを見つけて、「みんなが、あなたを捜しています」と言った。

1:38編集

イエスは彼らに言われた、「ほかの、附近の町々にみんなで行って、そこでも教を宣べ伝えよう。わたしはこのために出てきたのだから」。

1:39編集

そして、ガリラヤ全地を巡りあるいて、諸会堂で教を宣べ伝え、また悪霊を追い出された。

1:40編集

ひとりのらい病人が、イエスのところに願いにきて、ひざまずいて言った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。

1:41編集

イエスは深くあわれみ、手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。

1:42編集

すると、らい病が直ちに去って、その人はきよくなった。

1:43編集

イエスは彼をきびしく戒めて、すぐにそこを去らせ、こう言い聞かせられた、

1:44編集

「何も人に話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた物をあなたのきよめのためにささげて、人々に証明しなさい」。

1:45編集

しかし、彼は出て行って、自分の身に起ったことを盛んに語り、また言いひろめはじめたので、イエスはもはや表立っては町に、はいることができなくなり、外の寂しい所にとどまっておられた。しかし、人々は方々から、イエスのところにぞくぞくと集まってきた。

第2章編集

2:1編集

幾日かたって、イエスがまたカペナウムにお帰りになったとき、家におられるといううわさが立ったので、

2:2編集

多くの人々が集まってきて、もはや戸口のあたりまでも、すきまが無いほどになった。そして、イエスは御言を彼らに語っておられた。

2:3編集

すると、人々がひとりの中風の者を四人の人に運ばせて、イエスのところに連れてきた。

2:4編集

ところが、群衆のために近寄ることができないので、イエスのおられるあたりの屋根をはぎ、穴をあけて、中風の者を寝かせたまま、床をつりおろした。

2:5編集

イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。

2:6編集

ところが、そこに幾人かの律法学者がすわっていて、心の中で論じた、

2:7編集

「この人は、なぜあんなことを言うのか。それは神をけがすことだ。神ひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」。

2:8編集

イエスは、彼らが内心このように論じているのを、自分の心ですぐ見ぬいて、「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを論じているのか。

2:9編集

中風の者に、あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きよ、床を取りあげて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。

2:10編集

しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに言い、中風の者にむかって、

2:11編集

「あなたに命じる。起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。

2:12編集

すると彼は起きあがり、すぐに床を取りあげて、みんなの前を出て行ったので、一同は大いに驚き、神をあがめて、「こんな事は、まだ一度も見たことがない」と言った。

2:13編集

イエスはまた海べに出て行かれると、多くの人々がみもとに集まってきたので、彼らを教えられた。

2:14編集

また途中で、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをごらんになって、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。

2:15編集

それから彼の家で、食事の席についておられたときのことである。多くの取税人や罪人たちも、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。こんな人たちが大ぜいいて、イエスに従ってきたのである。

2:16編集

パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちと食事を共にしておられるのを見て、弟子たちに言った、「なぜ、彼は取税人や罪人などと食事を共にするのか」。

2:17編集

イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。

2:18編集

ヨハネの弟子とパリサイ人とは、断食をしていた。そこで人々がきて、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちとパリサイ人の弟子たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。

2:19編集

するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいるのに、断食ができるであろうか。花婿と一緒にいる間は、断食はできない。

2:20編集

しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう。

2:21編集

だれも、真新しい布ぎれを、古い着物に縫いつけはしない。もしそうすれば、新しいつぎは古い着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなる。

2:22編集

まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそうすれば、ぶどう酒は皮袋をはり裂き、そして、ぶどう酒も皮袋もむだになってしまう。〔だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである〕」。

2:23編集

ある安息日に、イエスは麦畑の中をとおって行かれた。そのとき弟子たちが、歩きながら穂をつみはじめた。

2:24編集

すると、パリサイ人たちがイエスに言った、「いったい、彼らはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのですか」。

2:25編集

そこで彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが食物がなくて飢えたとき、ダビデが何をしたか、まだ読んだことがないのか。

2:26編集

すなわち、大祭司アビアタルの時、神の家にはいって、祭司たちのほか食べてはならぬ供えのパンを、自分も食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。

2:27編集

また彼らに言われた、「安息日は人のためにあるもので、人が安息日のためにあるのではない。

2:28編集

それだから、人の子は、安息日にもまた主なのである」。

第3章編集

3:1編集

イエスがまた会堂にはいられると、そこに片手のなえた人がいた。

3:2編集

人々はイエスを訴えようと思って、安息日にその人をいやされるかどうかをうかがっていた。

3:3編集

すると、イエスは片手のなえたその人に、「立って、中へ出てきなさい」と言い、

3:4編集

人々にむかって、「安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」と言われた。彼らは黙っていた。

3:5編集

イエスは怒りを含んで彼らを見まわし、その心のかたくななのを嘆いて、その人に「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、その手は元どおりになった。

3:6編集

パリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちと、なんとかしてイエスを殺そうと相談しはじめた。

3:7編集

それから、イエスは弟子たちと共に海べに退かれたが、ガリラヤからきたおびただしい群衆がついて行った。またユダヤから、

3:8編集

エルサレムから、イドマヤから、更にヨルダンの向こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい群衆が、そのなさっていることを聞いて、みもとにきた。

3:9編集

イエスは群衆が自分に押し迫るのを避けるために、小舟を用意しておけと、弟子たちに命じられた。

3:10編集

それは、多くの人をいやされたので、病苦に悩む者は皆イエスにさわろうとして、押し寄せてきたからである。

3:11編集

また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、「あなたこそ神の子です」と言った。

3:12編集

イエスは御自身のことを人にあらわさないようにと、彼らをきびしく戒められた。

3:13編集

さてイエスは山に登り、みこころにかなった者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとにきた。

3:14編集

そこで十二人をお立てになった。彼らを自分のそばに置くためであり、さらに宣教につかわし、

3:15編集

また悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。

3:16編集

こうして、この十二人をお立てになった。そしてシモンにペテロという名をつけ、

3:17編集

またゼベダイの子ヤコブと、ヤコブの兄弟ヨハネ、彼らにはボアネルゲ、すなわち、雷の子という名をつけられた。

3:18編集

つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、

3:19編集

それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。イエスが家にはいられると、

3:20編集

群衆がまた集まってきたので、一同は食事をする暇もないほどであった。

3:21編集

身内の者たちはこの事を聞いて、イエスを取押えに出てきた。気が狂ったと思ったからである。

3:22編集

また、エルサレムから下ってきた律法学者たちも、「彼はベルゼブルにとりつかれている」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ」とも言った。

3:23編集

そこでイエスは彼らを呼び寄せ、譬をもって言われた、「どうして、サタンがサタンを追い出すことができようか。

3:24編集

もし国が内部で分れ争うなら、その国は立ち行かない。

3:25編集

また、もし家が内わで分れ争うなら、その家は立ち行かないであろう。

3:26編集

もしサタンが内部で対立し分争するなら、彼は立ち行けず、滅んでしまう。

3:27編集

だれでも、まず強い人を縛りあげなければ、その人の家に押し入って家財を奪い取ることはできない。縛ってからはじめて、その家を略奪することができる。

3:28編集

よく言い聞かせておくが、人の子らには、その犯すすべての罪も神をけがす言葉も、ゆるされる。

3:29編集

しかし、聖霊をけがす者は、いつまでもゆるされず、永遠の罪に定められる」。

3:30編集

そう言われたのは、彼らが「イエスはけがれた霊につかれている」と言っていたからである。

3:31編集

さて、イエスの母と兄弟たちとがきて、外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた。

3:32編集

ときに、群衆はイエスを囲んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟、姉妹たちが、外であなたを尋ねておられます」と言った。

3:33編集

すると、イエスは彼らに答えて言われた、「わたしの母、わたしの兄弟とは、だれのことか」。

3:34編集

そして、自分をとりかこんで、すわっている人々を見まわして、言われた、「ごらんなさい、ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。

3:35編集

神のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。

第4章編集

4:1編集

イエスはまたも、海べで教えはじめられた。おびただしい群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわったまま、海上におられ、群衆はみな海に沿って陸地にいた。

4:2編集

イエスは譬で多くの事を教えられたが、その教の中で彼らにこう言われた、

4:3編集

「聞きなさい、種まきが種をまきに出て行った。

4:4編集

まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。

4:5編集

ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、

4:6編集

日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。

4:7編集

ほかの種はいばらの中に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまったので、実を結ばなかった。

4:8編集

ほかの種は良い地に落ちた。そしてはえて、育って、ますます実を結び、三十倍、六十倍、百倍にもなった」。

4:9編集

そして言われた、「聞く耳のある者は聞くがよい」。

4:10編集

イエスがひとりになられた時、そばにいた者たちが、十二弟子と共に、これらの譬について尋ねた。

4:11編集

そこでイエスは言われた、「あなたがたには神の国の奥義が授けられているが、ほかの者たちには、すべてが譬で語られる。

4:12編集

それは『彼らは見るには見るが、認めず、聞くには聞くが、悟らず、悔い改めてゆるされることがない』ためである」。

4:13編集

また彼らに言われた、「あなたがたはこの譬がわからないのか。それでは、どうしてすべての譬がわかるだろうか。

4:14編集

種まきは御言をまくのである。

4:15編集

道ばたに御言がまかれたとは、こういう人たちのことである。すなわち、御言を聞くと、すぐにサタンがきて、彼らの中にまかれた御言を、奪って行くのである。

4:16編集

同じように、石地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くと、すぐに喜んで受けるが、

4:17編集

自分の中に根がないので、しばらく続くだけである。そののち、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。

4:18編集

また、いばらの中にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞くが、

4:19編集

世の心づかいと、富の惑わしと、その他いろいろな欲とがはいってきて、御言をふさぐので、実を結ばなくなる。

4:20編集

また、良い地にまかれたものとは、こういう人たちのことである。御言を聞いて受けいれ、三十倍、六十倍、百倍の実を結ぶのである」。

4:21編集

また彼らに言われた、「ますの下や寝台の下に置くために、あかりを持ってくることがあろうか。燭台の上に置くためではないか。

4:22編集

なんでも、隠されているもので、現れないものはなく、秘密にされているもので、明るみに出ないものはない。

4:23編集

聞く耳のある者は聞くがよい」。

4:24編集

また彼らに言われた、「聞くことがらに注意しなさい。あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられ、その上になお増し加えられるであろう。

4:25編集

だれでも、持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」。

4:26編集

また言われた、「神の国は、ある人が地に種をまくようなものである。

4:27編集

夜昼、寝起きしている間に、種は芽を出して育って行くが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。

4:28編集

地はおのずから実を結ばせるもので、初めに芽、つぎに穂、つぎに穂の中に豊かな実ができる。

4:29編集

実がいると、すぐにかまを入れる。刈入れ時がきたからである」。

4:30編集

また言われた、「神の国を何に比べようか。また、どんな譬で言いあらわそうか。

4:31編集

それは一粒のからし種のようなものである。地にまかれる時には、地上のどんな種よりも小さいが、

4:32編集

まかれると、成長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に空の鳥が宿るほどになる」。

4:33編集

イエスはこのような多くの譬で、人々の聞く力にしたがって、御言を語られた。

4:34編集

譬によらないでは語られなかったが、自分の弟子たちには、ひそかにすべてのことを解き明かされた。

4:35編集

さてその日、夕方になると、イエスは弟子たちに、「向こう岸へ渡ろう」と言われた。

4:36編集

そこで、彼らは群衆をあとに残し、イエスが舟に乗っておられるまま、乗り出した。ほかの舟も一緒に行った。

4:37編集

すると、激しい突風が起り、波が舟の中に打ち込んできて、舟に満ちそうになった。

4:38編集

ところがイエス自身は、舳の方でまくらをして、眠っておられた。そこで、弟子たちはイエスをおこして、「先生、わたしどもがおぼれ死んでも、おかまいにならないのですか」と言った。

4:39編集

イエスは起きあがって風をしかり、海にむかって、「静まれ、黙れ」と言われると、風はやんで、大なぎになった。

4:40編集

イエスは彼らに言われた、「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして信仰がないのか」。

4:41編集

彼らは恐れおののいて、互に言った、「いったい、この方はだれだろう。風も海も従わせるとは」。

第5章編集

5:1編集

こうして彼らは海の向こう岸、ゲラサ人の地に着いた。

5:2編集

それから、イエスが舟からあがられるとすぐに、けがれた霊につかれた人が墓場から出てきて、イエスに出会った。

5:3編集

この人は墓場をすみかとしており、もはやだれも、鎖でさえも彼をつなぎとめて置けなかった。

5:4編集

彼はたびたび足かせや鎖でつながれたが、鎖を引きちぎり、足かせを砕くので、だれも彼を押えつけることができなかったからである。

5:5編集

そして、夜昼たえまなく墓場や山で叫びつづけて、石で自分のからだを傷つけていた。

5:6編集

ところが、この人がイエスを遠くから見て、走り寄って拝し、

5:7編集

大声で叫んで言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。神に誓ってお願いします。どうぞ、わたしを苦しめないでください」。

5:8編集

それは、イエスが、「けがれた霊よ、この人から出て行け」と言われたからである。

5:9編集

また彼に、「なんという名前か」と尋ねられると、「レギオンと言います。大ぜいなのですから」と答えた。

5:10編集

そして、自分たちをこの土地から追い出さないようにと、しきりに願いつづけた。

5:11編集

さて、そこの山の中腹に、豚の大群が飼ってあった。

5:12編集

霊はイエスに願って言った、「わたしどもを、豚にはいらせてください。その中へ送ってください」。

5:13編集

イエスがお許しになったので、けがれた霊どもは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れは二千匹ばかりであったが、がけから海へなだれを打って駆け下り、海の中でおぼれ死んでしまった。

5:14編集

豚を飼う者たちが逃げ出して、町や村にふれまわったので、人々は何事が起ったのかと見にきた。

5:15編集

そして、イエスのところにきて、悪霊につかれた人が着物を着て、正気になってすわっており、それがレギオンを宿していた者であるのを見て、恐れた。

5:16編集

また、それを見た人たちは、悪霊につかれた人の身に起った事と豚のこととを、彼らに話して聞かせた。

5:17編集

そこで、人々はイエスに、この地方から出て行っていただきたいと、頼みはじめた。

5:18編集

イエスが舟に乗ろうとされると、悪霊につかれていた人がお供をしたいと願い出た。

5:19編集

しかし、イエスはお許しにならないで、彼に言われた、「あなたの家族のもとに帰って、主がどんなに大きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを知らせなさい」。

5:20編集

そこで、彼は立ち去り、そして自分にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの地方に言いひろめ出したので、人々はみな驚き怪しんだ。

5:21編集

イエスがまた舟で向こう岸へ渡られると、大ぜいの群衆がみもとに集まってきた。イエスは海べにおられた。

5:22編集

そこへ、会堂司のひとりであるヤイロという者がきて、イエスを見かけるとその足もとにひれ伏し、

5:23編集

しきりに願って言った、「わたしの幼い娘が死にかかっています。どうぞ、その子がなおって助かりますように、おいでになって、手をおいてやってください」。

5:24編集

そこで、イエスは彼と一緒に出かけられた。大ぜいの群衆もイエスに押し迫りながら、ついて行った。

5:25編集

さてここに、十二年間も長血をわずらっている女がいた。

5:26編集

多くの医者にかかって、さんざん苦しめられ、その持ち物をみな費してしまったが、なんのかいもないばかりか、かえってますます悪くなる一方であった。

5:27編集

この女がイエスのことを聞いて、群衆の中にまぎれ込み、うしろから、み衣にさわった。

5:28編集

それは、せめて、み衣にでもさわれば、なおしていただけるだろうと、思っていたからである。

5:29編集

すると、血の元がすぐにかわき、女は病気がなおったことを、その身に感じた。

5:30編集

イエスはすぐ、自分の内から力が出て行ったことに気づかれて、群衆の中で振り向き、「わたしの着物にさわったのはだれか」と言われた。

5:31編集

そこで弟子たちが言った、「ごらんのとおり、群衆があなたに押し迫っていますのに、だれがさわったかと、おっしゃるのですか」。

5:32編集

しかし、イエスはさわった者を見つけようとして、見まわしておられた。

5:33編集

その女は自分の身に起ったことを知って、恐れおののきながら進み出て、みまえにひれ伏して、すべてありのままを申し上げた。

5:34編集

イエスはその女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。すっかりなおって、達者でいなさい」。

5:35編集

イエスが、まだ話しておられるうちに、会堂司の家から人々がきて言った、「あなたの娘はなくなりました。このうえ、先生を煩わすには及びますまい」。

5:36編集

イエスはその話している言葉を聞き流して、会堂司に言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい」。

5:37編集

そしてペテロ、ヤコブ、ヤコブの兄弟ヨハネのほかは、ついて来ることを、だれにもお許しにならなかった。

5:38編集

彼らが会堂司の家に着くと、イエスは人々が大声で泣いたり、叫んだりして、騒いでいるのをごらんになり、

5:39編集

内にはいって、彼らに言われた、「なぜ泣き騒いでいるのか。子供は死んだのではない。眠っているだけである」。

5:40編集

人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなの者を外に出し、子供の父母と供の者たちだけを連れて、子供のいる所にはいって行かれた。

5:41編集

そして子供の手を取って、「タリタ、クミ」と言われた。それは、「少女よ、さあ、起きなさい」という意味である。

5:42編集

すると、少女はすぐに起き上がって、歩き出した。十二歳にもなっていたからである。彼らはたちまち非常な驚きに打たれた。

5:43編集

イエスは、だれにもこの事を知らすなと、きびしく彼らに命じ、また、少女に食物を与えるようにと言われた。

第6章編集

6:1編集

イエスはそこを去って、郷里に行かれたが、弟子たちも従って行った。

6:2編集

そして、安息日になったので、会堂で教えはじめられた。それを聞いた多くの人々は、驚いて言った、「この人は、これらのことをどこで習ってきたのか。また、この人の授かった知恵はどうだろう。このような力あるわざがその手で行われているのは、どうしてか。

6:3編集

この人は大工ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの兄弟ではないか。またその姉妹たちも、ここにわたしたちと一緒にいるではないか」。こうして彼らはイエスにつまずいた。

6:4編集

イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里、親族、家以外では、どこででも敬われないことはない」。

6:5編集

そして、そこでは力あるわざを一つもすることができず、ただ少数の病人に手をおいていやされただけであった。

6:6編集

そして、彼らの不信仰を驚き怪しまれた。それからイエスは、附近の村々を巡りあるいて教えられた。

6:7編集

また十二弟子を呼び寄せ、ふたりずつつかわすことにして、彼らにけがれた霊を制する権威を与え、

6:8編集

また旅のために、つえ一本のほかには何も持たないように、パンも、袋も、帯の中に銭も持たず、

6:9編集

ただわらじをはくだけで、下着も二枚は着ないように命じられた。

6:10編集

そして彼らに言われた、「どこへ行っても、家にはいったなら、その土地を去るまでは、そこにとどまっていなさい。

6:11編集

また、あなたがたを迎えず、あなたがたの話を聞きもしない所があったなら、そこから出て行くとき、彼らに対する抗議のしるしに、足の裏のちりを払い落しなさい」。

6:12編集

そこで、彼らは出て行って、悔改めを宣べ伝え、

6:13編集

多くの悪霊を追い出し、大ぜいの病人に油をぬっていやした。

6:14編集

さて、イエスの名が知れわたって、ヘロデ王の耳にはいった。ある人々は「バプテスマのヨハネが、死人の中からよみがえってきたのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」と言い、

6:15編集

他の人々は「彼はエリヤだ」と言い、また他の人々は「昔の預言者のような預言者だ」と言った。

6:16編集

ところが、ヘロデはこれを聞いて、「わたしが首を切ったあのヨハネがよみがえったのだ」と言った。

6:17編集

このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤをめとったが、そのことで、人をつかわし、ヨハネを捕えて獄につないだ。

6:18編集

それは、ヨハネがヘロデに、「兄弟の妻をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。

6:19編集

そこで、ヘロデヤはヨハネを恨み、彼を殺そうと思っていたが、できないでいた。

6:20編集

それはヘロデが、ヨハネは正しくて聖なる人であることを知って、彼を恐れ、彼に保護を加え、またその教を聞いて非常に悩みながらも、なお喜んで聞いていたからである。

6:21編集

ところが、よい機会がきた。ヘロデは自分の誕生日の祝に、高官や将校やガリラヤの重立った人たちを招いて宴会を催したが、

6:22編集

そこへ、このヘロデヤの娘がはいってきて舞をまい、ヘロデをはじめ列座の人たちを喜ばせた。そこで王はこの少女に「ほしいものはなんでも言いなさい。あなたにあげるから」と言い、

6:23編集

さらに「ほしければ、この国の半分でもあげよう」と誓って言った。

6:24編集

そこで少女は座をはずして、母に「何をお願いしましょうか」と尋ねると、母は「バプテスマのヨハネの首を」と答えた。

6:25編集

するとすぐ、少女は急いで王のところに行って願った、「今すぐに、バプテスマのヨハネの首を盆にのせて、それをいただきとうございます」。

6:26編集

王は非常に困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、少女の願いを退けることを好まなかった。

6:27編集

そこで、王はすぐに衛兵をつかわし、ヨハネの首を持って来るように命じた。衛兵は出て行き、獄中でヨハネの首を切り、

6:28編集

盆にのせて持ってきて少女に与え、少女はそれを母にわたした。

6:29編集

ヨハネの弟子たちはこのことを聞き、その死体を引き取りにきて、墓に納めた。

6:30編集

さて、使徒たちはイエスのもとに集まってきて、自分たちがしたことや教えたことを、みな報告した。

6:31編集

するとイエスは彼らに言われた、「さあ、あなたがたは、人を避けて寂しい所へ行って、しばらく休むがよい」。それは、出入りする人が多くて、食事をする暇もなかったからである。

6:32編集

そこで彼らは人を避け、舟に乗って寂しい所へ行った。

6:33編集

ところが、多くの人々は彼らが出かけて行くのを見、それと気づいて、方々の町々からそこへ、一せいに駆けつけ、彼らより先に着いた。

6:34編集

イエスは舟から上がって大ぜいの群衆をごらんになり、飼う者のない羊のようなその有様を深くあわれんで、いろいろと教えはじめられた。

6:35編集

ところが、はや時もおそくなったので、弟子たちはイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。

6:36編集

みんなを解散させ、めいめいで何か食べる物を買いに、まわりの部落や村々へ行かせてください」。

6:37編集

イエスは答えて言われた、「あなたがたの手で食物をやりなさい」。弟子たちは言った、「わたしたちが二百デナリものパンを買ってきて、みんなに食べさせるのですか」。

6:38編集

するとイエスは言われた、「パンは幾つあるか。見てきなさい」。彼らは確かめてきて、「五つあります。それに魚が二ひき」と言った。

6:39編集

そこでイエスは、みんなを組々に分けて、青草の上にすわらせるように命じられた。

6:40編集

人々は、あるいは百人ずつ、あるいは五十人ずつ、列をつくってすわった。

6:41編集

それから、イエスは五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさき、弟子たちにわたして配らせ、また、二ひきの魚もみんなにお分けになった。

6:42編集

みんなの者は食べて満腹した。

6:43編集

そこで、パンくずや魚の残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。

6:44編集

パンを食べた者は男五千人であった。

6:45編集

それからすぐ、イエスは自分で群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸のベツサイダへ先におやりになった。

6:46編集

そして群衆に別れてから、祈るために山へ退かれた。

6:47編集

夕方になったとき、舟は海のまん中に出ており、イエスだけが陸地におられた。

6:48編集

ところが逆風が吹いていたために、弟子たちがこぎ悩んでいるのをごらんになって、夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らに近づき、そのそばを通り過ぎようとされた。

6:49編集

彼らはイエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと思い、大声で叫んだ。

6:50編集

みんなの者がそれを見て、おじ恐れたからである。しかし、イエスはすぐ彼らに声をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。恐れることはない」と言われた。

6:51編集

そして、彼らの舟に乗り込まれると、風はやんだ。彼らは心の中で、非常に驚いた。

6:52編集

先のパンのことを悟らず、その心が鈍くなっていたからである。

6:53編集

彼らは海を渡り、ゲネサレの地に着いて舟をつないだ。

6:54編集

そして舟からあがると、人々はすぐイエスと知って、

6:55編集

その地方をあまねく駆けめぐり、イエスがおられると聞けば、どこへでも病人を床にのせて運びはじめた。

6:56編集

そして、村でも町でも部落でも、イエスがはいって行かれる所では、病人たちをその広場におき、せめてその上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいと、お願いした。そしてさわった者は皆いやされた。

第7章編集

7:1編集

さて、パリサイ人と、ある律法学者たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに集まった。

7:2編集

そして弟子たちのうちに、不浄な手、すなわち洗わない手で、パンを食べている者があるのを見た。

7:3編集

もともと、パリサイ人をはじめユダヤ人はみな、昔の人の言伝えをかたく守って、念入りに手を洗ってからでないと、食事をしない。

7:4編集

また市場から帰ったときには、身を清めてからでないと、食事をせず、なおそのほかにも、杯、鉢、銅器を洗うことなど、昔から受けついでかたく守っている事が、たくさんあった。

7:5編集

そこで、パリサイ人と律法学者たちとは、イエスに尋ねた、「なぜ、あなたの弟子たちは、昔の人の言伝えに従って歩まないで、不浄な手でパンを食べるのですか」。

7:6編集

イエスは言われた、「イザヤは、あなたがた偽善者について、こう書いているが、それは適切な預言である、『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。

7:7編集

人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』。

7:8編集

あなたがたは、神のいましめをさしおいて、人間の言伝えを固執している」。

7:9編集

また、言われた、「あなたがたは、自分たちの言伝えを守るために、よくも神のいましめを捨てたものだ。

7:10編集

モーセは言ったではないか、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。

7:11編集

それだのに、あなたがたは、もし人が父または母にむかって、あなたに差上げるはずのこのものはコルバン、すなわち、供え物ですと言えば、それでよいとして、

7:12編集

その人は父母に対して、もう何もしないで済むのだと言っている。

7:13編集

こうしてあなたがたは、自分たちが受けついだ言伝えによって、神の言を無にしている。また、このような事をしばしばおこなっている」。

7:14編集

それから、イエスは再び群衆を呼び寄せて言われた、「あなたがたはみんな、わたしの言うことを聞いて悟るがよい。

7:15編集

すべて外から人の中にはいって、人をけがしうるものはない。かえって、人の中から出てくるものが、人をけがすのである。〔

7:16編集

聞く耳のある者は聞くがよい〕」。

7:17編集

イエスが群衆を離れて家にはいられると、弟子たちはこの譬について尋ねた。

7:18編集

すると、言われた、「あなたがたも、そんなに鈍いのか。すべて、外から人の中にはいって来るものは、人を汚し得ないことが、わからないのか。

7:19編集

それは人の心の中にはいるのではなく、腹の中にはいり、そして、外に出て行くだけである」。イエスはこのように、どんな食物でもきよいものとされた。

7:20編集

さらに言われた、「人から出て来るもの、それが人をけがすのである。

7:21編集

すなわち内部から、人の心の中から、悪い思いが出て来る。不品行、盗み、殺人、

7:22編集

姦淫、貪欲、邪悪、欺き、好色、妬み、誹り、高慢、愚痴。

7:23編集

これらの悪はすべて内部から出てきて、人をけがすのである」。

7:24編集

さて、イエスは、そこを立ち去って、ツロの地方に行かれた。そして、だれにも知れないように、家の中にはいられたが、隠れていることができなかった。

7:25編集

そして、けがれた霊につかれた幼い娘をもつ女が、イエスのことをすぐ聞きつけてきて、その足もとにひれ伏した。

7:26編集

この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生れであった。そして、娘から悪霊を追い出してくださいとお願いした。

7:27編集

イエスは女に言われた、「まず子供たちに十分食べさすべきである。子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。

7:28編集

すると、女は答えて言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、食卓の下にいる小犬も、子供たちのパンくずは、いただきます」。

7:29編集

そこでイエスは言われた、「その言葉で、じゅうぶんである。お帰りなさい。悪霊は娘から出てしまった」。

7:30編集

そこで、女が家に帰ってみると、その子は床の上に寝ており、悪霊は出てしまっていた。

7:31編集

それから、イエスはまたツロの地方を去り、シドンを経てデカポリス地方を通りぬけ、ガリラヤの海べにこられた。

7:32編集

すると人々は、耳が聞えず口のきけない人を、みもとに連れてきて、手を置いてやっていただきたいとお願いした。

7:33編集

そこで、イエスは彼ひとりを群衆の中から連れ出し、その両耳に指をさし入れ、それから、つばきでその舌を潤し、

7:34編集

天を仰いでため息をつき、その人に「エパタ」と言われた。これは「開けよ」という意味である。

7:35編集

すると彼の耳が開け、その舌のもつれもすぐ解けて、はっきりと話すようになった。

7:36編集

イエスは、この事をだれにも言ってはならぬと、人々に口止めをされたが、口止めをすればするほど、かえって、ますます言いひろめた。

7:37編集

彼らは、ひとかたならず驚いて言った、「このかたのなさった事は、何もかも、すばらしい。耳の聞えない者を聞えるようにしてやり、口のきけない者をきけるようにしておやりになった」。

第8章編集

8:1編集

そのころ、また大ぜいの群衆が集まっていたが、何も食べるものがなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、

8:2編集

「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。

8:3編集

もし、彼らを空腹のまま家に帰らせるなら、途中で弱り切ってしまうであろう。それに、なかには遠くからきている者もある」。

8:4編集

弟子たちは答えた、「こんな荒野で、どこからパンを手に入れて、これらの人々にじゅうぶん食べさせることができましょうか」。

8:5編集

イエスが弟子たちに、「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります」と答えた。

8:6編集

そこでイエスは群衆に地にすわるように命じられた。そして七つのパンを取り、感謝してこれをさき、人々に配るように弟子たちに渡されると、弟子たちはそれを群衆に配った。

8:7編集

また小さい魚が少しばかりあったので、祝福して、それをも人々に配るようにと言われた。

8:8編集

彼らは食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七かごになった。

8:9編集

人々の数はおよそ四千人であった。それからイエスは彼らを解散させ、

8:10編集

すぐ弟子たちと共に舟に乗って、ダルマヌタの地方へ行かれた。

8:11編集

パリサイ人たちが出てきて、イエスを試みようとして議論をしかけ、天からのしるしを求めた。

8:12編集

イエスは、心の中で深く嘆息して言われた、「なぜ、今の時代はしるしを求めるのだろう。よく言い聞かせておくが、しるしは今の時代には決して与えられない」。

8:13編集

そして、イエスは彼らをあとに残し、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。

8:14編集

弟子たちはパンを持って来るのを忘れていたので、舟の中にはパン一つしか持ち合わせがなかった。

8:15編集

そのとき、イエスは彼らを戒めて、「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とを、よくよく警戒せよ」と言われた。

8:16編集

弟子たちは、これは自分たちがパンを持っていないためであろうと、互に論じ合った。

8:17編集

イエスはそれと知って、彼らに言われた、「なぜ、パンがないからだと論じ合っているのか。まだわからないのか、悟らないのか。あなたがたの心は鈍くなっているのか。

8:18編集

目があっても見えないのか。耳があっても聞えないのか。まだ思い出さないのか。

8:19編集

五つのパンをさいて五千人に分けたとき、拾い集めたパンくずは、幾つのかごになったか」。弟子たちは答えた、「十二かごです」。

8:20編集

「七つのパンを四千人に分けたときには、パンくずを幾つのかごに拾い集めたか」。「七かごです」と答えた。

8:21編集

そこでイエスは彼らに言われた、「まだ悟らないのか」。

8:22編集

そのうちに、彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、ひとりの盲人を連れてきて、さわってやっていただきたいとお願いした。

8:23編集

イエスはこの盲人の手をとって、村の外に連れ出し、その両方の目につばきをつけ、両手を彼に当てて、「何か見えるか」と尋ねられた。

8:24編集

すると彼は顔を上げて言った、「人が見えます。木のように見えます。歩いているようです」。

8:25編集

それから、イエスが再び目の上に両手を当てられると、盲人は見つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと見えだした。

8:26編集

そこでイエスは、「村にはいってはいけない」と言って、彼を家に帰された。

8:27編集

さて、イエスは弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々へ出かけられたが、その途中で、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は、わたしをだれと言っているか」。

8:28編集

彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。また、エリヤだと言い、また、預言者のひとりだと言っている者もあります」。

8:29編集

そこでイエスは彼らに尋ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「あなたこそキリストです」。

8:30編集

するとイエスは、自分のことをだれにも言ってはいけないと、彼らを戒められた。

8:31編集

それから、人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日の後によみがえるべきことを、彼らに教えはじめ、

8:32編集

しかもあからさまに、この事を話された。すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめたので、

8:33編集

イエスは振り返って、弟子たちを見ながら、ペテロをしかって言われた、「サタンよ、引きさがれ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。

8:34編集

それから群衆を弟子たちと一緒に呼び寄せて、彼らに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。

8:35編集

自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのため、また福音のために、自分の命を失う者は、それを救うであろう。

8:36編集

人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。

8:37編集

また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。

8:38編集

邪悪で罪深いこの時代にあって、わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、父の栄光のうちに聖なる御使たちと共に来るときに、その者を恥じるであろう」。

第9章編集

9:1編集

また、彼らに言われた、「よく聞いておくがよい。神の国が力をもって来るのを見るまでは、決して死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいる」。

9:2編集

六日の後、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。ところが、彼らの目の前でイエスの姿が変り、

9:3編集

その衣は真白く輝き、どんな布さらしでも、それほどに白くすることはできないくらいになった。

9:4編集

すると、エリヤがモーセと共に彼らに現れて、イエスと語り合っていた。

9:5編集

ペテロはイエスにむかって言った、「先生、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。

9:6編集

そう言ったのは、みんなの者が非常に恐れていたので、ペテロは何を言ってよいか、わからなかったからである。

9:7編集

すると、雲がわき起って彼らをおおった。そして、その雲の中から声があった、「これはわたしの愛する子である。これに聞け」。

9:8編集

彼らは急いで見まわしたが、もはやだれも見えず、ただイエスだけが、自分たちと一緒におられた。

9:9編集

一同が山を下って来るとき、イエスは「人の子が死人の中からよみがえるまでは、いま見たことをだれにも話してはならない」と、彼らに命じられた。

9:10編集

彼らはこの言葉を心にとめ、死人の中からよみがえるとはどういうことかと、互に論じ合った。

9:11編集

そしてイエスに尋ねた、「なぜ、律法学者たちは、エリヤが先に来るはずだと言っているのですか」。

9:12編集

イエスは言われた、「確かに、エリヤが先にきて、万事を元どおりに改める。しかし、人の子について、彼が多くの苦しみを受け、かつ恥ずかしめられると、書いてあるのはなぜか。

9:13編集

しかしあなたがたに言っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして彼について書いてあるように、人々は自分かってに彼をあしらった」。

9:14編集

さて、彼らがほかの弟子たちの所にきて見ると、大ぜいの群衆が弟子たちを取り囲み、そして律法学者たちが彼らと論じ合っていた。

9:15編集

群衆はみな、すぐイエスを見つけて、非常に驚き、駆け寄ってきて、あいさつをした。

9:16編集

イエスが彼らに、「あなたがたは彼らと何を論じているのか」と尋ねられると、

9:17編集

群衆のひとりが答えた、「先生、おしの霊につかれているわたしのむすこを、こちらに連れて参りました。

9:18編集

霊がこのむすこにとりつきますと、どこででも彼を引き倒し、それから彼はあわを吹き、歯をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした」。

9:19編集

イエスは答えて言われた、「ああ、なんという不信仰な時代であろう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒におられようか。いつまで、あなたがたに我慢ができようか。その子をわたしの所に連れてきなさい」。

9:20編集

そこで人々は、その子をみもとに連れてきた。霊がイエスを見るや否や、その子をひきつけさせたので、子は地に倒れ、あわを吹きながらころげまわった。

9:21編集

そこで、イエスが父親に「いつごろから、こんなになったのか」と尋ねられると、父親は答えた、「幼い時からです。

9:22編集

霊はたびたび、この子を火の中、水の中に投げ入れて、殺そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお助けください」。

9:23編集

イエスは彼に言われた、「もしできれば、と言うのか。信ずる者には、どんな事でもできる」。

9:24編集

その子の父親はすぐ叫んで言った、「信じます。不信仰なわたしを、お助けください」。

9:25編集

イエスは群衆が駆け寄って来るのをごらんになって、けがれた霊をしかって言われた、「おしとつんぼの霊よ、わたしがおまえに命じる。この子から出て行け。二度と、はいって来るな」。

9:26編集

すると霊は叫び声をあげ、激しく引きつけさせて出て行った。その子は死人のようになったので、多くの人は、死んだのだと言った。

9:27編集

しかし、イエスが手を取って起されると、その子は立ち上がった。

9:28編集

家にはいられたとき、弟子たちはひそかにお尋ねした、「わたしたちは、どうして霊を追い出せなかったのですか」。

9:29編集

すると、イエスは言われた、「このたぐいは、祈によらなければ、どうしても追い出すことはできない」。

9:30編集

それから彼らはそこを立ち去り、ガリラヤをとおって行ったが、イエスは人に気づかれるのを好まれなかった。

9:31編集

それは、イエスが弟子たちに教えて、「人の子は人々の手にわたされ、彼らに殺され、殺されてから三日の後によみがえるであろう」と言っておられたからである。

9:32編集

しかし、彼らはイエスの言われたことを悟らず、また尋ねるのを恐れていた。

9:33編集

それから彼らはカペナウムにきた。そして家におられるとき、イエスは弟子たちに尋ねられた、「あなたがたは途中で何を論じていたのか」。

9:34編集

彼らは黙っていた。それは途中で、だれが一ばん偉いかと、互に論じ合っていたからである。

9:35編集

そこで、イエスはすわって十二弟子を呼び、そして言われた、「だれでも一ばん先になろうと思うならば、一ばんあとになり、みんなに仕える者とならねばならない」。

9:36編集

そして、ひとりの幼な子をとりあげて、彼らのまん中に立たせ、それを抱いて言われた。

9:37編集

「だれでも、このような幼な子のひとりを、わたしの名のゆえに受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。そして、わたしを受けいれる者は、わたしを受けいれるのではなく、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである」。

9:38編集

ヨハネがイエスに言った、「先生、わたしたちについてこない者が、あなたの名を使って悪霊を追い出しているのを見ましたが、その人はわたしたちについてこなかったので、やめさせました」。

9:39編集

イエスは言われた、「やめさせないがよい。だれでもわたしの名で力あるわざを行いながら、すぐそのあとで、わたしをそしることはできない。

9:40編集

わたしたちに反対しない者は、わたしたちの味方である。

9:41編集

だれでも、キリストについている者だというので、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれるものは、よく言っておくが、決してその報いからもれることはないであろう。

9:42編集

また、わたしを信じるこれらの小さい者のひとりをつまずかせる者は、大きなひきうすを首にかけられて海に投げ込まれた方が、はるかによい。

9:43編集

もし、あなたの片手が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両手がそろったままで地獄の消えない火の中に落ち込むよりは、かたわになって命に入る方がよい。〔

9:44編集

地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕

9:45編集

もし、あなたの片足が罪を犯させるなら、それを切り捨てなさい。両足がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片足で命に入る方がよい。

9:46編集

地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。〕

9:47編集

もし、あなたの片目が罪を犯させるなら、それを抜き出しなさい。両眼がそろったままで地獄に投げ入れられるよりは、片目になって神の国に入る方がよい。

9:48編集

地獄では、うじがつきず、火も消えることがない。

9:49編集

人はすべて火で塩づけられねばならない。

9:50編集

塩はよいものである。しかし、もしその塩の味がぬけたら、何によってその味が取りもどされようか。あなたがた自身の内に塩を持ちなさい。そして、互に和らぎなさい」。

第10章編集

10:1編集

それから、イエスはそこを去って、ユダヤの地方とヨルダンの向こう側へ行かれたが、群衆がまた寄り集まったので、いつものように、また教えておられた。

10:2編集

そのとき、パリサイ人たちが近づいてきて、イエスを試みようとして質問した、「夫はその妻を出しても差しつかえないでしょうか」。

10:3編集

イエスは答えて言われた、「モーセはあなたがたになんと命じたか」。

10:4編集

彼らは言った、「モーセは、離縁状を書いて妻を出すことを許しました」。

10:5編集

そこでイエスは言われた、「モーセはあなたがたの心が、かたくななので、あなたがたのためにこの定めを書いたのである。

10:6編集

しかし、天地創造の初めから、『神は人を男と女とに造られた。

10:7編集

それゆえに、人はその父母を離れ、

10:8編集

ふたりの者は一体となるべきである』。彼らはもはや、ふたりではなく一体である。

10:9編集

だから、神が合わせられたものを、人は離してはならない」。

10:10編集

家にはいってから、弟子たちはまたこのことについて尋ねた。

10:11編集

そこで、イエスは言われた、「だれでも、自分の妻を出して他の女をめとる者は、その妻に対して姦淫を行うのである。

10:12編集

また妻が、その夫と別れて他の男にとつぐならば、姦淫を行うのである」。

10:13編集

イエスにさわっていただくために、人々が幼な子らをみもとに連れてきた。ところが、弟子たちは彼らをたしなめた。

10:14編集

それを見てイエスは憤り、彼らに言われた、「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である。

10:15編集

よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。

10:16編集

そして彼らを抱き、手をその上において祝福された。

10:17編集

イエスが道に出て行かれると、ひとりの人が走り寄り、みまえにひざまずいて尋ねた、「よき師よ、永遠の生命を受けるために、何をしたらよいでしょうか」。

10:18編集

イエスは言われた、「なぜわたしをよき者と言うのか。神ひとりのほかによい者はいない。

10:19編集

いましめはあなたの知っているとおりである。『殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証を立てるな。欺き取るな。父と母とを敬え』」。

10:20編集

すると、彼は言った、「先生、それらの事はみな、小さい時から守っております」。

10:21編集

イエスは彼に目をとめ、いつくしんで言われた、「あなたに足りないことが一つある。帰って、持っているものをみな売り払って、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を持つようになろう。そして、わたしに従ってきなさい」。

10:22編集

すると、彼はこの言葉を聞いて、顔を曇らせ、悲しみながら立ち去った。たくさんの資産を持っていたからである。

10:23編集

それから、イエスは見まわして、弟子たちに言われた、「財産のある者が神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。

10:24編集

弟子たちはこの言葉に驚き怪しんだ。イエスは更に言われた、「子たちよ、神の国にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。

10:25編集

富んでいる者が神の国にはいるよりは、らくだが針の穴を通る方が、もっとやさしい」。

10:26編集

すると彼らはますます驚いて、互に言った、「それでは、だれが救われることができるのだろう」。

10:27編集

イエスは彼らを見つめて言われた、「人にはできないが、神にはできる。神はなんでもできるからである」。

10:28編集

ペテロがイエスに言い出した、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを捨てて、あなたに従って参りました」。

10:29編集

イエスは言われた、「よく聞いておくがよい。だれでもわたしのために、また福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子、もしくは畑を捨てた者は、

10:30編集

必ずその百倍を受ける。すなわち、今この時代では家、兄弟、姉妹、母、子および畑を迫害と共に受け、また、きたるべき世では永遠の生命を受ける。

10:31編集

しかし、多くの先の者はあとになり、あとの者は先になるであろう」。

10:32編集

さて、一同はエルサレムへ上る途上にあったが、イエスが先頭に立って行かれたので、彼らは驚き怪しみ、従う者たちは恐れた。するとイエスはまた十二弟子を呼び寄せて、自分の身に起ろうとすることについて語りはじめられた、

10:33編集

「見よ、わたしたちはエルサレムへ上って行くが、人の子は祭司長、律法学者たちの手に引きわたされる。そして彼らは死刑を宣告した上、彼を異邦人に引きわたすであろう。

10:34編集

また彼をあざけり、つばきをかけ、むち打ち、ついに殺してしまう。そして彼は三日の後によみがえるであろう」。

10:35編集

さて、ゼベダイの子のヤコブとヨハネとがイエスのもとにきて言った、「先生、わたしたちがお頼みすることは、なんでもかなえてくださるようにお願いします」。

10:36編集

イエスは彼らに「何をしてほしいと、願うのか」と言われた。

10:37編集

すると彼らは言った、「栄光をお受けになるとき、ひとりをあなたの右に、ひとりを左にすわるようにしてください」。

10:38編集

イエスは言われた、「あなたがたは自分が何を求めているのか、わかっていない。あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けることができるか」。

10:39編集

彼らは「できます」と答えた。するとイエスは言われた、「あなたがたは、わたしが飲む杯を飲み、わたしが受けるバプテスマを受けるであろう。

10:40編集

しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、ただ備えられている人々だけに許されることである」。

10:41編集

十人の者はこれを聞いて、ヤコブとヨハネとのことで憤慨し出した。

10:42編集

そこで、イエスは彼らを呼び寄せて言われた、「あなたがたの知っているとおり、異邦人の支配者と見られている人々は、その民を治め、また偉い人たちは、その民の上に権力をふるっている。

10:43編集

しかし、あなたがたの間では、そうであってはならない。かえって、あなたがたの間で偉くなりたいと思う者は、仕える人となり、

10:44編集

あなたがたの間でかしらになりたいと思う者は、すべての人の僕とならねばならない。

10:45編集

人の子がきたのも、仕えられるためではなく、仕えるためであり、また多くの人のあがないとして、自分の命を与えるためである」。

10:46編集

それから、彼らはエリコにきた。そして、イエスが弟子たちや大ぜいの群衆と共にエリコから出かけられたとき、テマイの子、バルテマイという盲人のこじきが、道ばたにすわっていた。

10:47編集

ところが、ナザレのイエスだと聞いて、彼は「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」と叫び出した。

10:48編集

多くの人々は彼をしかって黙らせようとしたが、彼はますます激しく叫びつづけた、「ダビデの子イエスよ、わたしをあわれんでください」。

10:49編集

イエスは立ちどまって「彼を呼べ」と命じられた。そこで、人々はその盲人を呼んで言った、「喜べ、立て、おまえを呼んでおられる」。

10:50編集

そこで彼は上着を脱ぎ捨て、踊りあがってイエスのもとにきた。

10:51編集

イエスは彼にむかって言われた、「わたしに何をしてほしいのか」。その盲人は言った、「先生、見えるようになることです」。

10:52編集

そこでイエスは言われた、「行け、あなたの信仰があなたを救った」。すると彼は、たちまち見えるようになり、イエスに従って行った。

第11章編集

11:1編集

さて、彼らがエルサレムに近づき、オリブの山に沿ったベテパゲ、ベタニヤの附近にきた時、イエスはふたりの弟子をつかわして言われた、

11:2編集

「むこうの村へ行きなさい。そこにはいるとすぐ、まだだれも乗ったことのないろばの子が、つないであるのを見るであろう。それを解いて引いてきなさい。

11:3編集

もし、だれかがあなたがたに、なぜそんな事をするのかと言ったなら、主がお入り用なのです。またすぐ、ここへ返してくださいますと、言いなさい」。

11:4編集

そこで、彼らは出かけて行き、そして表通りの戸口に、ろばの子がつないであるのを見たので、それを解いた。

11:5編集

すると、そこに立っていた人々が言った、「そのろばの子を解いて、どうするのか」。

11:6編集

弟子たちは、イエスが言われたとおり彼らに話したので、ゆるしてくれた。

11:7編集

そこで、弟子たちは、そのろばの子をイエスのところに引いてきて、自分たちの上着をそれに投げかけると、イエスはその上にお乗りになった。

11:8編集

すると多くの人々は自分たちの上着を道に敷き、また他の人々は葉のついた枝を野原から切ってきて敷いた。

11:9編集

そして、前に行く者も、あとに従う者も共に叫びつづけた、「ホサナ、主の御名によってきたる者に、祝福あれ。

11:10編集

今きたる、われらの父ダビデの国に、祝福あれ。いと高き所に、ホサナ」。

11:11編集

こうしてイエスはエルサレムに着き、宮にはいられた。そして、すべてのものを見まわった後、もはや時もおそくなっていたので、十二弟子と共にベタニヤに出て行かれた。

11:12編集

翌日、彼らがベタニヤから出かけてきたとき、イエスは空腹をおぼえられた。

11:13編集

そして、葉の茂ったいちじくの木を遠くからごらんになって、その木に何かありはしないかと近寄られたが、葉のほかは何も見当らなかった。いちじくの季節でなかったからである。

11:14編集

そこで、イエスはその木にむかって、「今から後いつまでも、おまえの実を食べる者がないように」と言われた。弟子たちはこれを聞いていた。

11:15編集

それから、彼らはエルサレムにきた。イエスは宮に入り、宮の庭で売り買いしていた人々を追い出しはじめ、両替人の台や、はとを売る者の腰掛をくつがえし、

11:16編集

また器ものを持って宮の庭を通り抜けるのをお許しにならなかった。

11:17編集

そして、彼らに教えて言われた、「『わたしの家は、すべての国民の祈の家ととなえらるべきである』と書いてあるではないか。それだのに、あなたがたはそれを強盗の巣にしてしまった」。

11:18編集

祭司長、律法学者たちはこれを聞いて、どうかしてイエスを殺そうと計った。彼らは、群衆がみなその教に感動していたので、イエスを恐れていたからである。

11:19編集

夕方になると、イエスと弟子たちとは、いつものように都の外に出て行った。

11:20編集

朝はやく道をとおっていると、彼らは先のいちじくが根元から枯れているのを見た。

11:21編集

そこで、ペテロは思い出してイエスに言った、「先生、ごらんなさい。あなたがのろわれたいちじくが、枯れています」。

11:22編集

イエスは答えて言われた、「神を信じなさい。

11:23編集

よく聞いておくがよい。だれでもこの山に、動き出して、海の中にはいれと言い、その言ったことは必ず成ると、心に疑わないで信じるなら、そのとおりに成るであろう。

11:24編集

そこで、あなたがたに言うが、なんでも祈り求めることは、すでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。

11:25編集

また立って祈るとき、だれかに対して、何か恨み事があるならば、ゆるしてやりなさい。そうすれば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださるであろう。〔

11:26編集

もしゆるさないならば、天にいますあなたがたの父も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださらないであろう〕」。

11:27編集

彼らはまたエルサレムにきた。そして、イエスが宮の内を歩いておられると、祭司長、律法学者、長老たちが、みもとにきて言った、

11:28編集

「何の権威によってこれらの事をするのですか。だれが、そうする権威を授けたのですか」。

11:29編集

そこで、イエスは彼らに言われた、「一つだけ尋ねよう。それに答えてほしい。そうしたら、何の権威によって、わたしがこれらの事をするのか、あなたがたに言おう。

11:30編集

ヨハネのバプテスマは天からであったか、人からであったか、答えなさい」。

11:31編集

すると、彼らは互に論じて言った、「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。

11:32編集

しかし、人からだと言えば……」。彼らは群衆を恐れていた。人々が皆、ヨハネを預言者だとほんとうに思っていたからである。

11:33編集

それで彼らは「わたしたちにはわかりません」と答えた。するとイエスは言われた、「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言うまい」。

第12章編集

12:1編集

そこでイエスは譬で彼らに語り出された、「ある人がぶどう園を造り、垣をめぐらし、また酒ぶねの穴を掘り、やぐらを立て、それを農夫たちに貸して、旅に出かけた。

12:2編集

季節になったので、農夫たちのところへ、ひとりの僕を送って、ぶどう園の収穫の分け前を取り立てさせようとした。

12:3編集

すると、彼らはその僕をつかまえて、袋だたきにし、から手で帰らせた。

12:4編集

また他の僕を送ったが、その頭をなぐって侮辱した。

12:5編集

そこでまた他の者を送ったが、今度はそれを殺してしまった。そのほか、なお大ぜいの者を送ったが、彼らを打ったり、殺したりした。

12:6編集

ここに、もうひとりの者がいた。それは彼の愛子であった。自分の子は敬ってくれるだろうと思って、最後に彼をつかわした。

12:7編集

すると、農夫たちは『あれはあと取りだ。さあ、これを殺してしまおう。そうしたら、その財産はわれわれのものになるのだ』と話し合い、

12:8編集

彼をつかまえて殺し、ぶどう園の外に投げ捨てた。

12:9編集

このぶどう園の主人は、どうするだろうか。彼は出てきて、農夫たちを殺し、ぶどう園を他の人々に与えるであろう。

12:10編集

あなたがたは、この聖書の句を読んだことがないのか。『家造りらの捨てた石が隅のかしら石になった。

12:11編集

これは主がなされたことで、わたしたちの目には不思議に見える』」。

12:12編集

彼らはいまの譬が、自分たちに当てて語られたことを悟ったので、イエスを捕えようとしたが、群衆を恐れた。そしてイエスをそこに残して立ち去った。

12:13編集

さて、人々はパリサイ人やヘロデ党の者を数人、イエスのもとにつかわして、その言葉じりを捕えようとした。

12:14編集

彼らはきてイエスに言った、「先生、わたしたちはあなたが真実なかたで、だれをも、はばかられないことを知っています。あなたは人に分け隔てをなさらないで、真理に基いて神の道を教えてくださいます。ところで、カイザルに税金を納めてよいでしょうか、いけないでしょうか。納めるべきでしょうか、納めてはならないのでしょうか」。

12:15編集

イエスは彼らの偽善を見抜いて言われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを持ってきて見せなさい」。

12:16編集

彼らはそれを持ってきた。そこでイエスは言われた、「これは、だれの肖像、だれの記号か」。彼らは「カイザルのです」と答えた。

12:17編集

するとイエスは言われた、「カイザルのものはカイザルに、神のものは神に返しなさい」。彼らはイエスに驚嘆した。

12:18編集

復活ということはないと主張していたサドカイ人たちが、イエスのもとにきて質問した、

12:19編集

「先生、モーセは、わたしたちのためにこう書いています、『もし、ある人の兄が死んで、その残された妻に、子がない場合には、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけねばならない』。

12:20編集

ここに、七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、

12:21編集

次男がその女をめとって、また子をもうけずに死に、三男も同様でした。

12:22編集

こうして、七人ともみな子孫を残しませんでした。最後にその女も死にました。

12:23編集

復活のとき、彼らが皆よみがえった場合、この女はだれの妻なのでしょうか。七人とも彼女を妻にしたのですが」。

12:24編集

イエスは言われた、「あなたがたがそんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからではないか。

12:25編集

彼らが死人の中からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。彼らは天にいる御使のようなものである。

12:26編集

死人がよみがえることについては、モーセの書の柴の篇で、神がモーセに仰せられた言葉を読んだことがないのか。『わたしはアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあるではないか。

12:27編集

神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。あなたがたは非常な思い違いをしている」。

12:28編集

ひとりの律法学者がきて、彼らが互に論じ合っているのを聞き、またイエスが巧みに答えられたのを認めて、イエスに質問した、「すべてのいましめの中で、どれが第一のものですか」。

12:29編集

イエスは答えられた、「第一のいましめはこれである、『イスラエルよ、聞け。主なるわたしたちの神は、ただひとりの主である。

12:30編集

心をつくし、精神をつくし、思いをつくし、力をつくして、主なるあなたの神を愛せよ』。

12:31編集

第二はこれである、『自分を愛するようにあなたの隣り人を愛せよ』。これより大事ないましめは、ほかにない」。

12:32編集

そこで、この律法学者はイエスに言った、「先生、仰せのとおりです、『神はひとりであって、そのほかに神はない』と言われたのは、ほんとうです。

12:33編集

また『心をつくし、知恵をつくし、力をつくして神を愛し、また自分を愛するように隣り人を愛する』ということは、すべての燔祭や犠牲よりも、はるかに大事なことです」。

12:34編集

イエスは、彼が適切な答をしたのを見て言われた、「あなたは神の国から遠くない」。それから後は、イエスにあえて問う者はなかった。

12:35編集

イエスが宮で教えておられたとき、こう言われた、「律法学者たちは、どうしてキリストをダビデの子だと言うのか。

12:36編集

ダビデ自身が聖霊に感じて言った、『主はわが主に仰せになった、あなたの敵をあなたの足もとに置くときまでは、わたしの右に座していなさい』。

12:37編集

このように、ダビデ自身がキリストを主と呼んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの子であろうか」。大ぜいの群衆は、喜んでイエスに耳を傾けていた。

12:38編集

イエスはその教の中で言われた、「律法学者に気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩くことや、広場であいさつされることや、

12:39編集

また会堂の上席、宴会の上座を好んでいる。

12:40編集

また、やもめたちの家を食い倒し、見えのために長い祈をする。彼らはもっときびしいさばきを受けるであろう」。

12:41編集

イエスは、さいせん箱にむかってすわり、群衆がその箱に金を投げ入れる様子を見ておられた。多くの金持は、たくさんの金を投げ入れていた。

12:42編集

ところが、ひとりの貧しいやもめがきて、レプタ二つを入れた。それは一コドラントに当る。

12:43編集

そこで、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「よく聞きなさい。あの貧しいやもめは、さいせん箱に投げ入れている人たちの中で、だれよりもたくさん入れたのだ。

12:44編集

みんなの者はありあまる中から投げ入れたが、あの婦人はその乏しい中から、あらゆる持ち物、その生活費全部を入れたからである」。

第13章編集

13:1編集

イエスが宮から出て行かれるとき、弟子のひとりが言った、「先生、ごらんなさい。なんという見事な石、なんという立派な建物でしょう」。

13:2編集

イエスは言われた、「あなたは、これらの大きな建物をながめているのか。その石一つでもくずされないままで、他の石の上に残ることもなくなるであろう」。

13:3編集

またオリブ山で、宮にむかってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにお尋ねした。

13:4編集

「わたしたちにお話しください。いつ、そんなことが起るのでしょうか。またそんなことがことごとく成就するような場合には、どんな前兆がありますか」。

13:5編集

そこで、イエスは話しはじめられた、「人に惑わされないように気をつけなさい。

13:6編集

多くの者がわたしの名を名のって現れ、自分がそれだと言って、多くの人を惑わすであろう。

13:7編集

また、戦争と戦争のうわさとを聞くときにも、あわてるな。それは起らねばならないが、まだ終りではない。

13:8編集

民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう。またあちこちに地震があり、またききんが起るであろう。これらは産みの苦しみの初めである。

13:9編集

あなたがたは自分で気をつけていなさい。あなたがたは、わたしのために、衆議所に引きわたされ、会堂で打たれ、長官たちや王たちの前に立たされ、彼らに対してあかしをさせられるであろう。

13:10編集

こうして、福音はまずすべての民に宣べ伝えられねばならない。

13:11編集

そして、人々があなたがたを連れて行って引きわたすとき、何を言おうかと、前もって心配するな。その場合、自分に示されることを語るがよい。語る者はあなたがた自身ではなくて、聖霊である。

13:12編集

また兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、子は両親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。

13:13編集

また、あなたがたはわたしの名のゆえに、すべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。

13:14編集

荒らす憎むべきものが、立ってはならぬ所に立つのを見たならば(読者よ、悟れ)、そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げよ。

13:15編集

屋上にいる者は、下におりるな。また家から物を取り出そうとして内にはいるな。

13:16編集

畑にいる者は、上着を取りにあとへもどるな。

13:17編集

その日には、身重の女と乳飲み子をもつ女とは、不幸である。

13:18編集

この事が冬おこらぬように祈れ。

13:19編集

その日には、神が万物を造られた創造の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような患難が起るからである。

13:20編集

もし主がその期間を縮めてくださらないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選ばれた選民のために、その期間を縮めてくださったのである。

13:21編集

そのとき、だれかがあなたがたに『見よ、ここにキリストがいる』、『見よ、あそこにいる』と言っても、それを信じるな。

13:22編集

にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、しるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう。

13:23編集

だから、気をつけていなさい。いっさいの事を、あなたがたに前もって言っておく。

13:24編集

その日には、この患難の後、日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ、

13:25編集

星は空から落ち、天体は揺り動かされるであろう。

13:26編集

そのとき、大いなる力と栄光とをもって、人の子が雲に乗って来るのを、人々は見るであろう。

13:27編集

そのとき、彼は御使たちをつかわして、地のはてから天のはてまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。

13:28編集

いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。

13:29編集

そのように、これらの事が起るのを見たならば、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。

13:30編集

よく聞いておきなさい。これらの事が、ことごとく起るまでは、この時代は滅びることがない。

13:31編集

天地は滅びるであろう。しかしわたしの言葉は滅びることがない。

13:32編集

その日、その時は、だれも知らない。天にいる御使たちも、また子も知らない、ただ父だけが知っておられる。

13:33編集

気をつけて、目をさましていなさい。その時がいつであるか、あなたがたにはわからないからである。

13:34編集

それはちょうど、旅に立つ人が家を出るに当り、その僕たちに、それぞれ仕事を割り当てて責任をもたせ、門番には目をさましておれと、命じるようなものである。

13:35編集

だから、目をさましていなさい。いつ、家の主人が帰って来るのか、夕方か、夜中か、にわとりの鳴くころか、明け方か、わからないからである。

13:36編集

あるいは急に帰ってきて、あなたがたの眠っているところを見つけるかも知れない。

13:37編集

目をさましていなさい。わたしがあなたがたに言うこの言葉は、すべての人々に言うのである」。

第14章編集

14:1編集

さて、過越と除酵との祭の二日前になった。祭司長たちや律法学者たちは、策略をもってイエスを捕えたうえ、なんとかして殺そうと計っていた。

14:2編集

彼らは、「祭の間はいけない。民衆が騒ぎを起すかも知れない」と言っていた。

14:3編集

イエスがベタニヤで、らい病人シモンの家にいて、食卓についておられたとき、ひとりの女が、非常に高価で純粋なナルドの香油が入れてある石膏のつぼを持ってきて、それをこわし、香油をイエスの頭に注ぎかけた。

14:4編集

すると、ある人々が憤って互に言った、「なんのために香油をこんなにむだにするのか。

14:5編集

この香油を三百デナリ以上にでも売って、貧しい人たちに施すことができたのに」。そして女をきびしくとがめた。

14:6編集

するとイエスは言われた、「するままにさせておきなさい。なぜ女を困らせるのか。わたしによい事をしてくれたのだ。

14:7編集

貧しい人たちはいつもあなたがたと一緒にいるから、したいときにはいつでも、よい事をしてやれる。しかし、わたしはあなたがたといつも一緒にいるわけではない。

14:8編集

この女はできる限りの事をしたのだ。すなわち、わたしのからだに油を注いで、あらかじめ葬りの用意をしてくれたのである。

14:9編集

よく聞きなさい。全世界のどこででも、福音が宣べ伝えられる所では、この女のした事も記念として語られるであろう」。

14:10編集

ときに、十二弟子のひとりイスカリオテのユダは、イエスを祭司長たちに引きわたそうとして、彼らの所へ行った。

14:11編集

彼らはこれを聞いて喜び、金を与えることを約束した。そこでユダは、どうかしてイエスを引きわたそうと、機会をねらっていた。

14:12編集

除酵祭の第一日、すなわち過越の小羊をほふる日に、弟子たちがイエスに尋ねた、「わたしたちは、過越の食事をなさる用意を、どこへ行ってしたらよいでしょうか」。

14:13編集

そこで、イエスはふたりの弟子を使いに出して言われた、「市内に行くと、水がめを持っている男に出会うであろう。その人について行きなさい。

14:14編集

そして、その人がはいって行く家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。

14:15編集

するとその主人は、席を整えて用意された二階の広間を見せてくれるから、そこにわたしたちのために用意をしなさい」。

14:16編集

弟子たちは出かけて市内に行って見ると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。

14:17編集

夕方になって、イエスは十二弟子と一緒にそこに行かれた。

14:18編集

そして、一同が席について食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたの中のひとりで、わたしと一緒に食事をしている者が、わたしを裏切ろうとしている」。

14:19編集

弟子たちは心配して、ひとりびとり「まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。

14:20編集

イエスは言われた、「十二人の中のひとりで、わたしと一緒に同じ鉢にパンをひたしている者が、それである。

14:21編集

たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」。

14:22編集

一同が食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「取れ、これはわたしのからだである」。

14:23編集

また杯を取り、感謝して彼らに与えられると、一同はその杯から飲んだ。

14:24編集

イエスはまた言われた、「これは、多くの人のために流すわたしの契約の血である。

14:25編集

あなたがたによく言っておく。神の国で新しく飲むその日までは、わたしは決して二度と、ぶどうの実から造ったものを飲むことをしない」。

14:26編集

彼らは、さんびを歌った後、オリブ山へ出かけて行った。

14:27編集

そのとき、イエスは弟子たちに言われた、「あなたがたは皆、わたしにつまずくであろう。『わたしは羊飼を打つ。そして、羊は散らされるであろう』と書いてあるからである。

14:28編集

しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう」。

14:29編集

するとペテロはイエスに言った、「たとい、みんなの者がつまずいても、わたしはつまずきません」。

14:30編集

イエスは言われた、「あなたによく言っておく。きょう、今夜、にわとりが二度鳴く前に、そう言うあなたが、三度わたしを知らないと言うだろう」。

14:31編集

ペテロは力をこめて言った、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません」。みんなの者もまた、同じようなことを言った。

14:32編集

さて、一同はゲツセマネという所にきた。そしてイエスは弟子たちに言われた、「わたしが祈っている間、ここにすわっていなさい」。

14:33編集

そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを一緒に連れて行かれたが、恐れおののき、また悩みはじめて、彼らに言われた、

14:34編集

「わたしは悲しみのあまり死ぬほどである。ここに待っていて、目をさましていなさい」。

14:35編集

そして少し進んで行き、地にひれ伏し、もしできることなら、この時を過ぎ去らせてくださるようにと祈りつづけ、そして言われた、

14:36編集

「アバ、父よ、あなたには、できないことはありません。どうか、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころのままになさってください」。

14:37編集

それから、きてごらんになると、弟子たちが眠っていたので、ペテロに言われた、「シモンよ、眠っているのか、ひと時も目をさましていることができなかったのか。

14:38編集

誘惑に陥らないように、目をさまして祈っていなさい。心は熱しているが、肉体が弱いのである」。

14:39編集

また離れて行って同じ言葉で祈られた。

14:40編集

またきてごらんになると、彼らはまだ眠っていた。その目が重くなっていたのである。そして、彼らはどうお答えしてよいか、わからなかった。

14:41編集

三度目にきて言われた、「まだ眠っているのか、休んでいるのか。もうそれでよかろう。時がきた。見よ、人の子は罪人らの手に渡されるのだ。

14:42編集

立て、さあ行こう。見よ、わたしを裏切る者が近づいてきた」。

14:43編集

そしてすぐ、イエスがまだ話しておられるうちに、十二弟子のひとりのユダが進みよってきた。また祭司長、律法学者、長老たちから送られた群衆も、剣と棒とを持って彼についてきた。

14:44編集

イエスを裏切る者は、あらかじめ彼らに合図をしておいた、「わたしの接吻する者が、その人だ。その人をつかまえて、まちがいなく引っぱって行け」。

14:45編集

彼は来るとすぐ、イエスに近寄り、「先生」と言って接吻した。

14:46編集

人々はイエスに手をかけてつかまえた。

14:47編集

すると、イエスのそばに立っていた者のひとりが、剣を抜いて大祭司の僕に切りかかり、その片耳を切り落した。

14:48編集

イエスは彼らにむかって言われた、「あなたがたは強盗にむかうように、剣や棒を持ってわたしを捕えにきたのか。

14:49編集

わたしは毎日あなたがたと一緒に宮にいて教えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし聖書の言葉は成就されねばならない」。

14:50編集

弟子たちは皆イエスを見捨てて逃げ去った。

14:51編集

ときに、ある若者が身に亜麻布をまとって、イエスのあとについて行ったが、人々が彼をつかまえようとしたので、

14:52編集

その亜麻布を捨てて、裸で逃げて行った。

14:53編集

それから、イエスを大祭司のところに連れて行くと、祭司長、長老、律法学者たちがみな集まってきた。

14:54編集

ペテロは遠くからイエスについて行って、大祭司の中庭まではいり込み、その下役どもにまじってすわり、火にあたっていた。

14:55編集

さて、祭司長たちと全議会とは、イエスを死刑にするために、イエスに不利な証拠を見つけようとしたが、得られなかった。

14:56編集

多くの者がイエスに対して偽証を立てたが、その証言が合わなかったからである。

14:57編集

ついに、ある人々が立ちあがり、イエスに対して偽証を立てて言った、

14:58編集

「わたしたちはこの人が『わたしは手で造ったこの神殿を打ちこわし、三日の後に手で造られない別の神殿を建てるのだ』と言うのを聞きました」。

14:59編集

しかし、このような証言も互に合わなかった。

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そこで大祭司が立ちあがって、まん中に進み、イエスに聞きただして言った、「何も答えないのか。これらの人々があなたに対して不利な証言を申し立てているが、どうなのか」。

14:61編集

しかし、イエスは黙っていて、何もお答えにならなかった。大祭司は再び聞きただして言った、「あなたは、ほむべき者の子、キリストであるか」。

14:62編集

イエスは言われた、「わたしがそれである。あなたがたは人の子が力ある者の右に座し、天の雲に乗って来るのを見るであろう」。

14:63編集

すると、大祭司はその衣を引き裂いて言った、「どうして、これ以上、証人の必要があろう。

14:64編集

あなたがたはこのけがし言を聞いた。あなたがたの意見はどうか」。すると、彼らは皆、イエスを死に当るものと断定した。

14:65編集

そして、ある者はイエスにつばきをかけ、目隠しをし、こぶしでたたいて、「言いあててみよ」と言いはじめた。また下役どもはイエスを引きとって、手のひらでたたいた。

14:66編集

ペテロは下で中庭にいたが、大祭司の女中のひとりがきて、

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ペテロが火にあたっているのを見ると、彼を見つめて、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言った。

14:68編集

するとペテロはそれを打ち消して、「わたしは知らない。あなたの言うことがなんの事か、わからない」と言って、庭口の方に出て行った。

14:69編集

ところが、先の女中が彼を見て、そばに立っていた人々に、またもや「この人はあの仲間のひとりです」と言いだした。

14:70編集

ペテロは再びそれを打ち消した。しばらくして、そばに立っていた人たちがまたペテロに言った、「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから」。

14:71編集

しかし、彼は、「あなたがたの話しているその人のことは何も知らない」と言い張って、激しく誓いはじめた。

14:72編集

するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。

第15章編集

15:1編集

夜が明けるとすぐ、祭司長たちは長老、律法学者たち、および全議会と協議をこらした末、イエスを縛って引き出し、ピラトに渡した。

15:2編集

ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお答えになった。

15:3編集

そこで祭司長たちは、イエスのことをいろいろと訴えた。

15:4編集

ピラトはもう一度イエスに尋ねた、「何も答えないのか。見よ、あなたに対してあんなにまで次々に訴えているではないか」。

15:5編集

しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。

15:6編集

さて、祭のたびごとに、ピラトは人々が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやることにしていた。

15:7編集

ここに、暴動を起し人殺しをしてつながれていた暴徒の中に、バラバという者がいた。

15:8編集

群衆が押しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと要求しはじめたので、

15:9編集

ピラトは彼らにむかって、「おまえたちはユダヤ人の王をゆるしてもらいたいのか」と言った。

15:10編集

それは、祭司長たちがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。

15:11編集

しかし祭司長たちは、バラバの方をゆるしてもらうように、群衆を煽動した。

15:12編集

そこでピラトはまた彼らに言った、「それでは、おまえたちがユダヤ人の王と呼んでいるあの人は、どうしたらよいか」。

15:13編集

彼らは、また叫んだ、「十字架につけよ」。

15:14編集

ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると、彼らは一そう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。

15:15編集

それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。

15:16編集

兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の内に連れて行き、全部隊を呼び集めた。

15:17編集

そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、

15:18編集

「ユダヤ人の王、ばんざい」と言って敬礼をしはじめた。

15:19編集

また、葦の棒でその頭をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて拝んだりした。

15:20編集

こうして、イエスを嘲弄したあげく、紫の衣をはぎとり、元の上着を着せた。それから、彼らはイエスを十字架につけるために引き出した。

15:21編集

そこへ、アレキサンデルとルポスとの父シモンというクレネ人が、郊外からきて通りかかったので、人々はイエスの十字架を無理に負わせた。

15:22編集

そしてイエスをゴルゴタ、その意味は、されこうべ、という所に連れて行った。

15:23編集

そしてイエスに、没薬をまぜたぶどう酒をさし出したが、お受けにならなかった。

15:24編集

それから、イエスを十字架につけた。そしてくじを引いて、だれが何を取るかを定めたうえ、イエスの着物を分けた。

15:25編集

イエスを十字架につけたのは、朝の九時ごろであった。

15:26編集

イエスの罪状書きには「ユダヤ人の王」と、しるしてあった。

15:27編集

また、イエスと共にふたりの強盗を、ひとりを右に、ひとりを左に、十字架につけた。〔

15:28編集

こうして「彼は罪人たちのひとりに数えられた」と書いてある言葉が成就したのである。〕

15:29編集

そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって言った、「ああ、神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ、

15:30編集

十字架からおりてきて自分を救え」。

15:31編集

祭司長たちも同じように、律法学者たちと一緒になって、かわるがわる嘲弄して言った、「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。

15:32編集

イスラエルの王キリスト、いま十字架からおりてみるがよい。それを見たら信じよう」。また、一緒に十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。

15:33編集

昼の十二時になると、全地は暗くなって、三時に及んだ。

15:34編集

そして三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。

15:35編集

すると、そばに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「そら、エリヤを呼んでいる」。

15:36編集

ひとりの人が走って行き、海綿に酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとして言った、「待て、エリヤが彼をおろしに来るかどうか、見ていよう」。

15:37編集

イエスは声高く叫んで、ついに息をひきとられた。

15:38編集

そのとき、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。

15:39編集

イエスにむかって立っていた百卒長は、このようにして息をひきとられたのを見て言った、「まことに、この人は神の子であった」。

15:40編集

また、遠くの方から見ている女たちもいた。その中には、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ、またサロメがいた。

15:41編集

彼らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに従って仕えた女たちであった。なおそのほか、イエスと共にエルサレムに上ってきた多くの女たちもいた。

15:42編集

さて、すでに夕がたになったが、その日は準備の日、すなわち安息日の前日であったので、

15:43編集

アリマタヤのヨセフが大胆にもピラトの所へ行き、イエスのからだの引取りかたを願った。彼は地位の高い議員であって、彼自身、神の国を待ち望んでいる人であった。

15:44編集

ピラトは、イエスがもはや死んでしまったのかと不審に思い、百卒長を呼んで、もう死んだのかと尋ねた。

15:45編集

そして、百卒長から確かめた上、死体をヨセフに渡した。

15:46編集

そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。

15:47編集

マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが納められた場所を見とどけた。

第16章編集

16:1編集

さて、安息日が終ったので、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとが、行ってイエスに塗るために、香料を買い求めた。

16:2編集

そして週の初めの日に、早朝、日の出のころ墓に行った。

16:3編集

そして、彼らは「だれが、わたしたちのために、墓の入口から石をころがしてくれるのでしょうか」と話し合っていた。

16:4編集

ところが、目をあげて見ると、石はすでにころがしてあった。この石は非常に大きかった。

16:5編集

墓の中にはいると、右手に真白な長い衣を着た若者がすわっているのを見て、非常に驚いた。

16:6編集

するとこの若者は言った、「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお納めした場所である。

16:7編集

今から弟子たちとペテロとの所へ行って、こう伝えなさい。イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて、あなたがたに言われたとおり、そこでお会いできるであろう、と」。

16:8編集

女たちはおののき恐れながら、墓から出て逃げ去った。そして、人には何も言わなかった。恐ろしかったからである。〔

16:9編集

週の初めの日の朝早く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤに御自身をあらわされた。イエスは以前に、この女から七つの悪霊を追い出されたことがある。

16:10編集

マリヤは、イエスと一緒にいた人々が泣き悲しんでいる所に行って、それを知らせた。

16:11編集

彼らは、イエスが生きておられる事と、彼女に御自身をあらわされた事とを聞いたが、信じなかった。

16:12編集

この後、そのうちのふたりが、いなかの方へ歩いていると、イエスはちがった姿で御自身をあらわされた。

16:13編集

このふたりも、ほかの人々の所に行って話したが、彼らはその話を信じなかった。

16:14編集

その後、イエスは十一弟子が食卓についているところに現れ、彼らの不信仰と、心のかたくななことをお責めになった。彼らは、よみがえられたイエスを見た人々の言うことを、信じなかったからである。

16:15編集

そして彼らに言われた、「全世界に出て行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えよ。

16:16編集

信じてバプテスマを受ける者は救われる。しかし、不信仰の者は罪に定められる。

16:17編集

信じる者には、このようなしるしが伴う。すなわち、彼らはわたしの名で悪霊を追い出し、新しい言葉を語り、

16:18編集

へびをつかむであろう。また、毒を飲んでも、決して害を受けない。病人に手をおけば、いやされる」。

16:19編集

主イエスは彼らに語り終ってから、天にあげられ、神の右にすわられた。

16:20編集

弟子たちは出て行って、至る所で福音を宣べ伝えた。主も彼らと共に働き、御言に伴うしるしをもって、その確かなことをお示しになった。〕