ハリー・S・トルーマンの第6回一般教書演説
演説
編集この第82議会は、米国史上の如何なる議会にも匹敵する重大任務に直面している。諸君が取る行動は、全世界の注目を集めるであろう。その行動は自由な人民にとって、自ら選んだ議員と自由な諸制度を通じて、己の生き方に対する恐るべき試練に対処する能力を測るものとなるであろう。
我々はこの試練に、愚劣にも賢明にも、対処できる。臆病にも勇敢にも、不面目にも立派にも、対処できる。
第82議会は、我々の偉大な伝統に相応しい方法で、この試練に対処するであろう。諸君の議論は真摯で、責任に満ち、建設的で[3]、適切であろう。これらの議論から、我々の前進に必要な重要決定が生じるであろう。
この重大時に、我が国が健全な状態にあることは喜ばしい。我々の民主的諸制度は正常かつ強固である。我が国では、かつてなく多数の男女が就業している。我々は、かつてなく多くのものを――実際、世界史上の如何なる国よりも遥かに多くのものを――産出し得る。
我々ならば、眼前に立ちはだかる大きな課題を成し得るに違いない。
我々は成功するであろうが、皆が己の役割を果たさねばならない。皆がこの偉大な共和国の市民として協力せねばならない。
我々が今日ここに集っている間にも、朝鮮では米兵が激闘を行っている。我々は、彼らの勇気、献身、武勲に敬意を表する。
米兵は国連同盟諸国と共に戦っているが、これは彼らが我々と同様に知っているからである。朝鮮での侵略が、世界を段階的に支配せんとするロシア共産独裁政権の企ての一環であるということを。
米兵は祖国から遠く離れた地で戦っているが、我々の生命と我々の自由のために戦っている。彼らは、今日ここに我々が集う権利――自由国家としての我が国を統治する権利――を守るために戦っているのである。
ソヴィエト=ロシアによる世界征服の脅威は、我々の自由を危険に曝し、人類の自由な精神が存続し得るような世界を危険に曝す。この脅威は、己の自由と国家の独立との獲得と維持に努める全ての人民を狙っている。
実際、我が国の立場は、世界中の友邦や同盟諸国の立場に大きく関わっている。彼らを狙う銃は、我々をも狙っている。脅威は全体の脅威であり、危険は共通の危険である。
全ての自由諸国は危険に曝されている。団結こそ、彼らの唯一の安全保障である。如何なる国も、自分だけ嵐から逃れようとしたところで、安全は得られない[4]。
自由諸国には、侵略の意図など微塵もない。我々が欲するのは、世界平和――全国家の平和――のみである。如何なる国の安全に対する脅威も、我々の計画には隠されていない。
我々はソヴィエト連邦が、国連憲章によって保証された安全保障の枠内で、共生する気があるものと期待した。だが残念ながら、事実はそうではなかったと言わざるを得ない。
ツァーリの帝国主義は、ソヴィエト連邦の支配者らのより野心的で、より狡猾で、より脅迫的な帝国主義に取って代わられた。
この新たな帝国主義は強力な軍隊を有している。何百万もの兵士を擁している。大規模な空軍と強力な潜水艦隊を有している。衛星諸国の兵士と装備を完全に支配してきた。統治下の人民と経済をいつでも動員できるようにしてきた。
ソヴィエト連邦の現在の支配者らは、自由諸国を破壊して全世界を支配するためにこうした力を行使しようとしていることを示した。
ソヴィエト帝国主義者には、破壊活動をする2つの手段がある。彼らは転覆や内からの革命という手段と、外からの侵略という手段を使用する。こうした攻撃手段の準備として、彼らは階級闘争と混乱を煽る。破壊活動を奨励する。有害な宣伝を行う。故意に経済発展を妨害しようとする。
彼らの企てが成功すれば、彼らは革命を煽る。これはチェコスロヴァキアや中国では成功し、ギリシャでは失敗した。転覆という手段が阻止され、かつ公然たる戦争に勝てると見れば、彼らは外からの侵略に転ずる。これは彼らが邪悪な代理戦争の際、傀儡国家の軍を大韓民国に送り込んだ際にしたことである。
自由世界の我々は、ソヴィエトの行動におけるこれらの手段の双方に対処する準備を整えねばならない。どちらをも無視してはならない。
自由世界には、これらの2つの侵略形態に対処する力と資源――ソ連独裁政権のそれよりも遥かに膨大な資源――がある。我々は、成熟した強い国民、大きな工業力、豊富な原料供給源を有する。そして何より、我々は自由を大事にする。我々の共通の理想は、我々の力の大部分である。理想とは、人類の進歩の推進力のことである。
自由諸国は、人間の尊厳と価値を信ずる。
我々は、全国家の独立を信ずる。
我々は、自由な独立国が法に基づく世界秩序の下で団結できると信ずる。我々は、国連において、そうした平和な世界の礎を築いた。
我々はそのような世界秩序が、現代の科学と産業の恩恵、より良い健康と教育を、より多くの食料と生活水準向上を世界中に広め得るし、広めねばならないと信ずる。
これらの理想は、ロシア共産主義が決して命じ得ない力と活力を、我々の大義に与える。
しかし、自由諸国は理想以上のものによって結束する。それは、自己利益と自己保存という紐帯によって結束する真の共同体でもある。彼らが離散すれば、人類の自由にとって致命的結果となろう。
我が国の安全は、他の自由諸国のそれと大いに関係している。彼らが我々の支援を必要とするのと同様、我々も彼らの支援を必要とする。ソヴィエト連邦が自国と国境を接する自由諸国の天然資源や人的資源をその軍事機構のために利用できるようになれば、我が国の安全は大いに損なわれるであろう。
西欧がソヴィエト=ロシアの手に落ちれば、ソヴィエトの石炭供給量は2倍に、鉄鋼供給量は3倍になるであろう。アジアとアフリカの自由諸国がソヴィエト=ロシアの手に落ちれば、我々は原子力の基たるウラニウムを含む、最重要原料の供給源の多くを失うであろう。そして、欧州とアジアの自由諸国の人的資源がソヴィエトの支配下に入れば、我々は決して己と同等となることを望まなかった軍事力と対峙することになろう。
こうした状況の下、ソヴィエト連邦は戦闘に頼ることなく、経済力や軍事力の優位性のみによって、己の要求を世界に強制できた。ソヴィエト連邦は、世界の支配を確保するために合衆国を攻撃する必要はない。我々を孤立させ、全ての同盟諸国を呑み込むことによって、その目的を達し得る。従って、たとえ我々が大変に臆病だったとしても、その可能性を私は信じない――だが、これだけは言っておきたい。たとえ我々が己の理想を捨てるほどに臆病だったとしても、我々が自由主義陣営から脱退すれば、悲惨な結果を招くであろう[5]。
我々はこの陣営の最も強力な一員であり、特別な責任を負う。我々は、自由への試練に対処し、独立諸国の権利保護に貢献するに当たり、指導力を発揮せねばならない。
この国には、この試練に対処するための実際的かつ現実的な行動計画がある。
第1に、我々は経済援助が有効であれば、これを供与せねばならない。クレムリンによる転覆を阻止する最善の方法は、社会の不正と経済の混乱を根絶することである。仕事、家庭、及び将来に対する希望を持つ人々は、地下にいるクレムリンの手先から身を守るであろう。我が国の経済援助計画は、共産主義をはね退ける上で大いに役立った。
欧州では、マーシャル・プランは目覚ましい成果を挙げた。欧州復興が進行するにつれ、クレムリンの手先がイタリアとフランスで主導してきたストライキは失敗に終わった。西欧中の共産党が、選挙で大敗を喫した。
マーシャル・プラン援助の受益国は、懸命な努力を通じて、自国の生産力を――多くの場合、史上最高水準にまで――拡大できた。今やこうした生産力なくしては、彼らが己を防衛することは全くできまい。現在彼らには、侵略に対する強い共同防衛を構築するためにこの生産力を使う用意がある。
我々は、欧州諸国への経済援助を続ける必要がある。この援助は今や、特に彼らの防衛力構築に結び付かねばならない。
世界の他の地域に対する我々の経済援助は、経済発展へとより広汎に向けられる必要がある。近東、アフリカ、及びアジアにおいて、苦痛、貧困及び飢餓から脱しようとしている人々を助けるために最善を尽くさねばならない。また、この半球における良き隣人の経済成長を支援し続けねばならない。これらの行動は、自由世界の力を増大させる。これらは多くの人々に対し、将来への真の利害と己の自由を守る理由とを与える。これらは、彼らが必要とする物資と我々が必要とする原料の増産を意味する。
第2に、我々は自衛を希望する諸国への軍事援助を継続する必要がある。
我々の共通の防衛活動の核心は、北大西洋の共同体である。欧州の防衛は、自由世界全体――我が国を含む――の防衛の基礎である。欧州は世界でも合衆国に次いで大きい工場である。また、米国民の多くに共有される偉大な宗教的信条の故郷でもある。その信条は現在、無神論的共産主義の波に脅かされている。
戦略的にも、経済的にも、そして道義的にも、欧州の防衛は、我が国自身の防衛の一部を成す。だからこそ我々は欧州諸国と共に北大西洋条約に参加し、彼らとの協力を誓ったのである。
最近、欧州諸国に自衛の意志があるのか否かに関する多くの議論があった。彼らの行動は、この問いに対する回答である。
北大西洋条約加盟諸国には、一般軍事訓練という厳格な制度がある。一部の国は最近、兵役期間を増やした。全加盟国が、訓練内容を改善する措置を取った。軍隊は、必要な武器と装備がこれら諸国や我が国の工場から供給され得るのと同じくらい迅速に訓練され増強されている。北大西洋条約加盟諸国は協力して、米軍を上回る規模の軍隊を構築している。
我が国を含む北大西洋条約加盟国のいずれも、未だ充分な備えができていない。だが、着実に進歩している。我々は共同で防衛計画を立案した。 計画立案には米軍指導者も参加しており、計画は堅固なものであり、しかも我々ならば実現可能であるとの共通認識を持っている。
これらの計画を実施するため、我々は先週、米国最高の軍指揮官の1人、ドワイト・D・アイゼンハワー元帥を欧州に派遣した。
アイゼンハウアー元帥は、在独米軍を含む北大西洋条約諸国の連合軍の司令官となるべく、欧州に赴いたのである。
欧州人民はアイゼンハウアー元帥を信頼しており、同盟諸国の戦闘部隊を纏め上げる能力が元帥にはあると知っている。彼の任務は、我が国の安全保障にとって極めて重要である。我々は皆、彼を後押しし、全力で支援すべきである。
我々の軍需生産が拡大するにつれ、欧州の協力国に兵器と装備を提供してその軍事力を強化することが、我々の任務の1つとなるであろう。
我々の軍事援助計画は、自国の自由を守ろうとしている近東[6]・極東諸国にも及んでいる。ソヴィエト共産主義は、これら諸国を植民地化し、その人民を新たな征服戦争における砲弾の餌食として利用しようとしている。我々は、これら諸国の人民が自由な民として平和を謳歌するよう願っている。
我が国は常に、アジア人民の自由の側に立ってきた。昔から、アジア人民の自由の側に立った。我が国の歴史は、このことを示している。我々は、フィリピンでそれを示した。インドネシア、インド、及び中国との関係において、それを示した。我々は、日本国民が自由主義陣営の一員に復するよう願っている。
自由諸国の独立という原則を守るべく、我々は国連の下で、極東で武器を取った。我々は、共産侵略軍が朝鮮を奴隷国家にせぬよう戦っている。
朝鮮は、世界にとって大きな意義を有している。だから、国連を通じて行動する自由諸国は、共に侵略に対して戦っているのである。
歴史を顧みれば、我々はこのことの重要性を最も良く理解するであろう。もし民主主義諸国が1931年の満州侵攻[7]や1935年のエチオピア攻撃[8]や1938年のオーストリア占領[9]に立ち向かっていたならば、もし民主主義諸国がこれらの事件の際、国連が今回朝鮮で行ったように共同で侵略に対抗していたならば、現代史は全く違うものになっていたであろう。
我々が朝鮮で戦っている諸原則は真っ当かつ正当なものである。これらは集団安全保障の、そして自由諸国の将来の基盤である。朝鮮は、侵略の苦悩を経験している国というだけではなく、象徴でもある。同地は、抑圧と隷属に対する世界の公正と正義を象徴している。自由世界はこれら諸原則を常に支持せねばならない――そして我々は、自由世界と協力する。
我々の計画の第3の部分として、我々は国際紛争の平和的解決のために取り組み続ける。我々は国連を支持し、国連憲章に定められた国際協力の大原則に忠実であり続ける。
我々はこれまでと同様、今後もソヴィエト連邦との尊厳ある和解について交渉する所存である。だが、我々は宥和には関与しない。
ソヴィエトの支配者らは、我々の側に正義と同様に力がなければならないことを明らかにした[10]。我々が力を付ければ――そして付けつつあるが――、ソヴィエトの支配者らは事実を直視し、世界支配計画を放棄するかもしれない。
それは我々が希望するところであり、実現しようとしていることである。これこそ、平和への唯一の現実的な道である。
これらは、我が国が自由主義陣営の一員として取らねばならない方針の主要な要素である。これらは、自国の安全を維持し、平和な世界の創造に貢献するためにせねばならないことである。だが、我々が自国の軍事力を増強して始めて、これらは成功する。
国内では、為すべき大仕事がある。我々は軍事力を増強しつつある――しかも急速に。必要とあらば、全面的戦時動員を準備できる。そして、必要に応じて要求される如何なる取り組みをも維持できるような、強く成長する経済を構築しつつある。
我々は自国の陸海空軍を、350万人近い男女から成る現役軍にしようとしている。我々は遥かに迅速に現役軍を増大できるよう、予備軍の訓練と訓練施設の増設を進めている。
我々は、そうした軍隊が必要とする全ての兵器と装備を生産している。更に、同盟諸国向けの兵器や自国の予備としての兵器をも製造する。加えて、全面戦争に必要な兵器や物資を迅速に生産する能力を構築する。
幸いにも、我々は莫大な工業生産力の故に、また先の大戦以来有している装備の故に、首尾良く開始できる。例えば、多くの戦闘艦は「予備艦隊」から現役勤務に戻されつつあり、他の多くは迅速に就役できる。我が国には武器弾薬が豊富にあり、武器製造に精通した何千もの労働者がいる。
だが多くの場合、兵器の在庫は少ない。あったとしても、手近な兵器は最新ではない。我々は、顕著な技術的進歩を遂げた。新型ジェット機[11]と強力な新型戦車を開発した。最新鋭の兵器を開発し、迅速に生産できるよう注力している。
こうした生産推進運動は第二次世界大戦中に実施されたそれに比べると選択的ではあるが、急を要するものであり、かつ真剣な取り組みである。それは壮大な計画であり、経費も掛かる。
具体例を2つ挙げよう。我々の現在の計画は、航空機産業を拡大し、もって最新鋭の軍用機を年間5万機生産する能力を獲得するよう求めている。我々は、年35,000両の戦車を生産する能力を備えつつある。我々は現在、ここまで多くの飛行機や戦車を発注してはいないし、その必要に迫られないよう望んではいるが、必要に応じて生産できる態勢を整えようとしているのである。
我々が現在生産している飛行機は、先の大戦中に有していた飛行機よりも遥かに大きく、高性能で、高価である。
我々は、B-17が巨大な飛行機であり、同機が搭載した大型爆弾が巨大な積み荷だと考えてきた。だが、B-36はこれらの大型爆弾を5発搭載して運搬でき、しかも航続距離は5倍に伸びた。無論、B-36はB-17より遥かに構造が複雑で、遥かに高額である。B-17は1機当たり275,000ドルであるが、B-36は現在、1機当たり350万ドル掛かる。
我々が行っているのは世界最高かつ最新の軍備を米軍に提供することであるのを忘れないで欲しい。
この種の防衛生産計画は、2つの部分からなる。
第1の部分は、防衛生産をできるだけ速く行うことである。我々は工場を変革し、材料を防衛生産に振り向けねばならない。これは、銅、アルミニウム、ゴムその他の重要な材料を民間が利用する自由の大幅制限を意味する。これは、種々の消費財の不足を意味する[12]。
第2の部分は、生産力を増強し、米国経済を長期に亙って強く保つことである。共産主義者の侵略がいつまで世界を脅かすかは判らない。
増産によってのみ、我々は将来における無期限の準備という負担に耐え得る。これは、発電所と製鉄所の建設、綿花の栽培、銅の採掘、その他多方面での生産力増強をせねばならないことを意味する。
本会期中に、議会は動員事業の全ての面に影響を及ぼす法律の制定を検討する必要がある。立法を要する主要課題は、以下の通りである。
第1に、軍事力増強のための予算。
第2に、選抜徴兵法の拡充・見直し。
第3に、自由世界を強化するための軍事的・経済的援助。
第4に、生産を拡大し、価格、賃金、及び地代を安定させる権限の見直し・拡充。
第5に、防衛活動に必要とされる農産物の増産に貢献する農業法制の改正。
第6に、安定した労使関係の提供に貢献し、かつこの非常事態にあって安定生産を確保するための、労働法制の改正。
第7に、防衛労働者への住宅供給と職業訓練、及び全ての国内人的資源の充分な活用。
第8に、防衛活動に不可欠な、医師、看護婦その他の訓練された医療関係者を増員するための措置。
第9に、 小中学校における切迫した要求を満たすための、各州への援助。我々の計画の一部は、しばし延期されねばならない。だが我々は、今後の危機的時代にあって児童らが有益な市民として育成されるよう、最善を尽くさねばならない。
第10に、防衛活動費を賄うための大幅増税。
これらの課題については、経済報告と予算教書にて詳しく論ずる。更に私は、この会期で必要とされる詳細な立法勧告を含んでいる特別教書を議会に送付する。
今後数ヶ月間、政府は急を要する活動――軍需物資の調達、原子力・電力開発のような――を優先せねばならない。防衛以外の活動においては、政府は厳しい節約を実践せねばならない。平時における施策の多くは、削減または延期されねばならない。
だが、こうした長期的防衛活動において、我々は強い経済と健全な民主社会を維持するために必要な措置を怠ってはならない。
故に議会は、我が国が長期に亙って必要とする措置に、継続的に配慮せねばならない。また、状況が許す限り迅速に、そうした法律を制定せねばならない。
1つだけ例を挙げると――我々は、社会保険制度を完成する事業を継続し、完了する必要がある。依然として、失業保険と老齢保険を改善する必要がある。依然として、病気による所得損失に対する保険や、現代医療に掛かる高額な費用に対する保険を提供する必要がある。
何より我々は、自国民の自由こそが己の強さの礎であることを思い出さねばならない。民主主義的理想の完全な実現に向けた努力を続けねばならない。自国における言論の自由と信教の自由を守らねばならない。全国民に対する平等の権利と機会均等を保証せねばならない。
今年、自由の防衛に乗り出すに当たり、現在の取り組みの何たるかに留意しよう。
世界を乱してきた侵略の脅威に対処すべく、我々は他の自由諸国と協力して兵力を増強している。自由諸国の力は、平和に対する世界最高の希望である。
こうした重要な時期だからこそ、議会には結束を求めたい。
私の意図を誤解しないで欲しい。私は全会一致を求めたり期待したりはしていない。私は、議論の中断を求めてはいない。議論によってのみ、我々は賢明な、そして米国民の要望を反映する決定に至ることができる。我が国に独裁者は存在しないし、今後も決して存在しまい。
私が結束を要請するとき、私が真に求めているのは全議員の責任感である。諸課題については討議しよう。だが、皆が己の言動に責任を持つようにしよう。有害な批判と建設的な批判の間には明確な違いがある。私は確信する。もし我々が個人として真に責任を持つならば、我々は1つの政府として結束し得ると。
諸課題を注視し、皆が信ずるもののために取り組もう。
1人ひとりが、政党や私益よりも国家を重視するようにしよう。
私は第二次世界大戦中に上院議員となる栄誉に浴し、二大政党制の活力を損ねることなく、目的と努力の一致というものが議会に存在し得るということを経験から知った。
米国民として皆で協力しよう。人類の自由を信ずる世界中の人民と協力しよう。
平和は、我々にとって大切である。それは、我々が全知全能を傾けて得ようとしている生き方である。だが平和より大切なのは、自由と正義である。もし戦わねばならないのであれば、自国の自由を守り、正義の崩壊を防ぐために、我々は戦う。
これらは、我々の命に意義を与えるものであり、また我々が己よりも偉大だと考えているものである。
平和、自由、正義――これこそ我々の大義である。我々は、己の全ての行動が神意に沿うものとなるよう神の導きを求めつつ、決然として謙虚にこの大義を追求する所存である。
訳註
編集- ↑ アルバン・W・バークリー(任1949年 - 1953年)。
- ↑ サミュエル・T・レイバーン(任1949年 - 1953年)。
- ↑ 原文は「constructive」。『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻』は、この語を訳していない。
- ↑ 原文は「No one nation can find protection in a selfish search for a safe haven from the storm」。逐語訳をするならば、「如何なる1国も、嵐からの安全な避難所のための利己的捜索によって保護を見出すことはできない」。
- ↑ 原文は「Therefore, even if we were craven enough I do not believe we could be--but, I say, even if we were craven enough to abandon our ideals, it would be disastrous for us to withdraw from the community of free nations」。『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻』は、「したがって、たとえわれわれがその理念を捨てるほどの臆病者であったとしても、自由主義国家の共同体から身を引くことは悲惨な事態を招くであろう」としており、太字の部分を訳していない。
- ↑ 原文は「Near East」。『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻』は「中東」としているが、中東を指す英語は「Middle East」である。
- ↑ 満州事変を指す。大日本帝国が中華民国東北部を制圧し、1932年に満州国が成立した。
- ↑ 第二次エチオピア戦争を指す。イタリアが勝利し、1936年にイタリア領東アフリカが成立した。
- ↑ 独墺合邦(アンシュルス)を指す。ナチス・ドイツが実施。
- ↑ 原文は「The Soviet rulers have made it clear that we must have strength as well as right on our side」。『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻』は「ソ連の支配者達に対して、われわれの側に正義と同様に軍事力がなければならないことを明らかにした」としている。「The Soviet rulers」は動作の主体なのであって、「The Soviet rulers」に対して明らかにした訳ではない。
- ↑ 原文は「jet planes」。『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻』は「ロケット推進機」としている。
- ↑ 原文は「It means shortages in various consumer goods」。『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻』は、この1文を訳していない。
- 底本
- トルーマン図書館内資料
- 藤本一美、濱賀祐子、末次俊之『資料:戦後米国大統領の「一般教書」 第1巻 「ルーズベルト、トルーマン、アイゼンハワー」1945年~1961年』 大空社、2006年、ISBN 4-283-00451-0
- 訳者
- 初版投稿者(利用者:Lombroso)
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