聖使徒イアコフの公書

第三章 編集

 兄弟けいていよ、おほくのものなかれ、我等われらさばきけんことさらきびしきをればなり。

 けだし我等われらみなおほあやまちす。ひとことばあやまちなくば、まつたひとにして、其全體そのぜんたいにもくつわくるをるなり。

 よ、うま我等われらしたがはんために、我等われらくつわ其口そのくちきて、其全體そのぜんたいぎょす。

 よ、またふねおほいなるものにして、かつはげしきかぜはるといへどもちひさかぢもつて、舵師かぢとりのぞところ運轉うんてんせらる。

 くのごとしたちひさたいなりといへどもおほいなるをもつほこる。よ、わづかなるものもやすことなんおほき。

 したまたなり、不義ふぎかざりなり、した百體ひゃくたいうちりて、全體ぜんたいけがし、一生いつせい範圍はんゐもやして、おのれ地獄ゲエンナよりもやさる。

 けだしおよそ禽獸きんじう昆蟲こんちゅう鱗介りんかいるゐせいせらる、かつ人類じんるゐせいせられたり。

 たゞしたは、ひとこれせいするなし、おさがたあくにして、どく滿つるものなり。

 我等われらこれもつかみおよちゝ祝讚しゅくさんし、またこれもつかみせうしたがひてつくられたる人人ひとびとのろふ。

一〇 ひとつくちより祝讚しゅくさんのろひとはづ、兄弟けいていよ、くのごとことあるべからず。

一一 あにいづみひとつあなよりあまおよにがみづいだすか。

一二 兄弟けいていよ、無花果いちじく橄欖かんらんむすび、あるひ葡萄ぶだう無花果いちじくむすぶをんや。くのごとまたひとついづみしほはゆおよあまみづいだあたはず。

一三 なんぢうち智慧ちゑおよ見識けんしきあるものたれぞ、おこなひりて、なる温柔をんじうもつて、そのところあらはすべし。

一四 しかれどもなんぢこゝろうちにが媢嫉ねたみ忿爭あらそひとをいだかば、ほこなかれ、眞實しんじつたいしていつはなかれ。

一五 智慧ちゑうへよりくだるにあらず、すなはちぞくし、れいぞくし、魔鬼まきぞくするものなり。

一六 けだし媢嫉ねたみ忿爭あらそひところには、みだれおよそしきことるなり。

一七 うへよりする智慧ちゑ第一だいいち潔淨けつじやうつぎ和平わへい温良をんりやう柔順じうじゅんにして、矜恤あはれみおよて、偏視へんしせず、僞善ぎぜんならず。

一八 和平わへいおこなものに、和平わへいもつかる。

第四章 編集

 なんぢうち戰鬪たゝかひ爭競あらそひとはいづこよりするか、こゝより、すなはちなんぢ百體ひゃくたいうちたゝか諸慾しょよくよりするにあらずや。

 なんぢむさぼれども、ず、ころねためども、およあたはず、あらそたゝかへども、ず、もとめざるがゆゑなり。

 もとむれども、けず、なんぢよくためつひやさんとして、みだりもとむるがゆゑなり。

 姦淫かんいん男女なんにょよ、なんぢは、ともたるは、かみたいしてあだたるをらざるか、ゆゑともらんとほつするものは、かみあだるなり。

 なんぢあるひ聖書せいしょところむなしとおもふか、いはく、我等われらうちしんは、あいしてねたみいたると、

 しかれどもさらおほいなる恩寵おんちょうたまふ、ゆゑいはく、かみほこものてきし、へりくだもの恩寵おんちょうたまふと。

 こゝもつなんぢかみふくし、惡魔あくまてきせよ、しからばかれなんぢよりのがれん。

 かみちかづけ、しからばかれなんぢちかづかん。罪人ざいにんよ、なんぢきよくせよ、二心ふたごゝろものよ、なんぢこゝろいさぎよくせよ。

 くるしめ、かなしめ、け、なんぢわらひかなしみに、よろこびうれひへんずべし。

一〇 しゅまへみづかひくくせよ、しからばかれなんぢたかくせん。

一一 兄弟けいていよ、あひそしなかれ、其兄弟そのけいていそしり、あるひ其兄弟そのけいていするものは、律法りつぱふそしり、また律法りつぱふするなり、なんぢ律法りつぱふせば、律法りつぱふおこなものあらず、すなはち審判者しんぱんしゃなり。

一二 立法者りつぱふしゃおよ審判者しんぱんしゃすくほろぼものひとりなり、なんぢ他人たにんするものたれぞ。

一三 いまけ、なんぢ今日こんにちあるひ明日みやうにち我等われらそれがしまちき、一年いちねん彼處かしこり、貿易ばうえきしてんとものよ、

一四 なんぢ明日みやうにち如何いかにならんをらず、けだしなんぢ生命いのちなにぞ、しばらあらはれてつひゆるきりなり。

一五 なんぢこれへてふべし、しゅむねかなひ、また我等われらきば、これあるひかれさんと。

一六 なんぢおごりりてたかぶる、およくのごと高慢たかぶりあくなり。

一七 ゆゑぜんおこなふをりて、これおこなはざるものつみあり。

第五章 編集

 いまけ、めるものよ、なんぢのぞところ苦難くなんためさけべ。

 なんぢたからち、なんぢころもしみくひ、

 なんぢ金銀きんぎんびたり、其銹そのさびしょうして、なんぢめ、かつごとなんぢにくまん、なんぢすゑためたからめり。

 よ、なんぢりし工人はたらきびとなんぢきふせざるあたひび、かつりしもの呼聲よびこゑしゅ「サワオフ」のみゝいたれり。

 なんぢりておごたのしめり、なんぢこゝろやしなひしこと、屠宰ほふりそなふるがごとし。

 なんぢ義者ぎしゃつみさだめて、これころせり、かれなんぢこばまざりき。

 兄弟けいていよ、つねしのびて、しゅのぞむにおよべ。よ、農夫のうふたふとさんちて、これためひさしくしのび、前後ぜんごあめるにおよぶ。

 なんぢつねしのび、なんぢこゝろかたくせよ、けだししゅのぞむことちかづけり。

 兄弟けいていよ、あひうらなかれ、おそらくはつみさだめられん、よ、審判者しんぱんしゃもんまへつ。

一〇 兄弟けいていよ、しゅりてひししょ預言者よげんしゃもつて、苦難くなん恒忍ごうにんとののりとせよ。

一一 よ、我等われら忍耐にんたいせしものさいはひなりとす。なんぢかつてイオフの忍耐にんたいき、かつしゅ如何いかこれへしをたり、けだししゅ至仁しじんにして矜恤きょうじゅつなり。

一二 兄弟けいていよ、しゅとしてちかひはつするなかれ、あるひてんもつて、あるひもつて、あるひ他物たぶつもつちかなかれ、なんぢたゞもつし、もつすべし、おそらくはつみおちいらん。

一三 なんぢうちくるしむものあらば、祈禱きたうすべし、たのしむものあらば、聖詠せいえいうたふべし。

一四 なんぢうちものあらば、教會けうくわい長老等ちやうらうらまねくべし、彼等かれらしゅりて、かれあぶらけて、かれため祈禱きたうすべし。

一五 しん祈禱きたうめるものすくひ、しゅかれおこさん、かれつみおこなひしならば、ゆるされん。

一六 なんぢたがひおのれあやまちみとめ、またたがひいのれ、いやされんためなり、けだし義者ぎしゃ熱切ねつせつなる祈禱きたうおほくのちからあり。

一七 イリヤは我等われら同情どうじやうひとなりしが、あめふらざらんことをせついのりたれば、あめふらずして三年さんねん六月ろくげつたり。

一八 またいのりたれば、てんあめあたへ、其産そのさんしやうぜり。

一九 兄弟けいていよ、なんぢうち眞實しんじつみちよりまよへるものありて、たれこれたゞしきにかへらしめば、

二〇 るべし、罪人ざいにんそのまよへるみちよりかへらしめしものは、たましひよりすくひ、おほくのつみおほはん。