て放ハナちたり(自由の身にしたり)。
§33(01:20:08)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
頭カシラと領エリとの譬タトヘ
孛端察兒ボドンチヤルは、不忽 合塔吉ブク カタギ 兄アニの後シリヘより隨シタガひて、馬ウマを驅カりて行ユく行ユく言イはく「兄アニ、兄アニ。身ミに頭カシラあり衣コロモに領エリある善ヨし」と云へり。その兄アニ 不忽 合塔吉ブク カタギは、その言コトを何ナニとも爲ナさ(思は)ざりき。
§34(01:21:02)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
又マタその言コトを言イへども、その兄アニは何ナニとも爲ナさず、その答コタヘは聲コヱせざりき。孛端察兒ボドンチヤル 行ユきて、又マタその言コトを言イへり。その言コトにつき、その兄アニ 言イはく「先程サキホドよりそれそれ何ナニの言コトをか言へる、汝」と云へり。
§35(01:21:07)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
襲オソひ掠カスむる議ハカり合ひ
それより孛端察兒ボドンチヤル 言イはく「只今タヾイマの統格黎克トンゲリク 小河ヲガハに居ヲる民タミは、大オホき小チヒサき惡アシき好ヨき頭 蹄カシラ ヒヅメ(上下)なく齊等ヒトシナミなり。容易ヤスキき民タミなり。我等ワレラは彼等カレラを襲オソはん」と云イへり。
§36(01:22:01)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
それよりその兄アニ 言イはく「諾ウベ。(蒙語者︀ヂエ、唯とも諾とも善しとも然りとも譯すべし。)然シカあらば、家イヘに到イタりて、兄弟アニオトヽとも議ハカり合アひて彼カの民タミを襲オソはん」と云イひ合アひて、
§37(01:22:05)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
家イヘに到イタると、兄弟アニオトヽども談カタり合アひて馬ウマに乘ノれり。(蒙語抹哩剌 罷モリラ バイ。抹哩剌の本義は乘馬なれども、馬に乘りて征伐するを云ふ。以下は出馬 出征など譯せり。)その孛端察兒ボドンチヤルを先驅サキガケに奔ハシらせたり。
§38(01:22:08)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年)
孕ハラめる婦人ヲミナの擒トリコ
孛端察兒ボドンチヤルは、先驅サキガケに奔ハシりて、孕ハラめる婦人ヲミナを拏トラへて、「何姓ナニウヂの人ぞ、汝ナンヂ」と問トへり。その婦人ヲミナ 言イはく「札兒赤兀惕ヂヤルチウト(名)阿當罕アダンカン