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をくらし申にて、次第困窮のなをり申事御見付、是に隨て農工商の者共も程々にかへり見て、不益のふるまひを停止、段々ケ樣に成行は、おのづから我家も軍役をのみたしなみ、全盛なる物好もならず、つゞまやかに御代も治り可申と被量か、又は御軍用の爲に米にて多く御藏に被差置度、依之金渡被仰付候歟、此二ツと奉存候、乍憚右の御謀も幷を立越候御機乍恐奉感候、然ども奧に申上候要門大乘の眼より奉觀時は、かの慮知思辨より出る御方便全平には不參候、縱ば滿月の光のごとく、至極照かゞやきても日の光には不及が如く、しかも月には滿缺有之、一方よければ片片にあしき方御座候、此一條乍恐とくと御感味可遊候、たとへ御家人衆に二三年の內に困窮もなをり、いや共に武機をもたしなみ申時に至りて、底意より眞服して御身に成候ものと賴母敷被思召候哉、御威光撓付られ恐聞の上にて直り候得ば、內に反て氣さし含候事明に御座候、縱ば作り木を好候者の異形に實木を曲げ、技を撓、土をはせ抔して見事に作なし、是を樂の最上とするが如く、聞心の樂にて陰體にして眞に草木樂にはあふるゝ枝を切、或は指南して陽氣の延やか成を育て、勢の長ずるを樂の最上とするは本心の樂、身の養生に成りて、陽體にして登する類皆是に外ならず、何も手前の陽氣のかゝる事を不知にて御座候、扨御藏に米をたくはへ被遊候て、無上の米も直段上り、萬民の難儀に罷成候、御米より大切の士民困候得ば、御軍用には猶不成候、日本の米を日本の人喰候へば、御貯被遊候も不遊候も同じ事に參り申候、人間の喰には限御座候て、亂國にても勝れて多食事仕ものにても無御座候、只士民の眞服が御軍用第一にて御座候、武門の小乘と大乘とを御見分可遊候

右の品々御感德の上、御用捨の二ツを御治定可遊事に御座候、誠や天に口なし、人を以いはしむるにて御座候へば、衆人の口は天の口と可思召

上 書 之 外

山 下 幸 內 言


神儒佛はなれて外に御影なく

いつまでやみのありてはつべき