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でない、何等の人なる乎を實言せよ、予念ふに時に窮措大を以て免るるを獲たる者があり、措大を以て立ろに斃るる者が有るを以て敢て實を吐かず、ことばを飾りて以て吿げた。復た諸婦子を指してその誰なる乎を問ふたので、吿ぐるに實を以てした。紅衣の人曰く、明日王爺〈統帥の皇族〉命を下して刀を封ぜん、〈殺掠を禁ずるの意〉汝等生くることを得むと。隨人に命じて衣裳幾件及び金一錠を交付せしめ、且つ問ふて曰く、汝等幾日食はざりしと。予答ふるに五日を以てした。命ずらく我について來れと、予は婦と且つ信じ且つ疑ひ而も敢て行かない譯にいかなかつた。一宅に至れば蓄ふる所甚だ豐富であつて魚米充盈してゐた。一婦人に向ふて曰く、儞好々ニーハオ的此の四人を待遇せよと、予と別れ去つた。時に日旣に暮れた。予が內弟〈妻の弟〉卒の爲に劫め去られその存亡を知ることが出來ないで婦は特に之をいたんでゐた。少時しばらくあつて老嫗魚飯を搬出して予等に食はしめた。該宅は洪の居と遠くないので、予はその魚飯を取て予が兄に食はしめたのであつたが、兄の喉は最早のむことが出來ずして、數箸にして止んだ。予は兄の爲に髮を拭き血を洗ひつつ、心