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一緖に皆積薪の間に伏し、血を以て體に塗り、糞を以て髮を綴り、煙灰すゝを以て面にり、形宛がら鬼蜮きよく〈蜮魊に通ず鬼と同じ〉の如くにして鑒別するに只だ聲を以てするのみであつた。予は衆婦に乞ひて草底に入ることを得て衆婦は相擁してその上に伏した。予は氣を閉ぢて敢て動かず幾んど悶絕せむとするとき、婦は竹筒を以て予が口に授け、その口を啣みてその端を上に出さしめ、氣正に達して僅かに死せざるを得た。戶外には一卒がゐて一時に二人を手殺した。而かもその事が甚だ怪しく筆も能く載することが出來ないのである。草中の諸婦戰慄せざるはなかつた。忽ち哀聲大いに擧れば兵已に室に入り復た大步して出で去つて、旋顧めぐりかへりみることをしなかつた。天漸くれたれば諸婦予を起して始めて出でしめたのであつたが、草中に流汗雨の如くであつた。夕に至りて復た婦と共に予が宅に歸つたのであつたが、洪老洪嫗共に內にゐた。伯兄も亦來りて云ふやう、是の日劫かされて負擔し去られ、つぐなふに千錢を以てしたるに、乃ち令旗〈保護の命令旗〉を附して放置せられたが、途中亂屍山疊し血流れて渠をなせりと。又た聞く滿將王爺なる