此くの若く其ロを啓かず。
三三其卑賤に居る時、彼に於ける裁判は行はれたり。然れども其來歷は孰か能く之を解かん、蓋彼の生命は地より取らると。
三四寺人フィリップに謂へり、請ひ問ふ、預言者の此を言ふは、誰を指す、己を指すか、抑他人を指すか。
三五フィリップ其ロを啓き、此の書より始めて、彼にイイススを福音せり。
三六路を行く時、彼等は水の有る處に來れり、寺人曰へり、視よ、水あり、我が洗を受くるに何の礙あるか。
三七フィリップ彼に謂へり、爾若し全き心を以て信ぜば、可なり。彼答へて曰へり、我イイススハリストスが神の子たるを信ず。
三八乃命じて、車を止めしめ、フィリップと寺人と共に水に下り、フィリップは彼に洗を授けたり。
三九彼等が水より上りし時、聖神は寺人に降り、主の使フィリップを擧げて去り、寺人復之を見ざりき、乃喜びて其路を行けり。
四〇フィリップはアゾトに見れ、諸邑を經て、福音を宣べ、ケサリヤに至るに及べり。
第九章
一サウルは猶主の門徒に向ひて、恐喝と殺氣とを吐き、司祭長に就きて、
二其ダマスクの諸會堂に寄する書を求め得たり、若し斯の道に從ふ者に遇はば、男女を論ぜず、之を縛りて、イエルサリムに曳かん爲なり。
三彼往きて、ダマスクに近づける時倏