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ところへ、T君がやって来る。
「どうも出来ない。今度は出来そうもないよ。」
「それじゃ困りますよ。当てにしているんですから。出来ないと、そこが
「だって、出来ないんだから。」
「じゃ、もう一日待つから。」
こう言ってT君は帰って行く。
また、机に向って見る。やはり出来ない。
妻は気にしてソッとのぞきに来る。それも知れると怒られるから、知れないように……そして筆を執って坐っていると安心して戻って行く。
「書けましたか?」
「駄目だ。」
「だって、さっき書いていらしったじやありませんか。」
「……」
ところが、ふと、夜中などに興が湧いて来て、ひとりで起きて、そして筆を執る。筆が手と心と共に走る。そのうれしさ! そのカ強さ! またその楽しさ! 見る