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かへります。そのときはさぞおなげきになることであらうと、前々まへからかなしんでゐたのでございます」
 ひめはさういつて、ひとしほりました。それをくと、おきな氣違きちがひのようにしました。
たけなかからひろつてこの年月としつき大事だいじそだてたわがを、だれむかへにようともわたすものではない。もしつてかれようものなら、わしこそんでしまひませう」
つきみやこ父母ちゝはゝすこしのあひだといつて、わたしをこのくにによこされたのですが、もうなが年月としつきがたちました。みのおやのこともわすれて、こゝのお二人ふたりしたしみましたので、わたしはおそばはなれてくのが、ほんとうにかなしうございます」
 二人ふたり大泣おほなきにきました。いへものどもゝ、かほかたちがうつくしいばかりでなく、上品じようひんこゝろだてのやさしいひめに、今更いまさらながのおわかれをするのがかなしくて、湯水ゆみづのどとほりませんでした。
 このことがみかどのおみゝたつしましたので、お使つかひをくだされてお見舞みまひがありました。おきな