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わたしがこのくにうまれたものでありますならば、お宮仕みやづかへもいたしませうけれど、さうではございませんから、おれになることはかなひますまい」
 とひめまをげました。
「いや、そんなはずはない。どうあつてもれてく」
 かねて支度したくしてあつたお輿こしせようとなさると、ひめかたちかげのようにえてしまひました。みかどおどろかれて、
「それではもうれてはくまい。せめてもとかたちになつてせておくれ。それをかへることにするから」
 と、おほせられると、ひめはやがてもと姿すがたになりました。みかどいたかたがございませんから、そのはおかへりになりましたが、それからといふもの、いままで、ずいぶんうつくしいとおもつたひとなどもひめとはくらべものにならないとおぼすようになりました。それで、時々ときお手がみやおうたをおおくりになると、それにはいち返事へんじをさしげますので、やうこゝろなぐさ