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(一)
具體の量及抽象の量

れども絕對の量は抽象的にして補捉し難し,若し具象的の例證を得んと欲せば,直線の長さは就中最明亮なる印象を與ふべし.

量は之を計ることを得,量を計りたる結果は數を以て之を表はすことを得.さて量を計るとは如何,又量と數との關係は如何.

數學に於て量と稱する者旣に抽象的なり,量を計るといふことも亦理想的ならざるを得ず.實際上具象的の量を測定するは,畢竟外界が吾人の感覺に與ふる印象の强弱を定むるに外ならず.之を定むるに精粗あり,物に觸れて其冷熱を知り,音を聽きて其高低を知るは不精確なり.尺度を以て物の長さを測り,望違鏡を以て星辰の運行を觀て時刻を計るは精密なる測定なり.然れども斯の如きは測定の結果に精粗の差こそあれ,最終に訴ふる所は吾人の感覺に外ならず,卽ち觀測の方法と共に其結果の精粗異なるも,要するに是れ程度の問題にして,絕對的の精確は決して期すべからず.

實際に於ける量の測定には精確の度に限界あるを免るべからざるが故に,斯