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四則算法の形式上不易

一は以て理論の統一を保ち,一は依りて數の應用の區域を擴大せんとするにあり.數の觀念を擴張して作り得たる新範圍に統一なくば,是或種の算法の汎通を贏け得んが爲に,其他の諸法則の汎通を犧牲とせるなり.其弊や算法に自然的の制限あるに讓らず.統一せる法則に遵はざる數は何處にか其應用を求めん.是に於て更に第二の要求を生ず.減法除法を汎通ならしめんが爲に作り成せる數の新範圍に於て,自然數につきて上に述べたる諸原則仍成立すべしとの條件,卽是なり.此要求は過大にして苛酷なり.上述の諸原則犯すべからずとせば, より大ならざる場合に於ける の倍數ならざる場合に於ける の意義は自ら定まり,此間復た隨意選擇の餘地あることなし.さて斯の如くにして新しき數の相等及加法,乘法の意義定まれる上,仍此旣定の意義の決して自然數の諸原則に悖らざるを欲す.此點に於て第二の要求は過大なり.是故に此要求は果して貫徹せらるべきや否やは豫め測るべからずして其決定は精細なる調査に待つ所あり.