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(一)
新數の插入
分數の起源は量を計るにあり.然れども吾輩は姑らく此事實を度外に置き,此處には先づ順序の思想を根據として分數の觀念に到達せんとす.是れ一には汎く知られざる立脚點を紹介するの意に出で,又一には,負數の條に言へるが如く,數學上の觀念に具體的の內容を與ふることの,樣々になされ得べきを例證せんと欲するに由れり.
順序數の冒頭 を添へ,更に又 に先ちて,逆に究なく連亙せる負數を附加して數の範圍を擴張することを得たり.今同一の思想を敷衍して,更に此方向に一步を進めんとす.
先づ順逆兩面に亙りて究る所なき,物の引續きを考へ,此等の物の中任意に或一つを採りて,之を と名づけ,(此物に を配合し)之に先後せる凡ての物に順次凡ての正及負の整數を配合すべし.此等の物の各には,直に之に次げる唯一個の物あり,斯の如く相隣接せる二つの物の中間に更に一個づゝ新しき物を插入せりとし,さて此等新舊兩種の物を一括して考ふるに,是亦順逆の兩方