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は之を首肯するに躊躇せざるを得ず、蓋しウヰルソン氏が最初講和の基礎條件として揭げたる海洋の自由其他十四個條の原則は歐洲政治家の現實的利害主義によりて甚しき蹂躪を蒙りたりと雖しかも彼の理想が全然實行せられざりしとなすは餘りに酷評にして少くとも彼が主唱にかゝる民族自决主義の如きは或程度迄講和會議の中心精神となり多年壓制に苦しみたりし幾多の弱小民族に新なる希望と光明とを齎したりし也、殊に不完全の譏を免れずとは云へ國際聯盟なるものが兎にも角にも實現の運を見るに至りしは一に彼が努力と熱誠との賜なりと云ふを得べく余は此點丈にてもウヰルソンの名が永へに人類史上に光輝を放つべきものなりと斷言するを憚らざる也、