Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/271

このページは検証済みです

ゴムパース氏の手腕と聲望とを以てするも到底之を駕御し得ざる程度に進みつゝあるのみならず近來ゴムパース氏自身も亦此急流の渦中に捲き込まれんとしつゝあるが故に彼等の要求がゲーリー氏の云へる如く經濟の境域を越えて政治上道德上の問題にまで進轉し來るは誠に止むを得ざるの大勢なりと云ふべし、しかも一方資本家側は如何と云ふに其勢力は政治行政の各機關に普く行き渡りて牢固拔く可らざる根蔕を有する事申す迄もなし、故に米國に於ける勞資の對抗は今後益熾烈を加ふべしとなすを至當の見解とすべく之が解决は决して容易の業に非ざるべし。

 歐米見聞錄