Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/269

このページは検証済みです

 當時ウイルソン大統領は講和條約批准に關する上院反對派の挑戰に應じ大西洋沿岸遊說中なりしが此報に接して大いに驚き直に電報をゴンパース氏に送りて罷業を十月六日迄延期せん事を乞へり、蓋し十月六日はウイルソン氏が豫め合衆國內に勞働問題の漸く紛糾し來れる形勢に鑑み勞資間に協調を保たしむる目的を以て召集したる會合の當日に相當すればなり、然るに右電報を接手したる鋼鐵工側はピツツバーグに於て大會を開き二日に亘りて激論を鬪はしたる後終に大統領の勸請を斥けて大擧同盟罷業に突進するの决議をなしたりしを以てこゝに兩者は協議不調の儘にて十月六日の勞資協調會を迎ふる事となりしが愈開會となりてゴンパース氏が團體契約を認