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樣の話を聞く事屢なりき。


 民族の解放運動も亦今日米國に於て一種の流行となれり、蓋し今次の講和會議に於てウヰルソン氏の正義人道論が海山千年の歐洲外交家に幾干の影響を及ぼしたるや頗る疑問とせらるゝ所なりと雖そが世界の弱小民族に對して與へたる感化の甚大なるものありし事實に至つては吾人の到底否認するを得ざる所なり、即ち歐洲の各國が恰も瘠犬の餌を漁るが如く最淺間しき國民的利己心を曝露したりし其際に獨り米國のみが何等の報償をも要求せず其學者大統領の口を藉りて永久平和と云ひ民族自决と云ふが如き高遠なる理想を天下に皷吹したり