Page:Sengo ōbei kenbunroku.pdf/238

このページは検証済みです

ツキを携帶し居るものは殆無く是を用ふるは只夜間若くは散步の時丈なり、蓋し倫敦巴里とは比較にならざる程繁華殷賑を極むる紐育の市街はステツキを振り廻はすべく餘りに雜踏しつゝあるなり。

●米人は巧遲よりも拙速を尊ぶ、故に粗製濫造の譏は米國品に於て免る可らざる所也、是を自動車に就きて見るも一日の製作高三千臺の多きに上ると云ふフオードは勿論一般に米國製自動車の粗惡なる事は歐洲製の比に非ず、然れども米人の粗製には相當の申分あり、即ち絕えず改良の工夫を運らすを怠らざる米人は同一の機械を十年以上も使用するを以て却つて進步の妨なりとなすに似たり、故に彼等は英人が堅牢にして數十年間