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クレマンソー氏以上の素晴らしき人氣なりし、蓋し時艱にして偉人を懷ふは人間普通の心理也、ル氏の晚年は恰もウヰルソン氏の勢望隆々として天下を壓倒したりし當時に際會し對照上甚しく孤影落莫の觀を呈したりしと雖其後間もなく講和會議の開かれてウヰルソン氏の不評判となるや此地下の英雄は再び蘇り來りて米國一の人気者となれる也。

●余は秋晴の一日自動車を驅りてオイスターベーに臨めるルーズベルト氏の墓を訪へり、墓は群松と浪の音と相爭へる一小丘の上に在り、灣を距てゝ遙かにル氏の舊宅と相對す、此日は日曜ならざりしかど尙自動車にて來り弔ふ者引きも切らざりしが墓番の言ふ所によれば日曜日には參詣者踵を接して集まり