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十一、米國の印象

●戰爭の創痍尙癒えざる英佛獨伊の諸國を巡視したる人が大西洋を渡り來りて一たび紐育の盛大に接する時は必ずや心中秘かに歐洲の時代の最早去れるを感ずるなるべし、實に今日の紐育は世界に於ける最偉大なる驚異の一なり、かの四十階五十階と數へらるゝ摩天の高樓の碧空を貫いて林の如く立ち、城廓の如く聳ゆる大觀が巴里倫敦をして後へに瞠若たらしめつゝあるは言はずもがな、茫洋海の如きハドソン河に臨みて八十方哩の投錨區域を有し何萬噸と稱する無數の大船巨舶を導き來りて其棧橋に橫付となし得る宏大なる築港を設備するなど紐