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 正午ストラスブルグに着き直に軍司令部を訪ふ、此家は昨年獨逸革命の際ソビエツトに占領せられ此屋根には革命の赤旗飜りしが昨年十一月佛軍の手に歸してよりは此處に軍司令部置かれ、かくてアルサス、ローレン二州に對する軍政の中心と爲れるなり、我々は其一室に待つこと暫時、やがて、グーロー司令官は出で來れり、此人はランスの戰ひに雄名を轟かしたる隻腕の鬼將軍なり、我等を迎ふる爲特に日本の旭日章を佩用し食堂に導きて叮重なる午餐の饗應あり、將軍の談によれば此地にある獨逸人は少くも表面上温順にして學校の如き凡て佛語に改めたれど何等反抗の色を見ずと云ふ、席上種々の日本談出でしが將軍は文事にも嗜みありと見え頻りにラフカヂオ、ハーンを推