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るより深刻なるはなけむ、今や戰雲漸く收まりて平和の曙光天の一角より洩れ來れりと雖人類は未だ國家的割據の時代を經過せずして戰後に於ける國民的競爭は益激甚の度を加へんとしつゝあるのみならずライン彼岸の民族が臥薪嘗膽して捲土重來を夢みつゝあるの情勢に想到せば佛國民たるもの焉んぞ晏如として太平を謳歌するを得むや、クレマンソー首相が「何物よりも先づ佛蘭西」の主義を高唱しつゝあるは現在に於ける佛國民が衷心の叫を代表するものなるべし、彼等に取りての刻下の緊急問題は如何にして國內に於ける分配を匡正すべきかに在らずして如何にして一國の生產を增加すべきかに存す、是れ此國に於て勞働問題の案外に靜穩なる所以たらずんばあら