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イ 令和4年6月、aが死亡し、相続人である被上告人Xがaの権利義務を承継した。

3 原審は、上記事実関係等の下において、本件規定は憲法13条及び14条1項に違反し、本件規定に係る国会議員の立法行為は国家賠償法1条1項の適用上違法であり、第1審原告らは自ら又は配偶者が本件規定に基づいて不妊手術を受けたことによって精神的・肉体的苦痛を被ったものであって、a及びbの慰謝料は各1 300万円、被上告人X及び同Xの慰謝料は各200万円、被上告人Xの慰謝料は1500万円と認めるのが相当であるなどとした上で、要旨次のとおり判断して、被上告人らの請求をいずれも一部認容した。

改正前民法724条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであると解されるところ、本件請求権の除斥期間は、本件訴えが提起される前に経過している。しかしながら、除斥期間の経過による効果を認めるのが著しく正義・公平の理念に反する特段の事情がある場合には、条理にもか なうよう、時効停止の規定(同法158条から160条まで)の法意等に照らして、例外的に上記効果を制限できると解すべきであるところ、本件請求権については、上記特段の事情があるものとして、本件規定が憲法の規定に違反していることを上告人が認めた時又は本件規定が憲法の規定に違反していることが最高裁判所の 判決により確定した時のいずれか早い時から6か月を経過するまでの間は、上記効果が生じないというべきである。そして、第1審原告らは、上記効果が生ずる前に本件訴えを提起したといえるから、本件請求権が除斥期間の経過により消滅したとはいえない。

4 所論は、最高裁昭和59年(オ)第1477号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁(以下「平成元年判決」という。)その他の判例によれば、本件請求権は、改正前民法724条後段の期間の経過により消滅したというべきであり、原審の判断には同条後段の解釈の誤り及び判例違反がある