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るとした。

しかし、平成31年4月までの間、本件規定に基づいて不妊手術を受けた者に対し、補償の措置が講じられることはなかった。

(6) 平成30年9月28日、被上告人X 、a、b及び被上告人Xが本件訴えを提起し、平成31年2月27日、被上告人Xが本件訴えを提起した。上告人は、本件訴訟において、本件請求権は改正前民法724条後段の期間の経過により消滅した旨を主張した。

(7) 平成31年4月24日、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「一時金支給法」という。)が成立し、一部の規定を除いて施行された。

一時金支給法は、前文において、優生保護法に基づき、あるいは同法の存在を背景として、多くの方々が、特定の疾病や障害を有すること等を理由に、平成8年に関係規定が削除されるまでの間において不妊手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたとし、そのことに対して、我々は、それぞれの立場にお いて、真摯に反省し、心から深くおわびするなどとしている。そして、一時金支給法は、3条において、国は、本件規定に基づいて不妊手術を受けた者を含む所定の者に対し、一時金を支給する旨を定め、4条において、一時金の額は320万円とする旨を定め、5条1項において、内閣総理大臣は、一時金の支給を受けようとする者の請求に基づき、当該支給を受ける権利の認定を行い、当該認定を受けた者に対し、一時金を支給する旨を定めている。他方、同法は、一時金の法的性格を明らかにしておらず、一時金の支給を受けるべき者が同一の事由について損害賠償その他の損害の塡補を受けた場合の調整等についての定めも設けていないなど、上告人に損害賠償責任があることを前提とはしていない。

(8)ア 令和2年11月、bが死亡し、相続人である被上告人Xがbの権利義務を承継した。